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2019/8/2 21:45

今いる仲間でシゴトがうまくいく――チームを面白くする4つの「リーダー」のスタイルとは?

2019年2月15日、明治安田生命による「理想の上司」アンケート結果が発表された。総合ランキングでトップになったのは男性が内村光良さん、女性が水卜麻美さん。共に3連覇だ。理由の上位3項目を紹介すると、内村さんが親しみやすい(42.9%)、優しい(23.8%)、頼もしい(13.3%)、水卜さんが親しみやすい(51.4%)、明るい(13.7%)、おもしろい(10.3%)となっている。

 

 

リーダー論・組織論・マネジメント

2010年からのデータを見てみると、内村さんもそうだが、ジャーナリストの池上彰さんが4回も1位になっており(2011-13、15年)、人気番組や情報番組などの司会者が上位にいるようだ。これは数多い演者たちを上手にまとめあげる姿に「理想の上司」を見ているからかもしれない。

 

ロールモデルとしてのリーダーは、こういう方法で選出するのが最も容易だし、最もストレートなイメージが示されるのだろう。

 

リーダーとしてふさわしいのはどんな人か。そのリーダーが創り上げるべき組織とはどうあるべきなのか。そして、あるべき形の組織を生み出していく過程であるマネジメントの定義とは何か。リーダー論や組織論に関するビジネス書は数限りなく存在する。マネジメントという言葉の定義もさまざまだ。一般的に認識されているものを挙げるなら、P・F・ドラッカーが『マネジメント』で示している「組織に成果を上げさせるための道具、機能、機関」ということに落ち着くのではないだろうか。

 

大前提としての定義はシンプルな方がいいはずだ。ただ、それぞれの時代や世代に合致したリーダー論・組織論を語るのであれば、普遍的な要素を踏襲した上で、それを親しみやすいモチーフにのせ、伝わりやすくしてくれたほうが、読み手としてはありがたい。

 

 

チームづくりの基本とは

宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいく チームの話』(長尾彰・著/学研プラス・刊)はリーダー論と組織論を「チームづくり」というコンセプトを通して展開していく1冊だ。本書の構成の中核となるのは、第2章で提示されている「4つのリーダーのスタイル」だ。それぞれのタイプの特徴が、大人気マンガ『宇宙兄弟』のキャラクターに当てはめられる形で解説される。

 

著者の長尾さんはまず、”いきなりチームをまとめようとせずに、まずは一緒に頑張れる「2人」をみつけよう”と説く。そして2人の組み合わせは、「自分と違うタイプ」を選ぶことが大切だ。

 

望む成果を得るために、タイプの違う2人が組んで、パズルの凸と凹を組み合わせるようにしてチームをリードしていく――。そのためには、まず自分の「リーダーのスタイル」がどのようなタイプなのかを知ることから始めていきましょう!

『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話』より引用

 

チームづくりの基本は、自分の得意・苦手なこと、好き・嫌いなことを知ることから始まる。

 

 

4つのリーダーのスタイル

リーダーのスタイルとして提示されるのが、以下の4つだ。仕事を進めるうえで「プロセス」「成果」のどちらを重視するかの志向性と、メンバーをリードするときの「押す」「引っ張る」というスタンスの組み合わせになっている。

 

ファシリテーター型:支援と促進が得意(プロセス志向×押す)

マエストロ型:職人肌で成果を出すのが得意(成果志向×押す)

ティーチャー型:教えて諭すのが得意(プロセス志向×引っ張る)

コンサルタント型:専門的な知識で牽引するのが得意(成果志向×引っ張る)

 

どの型が優れていてどの型が劣るということでは決してない。どのタイプにも「凸(強み)」と「凹(苦手)」が存在する。

 

あなたはどんなタイプのリーダーか

こういう形でそれぞれのタイプを提示されると、自分がどれに当てはまるのか知りたくなるのは当然だ。これを行うため、わかりやすいチェックシートが掲載されている。

 

文章を読んで、もっとも当てはまるものに〇をする。〇が多い列が、あなたが得意なスタイルだ。ほかの列も同じくらい〇があった場合、あなたは複数の要素を併せ持つバランスタイプということになる。

 

それぞれのタイプを端的に説明する文章も添えておきたい。

 

ファシリテーター型:プロセス志向×押す

「ファシリテーション」とは「物事を容易にする/助長する/促進する」などと訳されています。ファシリテーター型は、言葉の意味どおり支援・促進的なリードを得意とするスタイルです。
【『宇宙兄弟』に見るファシリテーター型タイプ:南波六太】

 

マエストロ型:成果志向×押す

マエストロ型は、自分で目標を設定し、それに向かって着実に進んでいくスタイル。目標が明確なので成果を出すことを大切にしますが、そのためにメンバーを引っ張るというよりは、自らが取り組んでいる背中を見せることで周囲を刺激し、リードしていくのが得意です。
【『宇宙兄弟』に見るマエストロ型タイプ:南波日々人】

 

ティーチャー型:プロセス志向×引っ張る

教師のように「諭す/教える/伝える」といったアプローチでリードすることが得意なスタイルです。成果よりもプロセスを大切にしますが、ファシリテーター型が相手の中にあるものを引き出そうとするのに対し、ティーチャー型は自分が前に立ち、論理的に説明したうえで、「でも、実際にやるのはあなたたちですよ」と、間接的に引っ張っていきます。
【『宇宙兄弟』に見るティーチャー型タイプ:金子シャロン】

 

コンサルタント型:成果志向×引っ張る

豊富な経験や専門知識をもとに、メンバーを引っ張りながら成果を追求していくリーダーのスタイルです。「こうしましょう」「こうあるべきだ」といったセリフが多く、自分の中で確固とした正解を持っていて、それを周囲に提案することでリードするのが得意です。
【『宇宙兄弟』に見るコンサルタント型タイプ:ビンセント・ボールド】

 

もちろん、すべての人を厳密な形で4つのスタイルに分けることはできない。しかし、たとえば”コンサルタント型寄り”といったニュアンスで自分を定義づけることはできるはずだ。そのうえで、「メンバー」と「自分」のスタイルを理解し、それぞれの違いを活かすことが、よいチームワークを生む。

 

ちなみに、『宇宙兄弟』でいえば兄・南波六太は「ファシリテーター型」で、弟の日々人は「マエストロ型」。タイプの違う2人が補完し合いながら成長し、宇宙飛行士という目標を叶えた。

凸(でこ)と凹(ぼこ)が上手に重なると「□」になる。お互いの凸(上手なこと/得意なこと/好きなこと)と、凹(下手なこと/苦手なこと/嫌いなこと)を理解したうえで、違いを活かす──。

 

もし、どちらか1人だけの物語だったら、六太は宇宙飛行士という夢を取り戻すことなくサラリーマンとして生き続けていたかもしれない。日々人は宇宙飛行士として月に行ったものの、月面で起きた命の危機を乗り越えることはできなかったかもしれない。2人がお互いを補完し合っているからこそ共に成長することができ、そんな彼らの物語に多くの人たちが魅了されているのだ。

 

著者の長尾さんは本書の最後にでこう語っている。

 

「チームづくり」とは、あなたのチームだけの「物語」をつくっていくことです。
ぜひ「今いる仲間」と一緒に、チームの物語づくりを楽しんでください!

『宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話』より引用

 

他人の成功例をまねるのではなく「自分だけ」の物語をつくること。そのためには「理想の組織とは何か?」「どうすれば成長できるのか?」をチーム全体で問い続けることが重要なのだ。

 

本書はそのためのヒントが数多く載っている。そのヒントをもとにして自分がどのようなリーダーを目指すのか、そしてどんなチームを作るのかを、じっくりと考えてほしい。

 

 

【書籍紹介】

 

宇宙兄弟 今いる仲間でうまくいくチームの話

著者:長尾 彰
発行:学研プラス

『宇宙兄弟』のムッタやヒビト、チーム「ジョーカーズ」の成長ストーリーなどを分析し、自分の得意で好きなスタイルで、今いる仲間をリードする方法を解説! 約20年にわたって3000回を超えるチームビルディングをしてきた著者の「チームビルディング」の教科書!

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