ここ数年で、日本でも少しずつ「性教育」に関する注目が高まっており、保護者に向けた「子どもに伝える性教育」や、子どもたちに対する「いのちの話」といった講座も増えてきた。とても良い傾向だと思う。
一方で大人たちにとっての「性」は、閉鎖的というかネガティブな印象がいまだ根強い。パートナーに対する性の不満や悩み、とりわけ性に関することとなると、親はもちろん、親しい友人にも打ち明けづらいのが現状だ。
常に夫にイライラしてしまう。
産後からセックスする気にならなくなってしまい、夫からの誘いをずっとはぐらかしている。
夫にセックスを拒否された。もう女として終わりなの?
夫とはレスが続いていて、外で恋人を作ってしまった。
そんな、夫婦不仲からセックスレスや婚外恋愛などの性の悩みまで、誰にも相談できずに悶々と苦しんでいる女性たちに、やさしく手を差し伸べる人がいる。パートナーシップと性のカウンセラー小野美世さんだ。
今回は、小野さん初の書籍『誰にも言えない 夫婦の悩み相談室』(小野美世・著/WAVE出版・刊)から、小野さんが紡ぐあたたかなアドバイスをご紹介していこう。
全女性が幸せになるパワーワード「負けるが花」
小野さんは、これまでに女性3000人の悩みを解決してきた人気カウンセラー。ブログ「性の悩みへの優しい答え」と「負けるが花」は、性に関する悩みを抱えた女性たちに向けて発信されていて、とてもやさしく、読むだけで心がラクになると大好評だ。
じつは小野さん自身、結婚前に恋人とのセックスレスの悩みを持っていた一人。そのときに身を持って体験したこと、感じたこと、そして「自分の性質を認めること」に気づいたことから、カウンセリングの世界に出会い、今に至るのだそうだ。
小野さんがまず教えるのは、「女性は、皆負けず嫌い」であり、「男と戦うから、うまくいかない」ということ。
完璧主義で、仕事も家事も何でもできてしまう人ほど、パートナーに見下されたくない、文句を言われたくないから必要以上に頑張ってしまうといった「負けず嫌い」が多いそうだ。けれど、そんな「男性に負けたくない!」という思いを少し緩めてみない?と小野さんは提案する。一言でいえば「負けるが花」。
戦いモードを捨て、弱い自分をそのまま素直に相手に見せる。これだけで、パートナーとの関係はぐっと良好になるという。
そのためにはまず、夫や恋人に対する不満を、思いつく限りリストアップしてみる。
そして、そのイライラを感じるときに、まず出てくる言葉(小野さんいわく「灰汁(あく)」と呼ぶ)は捨てて、その下にある本当の気持ちに気づくことが大切だというのだ。
たとえば、
「子育ても家事も全部、私ばっかり!」
「なんで、まったく手伝ってくれないの?」
という不満が、最初に心に浮かぶ灰汁。
そこで、灰汁は取り除き、「私はどうしてそれがイヤなんだろう? どう扱われていると感じてる?」とひとつ下の気持ちを探ってみる。
すると、
「私ばっかり頑張ってるみたいで、イヤだ」
「私は家政婦じゃない!」
「少しは休みたい。一人の時間が欲しい」
というように、「私」を主語にすることで、自分の感情に意識が向かっていく。ここまできたら、あと少し。
「私は、本当は旦那にどうしてほしいんだろう? 私自身は、どうしたいんだろう?」と、自分自身が持っている弱さややわらかい気持ちをそっと探っていくと、
「一人だけ頑張ってて、辛い。心細い」
「気にかけてもらえてないようで、さみしい」
という、素直な気持ちにたどり着くはず。その素直な気持ちを、旦那さんにそのまま伝えるのだ。
夫婦間の戦いをやめるには、妻が自分の気持ちをよーくよーく見るということが一番大切です。そして、単なる「灰汁」をぶつけるのではなく、その下にあるやわらかい気持ち・弱々しい本音のほうを、大切な相手にさしだしていくことなのです。
(『誰にも言えない 夫婦の悩み相談室』より引用)
「負ける=相手に従う、我慢する」のではなく、自分の心の奥底にある本当の気持ちをすくい出して、相手にその気持ちを差し出すことなのだ。
自分がご機嫌でいることが、すべてのハッピーにつながる
女性がご機嫌でいることほど、家庭内や男女間がハッピーになることはない、と小野さん。いくら家の中を綺麗に掃除して整えていても、料理を完璧にしても、妻がイライラしていたり不機嫌な表情だと、夫にとっても子どもにとっても幸せではないのだ。
だからこそ、自分で自分の機嫌をとる「セルフケア」が重要なのだそう。
疲れ果てるまで頑張りすぎない、いい気分になれることをする、イライラやモヤモヤを吐き出せる場所を持つ、しんどいと感じることをやめる・減らす・捨てる。
手作りにこだわりすぎて、忙しくて時間がないのにイライラしながら手料理を何品も並べるくらいなら、出来合いのお惣菜を買ってきて、ニコニコ食事を楽しんだほうがいい。
そして、自分の機嫌の良し悪しを100%パートナーにゆだねてしまうと、相手にも負担がかかるし、何より自分の気持ちも不安定なまま。
自分の感情の乱れは、まず自分でケアする。このことが、結果的に夫婦間が円満になる秘訣だそうだ。
性の不一致は「0か100」かではなく、「中間」を探す
小野さんのもとに集まる相談で特に多いのが、セックスレスや性の悩み。夫はしたいのに妻がその気になれない、妻は相手にしてほしいのに夫に拒否されるなど、セックスレスに陥った夫婦の相談がとかく多いという。
往々にして、「頑なに拒絶するか、我慢して相手の欲望を受け入れるか」または、「希望通りできるか拒否されるか」の0か100かの両極端になってしまいがち。けれども、もっと中間をふたりで探してみては?というのが、小野さんのアドバイスだ。
スキンシップをしたい欲求と、挿入されたい欲求の2種類を、分けて考えてみることで、「その中間」が見えてくることもあります。
(『誰にも言えない 夫婦の悩み相談室』より引用)
「セックスとはこういうものだ」という先入観やこだわりを捨て、ふたりにとって最適な性的関係を作り出せれば、今抱えている性の悩みはぐっとラクになるはずだ。
「負けるが花」を実行したら、その先に夫婦の笑顔が待っている
『誰にも言えない 夫婦の悩み相談室』には、ほかにも「夫がいつも怒っているので、一緒にいるとつらい」「家計のことで夫ともめる」といったどの家庭でも起こる得る悩みから、「浮気されたショックがフラッシュバック、どうしたらいいの?」「(夫以外の)彼にもっと会いたいのに、会ってくれない」など人には言いづらい悩みまで、小野さんのやさしくあたたかく、前向きになれるような解決策が並ぶ。
なかには、小野さんのアドバイスをたった1つ実行しただけで、わずか2週間でパートナーの仕事の問題もセックスレスの問題も、あっさり解決したという人も!
パートナーとの関係に悩む女性だけでなく、すべての人間関係を円滑にするヒントが詰まった、あたたかな灯火のような一冊だ。
【書籍紹介】
誰にも言えない 夫婦の悩み相談室
著者:小野美世
発行:WAVE出版
友達にも、親にも言えない。心がさみしくて苦しい。夫にイライラ、甘えられない、産後の危機、浮気・不倫、婚外恋愛、セックスレス。女性3000人の悩みを解決してきた人気カウンセラーの優しい答え。