令和2年が幕を開けた。今年はいよいよ東京オリンピックが開催されるし、嵐の活動休止前ラストイヤーだし、一大イベントが多々予定されている。どこに出かけよう、何をしようと胸が高鳴る。
けれど、ワクワクと同時に「もしまた、あんな地震が起こったらどうしよう…」と不安な想いが頭をもたげる。“あんな地震”とは、2018年6月に起こった大阪北部地震のことだ。
大阪北部地震が残した爪痕
あの日、娘2人が遅めの朝食をとっていて、その準備に追われていた。そこに、地から突き上げるような大きな揺れ。テーブルの上のコップは落下し、開けっ放しだった食器棚からはお皿やコーヒーカップが飛び出してきた。洗って置きっぱなしにしていた食器も、シンク横から落ちて割れた。
2階に上がってみると、背の高いCDラックが折り重なってドアの方に倒れていた。用意してあった防災グッズは、障害物と化したそれらの先にある。
幸い、ライフラインはすぐに復旧したが、この教訓から防災グッズは1階と2階に分けて置くようにした。
再び来るかもしれない揺れを恐れながらも、割れた食器類を片付け、CDラックをもとの位置に戻す。この原状回復の作業が、心にダメージを受けた上にさらなる負担として重くのしかかってきたことをよく覚えている。
ここで、次の2枚の写真を見てほしい。どちらも大阪北部地震直後のキッチンの様子だ。
この2つ、同じマンションの隣同士という、同じ間取り、同じ強度。揺れの条件もまったく同じ。にもかかわらず、ここまで被害状況に差が出るとは驚く。下の写真のように物が壊れたり割れたりしてしまうと、片付けにかかる時間は相当なものだろう。何より、精神的なショックが大きいはずだ。私がそうだったように。
じつは上の写真、調味料が数本倒れているだけのキッチンの主は、国際災害レスキューナースとして世界中で活躍する辻 直美さん。防災のスペシャリストだからこそ、震度6弱という地震が起こっても、被害を最小限にとどめる工夫が随所に施されているのだ。
地震対策は100均アイテムで十分対応可能! まずはキッチンから
さぞかし性能の良い防災専門のアイテムを使っているかと思いきや、なんと「100円ショップのグッズがメイン、大きな手間もお金もかけていない」のだと辻さん。
いくら本格的な防災グッズをそろえていても、それだけでは命は守れない。かといって、ただ恐れているだけでも、当然生き延びることはできない。大切なのは、すぐにできる対策と正しい知識を持ち、心身ともに備えること。
今回は、辻さんの最新著書『プチプラ防災』(辻 直美・著/扶桑社・刊)から、今日からできる「命を守るための備え」をピックアップしてお伝えしたい。
さて、防災対策をしたいけれど、どこから手を付けたらいいものか…と悩む。一番過ごす時間が長いリビング? 寝ているときに地震が起こっても大丈夫なように、寝室から?
辻さんいわく「最も凶器が多い『キッチン』を最優先で対策して」とのことだ。確かにキッチンには、包丁やハサミ、食器など、地震発生時に凶器となり得るモノばかり。対策をしておかないと、命の危険にさらされるだろう。
100均ショップでまず買い揃えたいアイテムは、次の3つ。
・滑り止めシート
・指はさみ防止ストッパー(子ども用)
・取っ手付きプラスチックケース
食器も家電も、大きな揺れが起こると滑って落下する。そこで使えるのが、滑り止めシートだ。食器棚の皿の下や炊飯器など家電の下に貼っておくだけでOK。辻さんはより摩擦を大きくして滑りにくくするために、樹脂製のシートとコルクのような素材のものを2種類敷いているのだそう。より安全性を高めるには、耐震用グッズを複数合わせて使うことがおすすめとのことだ。
ちなみに辻さんは、食器はシンク下の引き出しの中に収納することを推奨している。というのも、重いものや割れものは、落下の被害を防ぐために低い場所(下の方)に収納するのが鉄則だから。さらに、引き出しに子どもの指はさみ防止ストッパーをつけておけば、大きな揺れの衝撃で引き出しが飛び出すのを防げる。
もっとも大きな凶器となる冷蔵庫は、底に耐震マットを敷き、天井までのスペースには、タオルなどをつめた段ボールで隙間を埋める。この一工夫で、ぐんと倒れにくくなるそう。
食器を収納する引き出しがない場合は、取っ手がついたプラスチックケースの底と内側に滑り止めシートを貼れば、使い勝手が良く耐震性もある食器収納ケースに早変わり。冷蔵庫の中のドレッシングなど割れやすい容器に入ったものも、滑り止めシートを貼った収納ケースに入れておけば安心だ。
ほかにも、揺れに強く滑りにくいお皿を重ねる順番、飲料水の効果的な置き場所なども詳しく紹介されている。キッチンの収納を一からやり直すとなると気が遠くなるが、要所要所に滑り止めシートを敷く、揺れで開きそうなものにはストッパーをつける、モノの置き方を少しだけ工夫する…これだけなら今日すぐにでも取り掛かれるだろう。
断捨離も立派な防災対策!シンプルライフが命を守る
もうひとつ心しておきたいのが、モノが多すぎる部屋は、災害時に圧死のリスクを伴うということ。
いつか使うかも…と保管しているもの、手が届かない場所にしまい込んでいるものは、まずもって陽の目を見ない。防災を意識したその日から、不要なものは断捨離すること、そして使ったものはすぐに片づけること、これだけでも十分な防災なのだ。
『プチプラ防災』には、地震だけでなく水害への対策や、効率の良い水・食料の備蓄テクニック、災害発生から被災後を生き抜くための知恵とテクニックが満載だ。自宅用はもちろん、実家や義実家の両親にもプレゼントしたい一冊。
政府の地震調査委員会は、南海トラフと根室沖での巨大地震が今後30年以内に起こる確率を80%以上に引き上げた。大地震は、いつか必ず来る。水害だって一年中起こり得る。
明日やろうは馬鹿野郎、2020年はぜひ“今日からできる防災”を意識してみてはいかがだろうか。
【書籍紹介】
プチプラ防災
著者: 辻 直美
発行:扶桑社
防災グッズを揃えるだけじゃ、助かりません!必要なのは代用テクと正しい知識。シンプルに暮らしながら災害に備えるテクニック集。不安が尽きない人に、生き抜く自信を与えます!
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