本・書籍
2020/1/17 21:30

40代独身女性の不安定を描く漫画『あした死ぬには、』が刺さりすぎる!

独身女性を描く漫画は数々あれど、ここまで現実をリアルに表現したものはなかったのではないでしょうか。コミック『あした死ぬには、』(雁須磨子・著/太田出版・刊)が同世代女性の共感の嵐を呼ぶのは、その設定が刺さりすぎるから。

40代女性はこんなに不安定

『あした死ぬには、』は、あとがきで著者の雁須磨子さん自身が「40路女の/右往左往や/とまどい 楽しみ/あたらしい出会いや/別れ ひきこもごも」を描くことを目指していると書いている作品です。その通り、ヒロインがホットフラッシュなどの更年期的症状や四十肩などの辛さ、迫り来る老いについて翻弄されるさまがストーリーに出てきます。

 

今までも『今夜もホットフラッシュ』(青沼貴子・著/KADOKAWA・刊)など、更年期を取り上げたコミックエッセイはいくつかありましたが、フィクションでは珍しいのではないでしょうか。それにしても、めまい、肩こり、多汗、動悸など、次々出てくる症状に翻弄されながら、懸命に日常を穏やかに生きようとするヒロインには、40代女として共感するばかりです。

 

 

もうやりつくした感とまだやり足りない感

私はバツイチなので、同い年の独身女性たちから「私がしたかった結婚・出産・離婚・育児、全部経験していてうらやましい」と言われることがあります。確かにフルコース体験してきてしまいましたが、離婚は望んでそうなったわけではないし、シングルマザーに冷たい世間の荒波に揉まれ相当に疲労困憊しています。私からは優雅な独身女性が心からうらやましく思えるのです。

 

彼女たちは結婚していないので、自分の時間もお金も自分のために使うことができます。ニューオープンの店に行って流行の味を試したり、好きなブランドの服を買ったりです。

 

マンガでも、ヒロインは映画関係の仕事をし、好きな映画を観たり、素敵な人とお食事したりとキラキラした日々を送っています。とはいえ、もっと遊びたい、まだ経験してないことがいっぱいある、と目移りする反面、もう40代ともなると、こうした日々にも少々食傷気味になってくるようです。

 

 

否定できないオワコン感

世間の流行についていくことに息切れし始めたということは、最先端を追えなくなった自分を認めるということになりかねません。ずっとキラキラとしていたいのに、なんだか疲れたと感じてしまう。私の周囲には60代になっても先端で尖っているオシャレな女性もいますが、そこまで頑張れるのは少数なのかもしれません。

 

こうしたやりきれなさを、ヒロインの女友達が「私の時代は終わったのだ」と、たった一言で見事に表していました。少しずつ流行に疎くなる自分は悔しいし、認めたくないものです。特に華やかな業界で仕事をしている女性は、いつまでも最前線で活躍していたいのです。でも、それが40代になると、少しずつ引くことを覚えなくてはならなくなってくるのです。

 

 

同世代とのつながりと20代へのときめき

こうした焦燥感を語れるのは、何と言っても同世代の女友達。ヒロインは同窓生の女性と久しぶりに会い、話に花を咲かせます。私もそうですが、同世代と「髪が減ってきた」「生理が不規則になったから閉経が近いんだろうか」などとあけすけな話をするのはとても安心できるもの。けれど、その一方で20代くらいの若い男の子にときめいて、自分はまだ女として見てもらえるんだろうか、と確認したくもなるというこの振り幅の大きさこそが40代なのかもしれません。

 

マンガでもヒロインの女友達はパート先で知り合った若い男性に甘い感情を抱いてしまいます。私の周囲でも「パート先に若い男性がいて、お話できるだけですごく楽しい」と言っている人が結構な数います。これを乱心と取るか美魔女の誘惑と取るかは難しいところですが、面白いのは、漫画でもそうなのですが、意外にも若い男性は40代女性に結構優しいのがありがたいところです。

 

いっそ開き直り、自分は老い始めてます、と認めて生きていったほうが楽になれるのかもしれません。エステやダイエットで若さを維持するにも限界がきているのだから、現実を素直に認めたほうがいい笑顔が作れそうです。そしておそらく、それでも構わないよと言ってくれる男性も想像以上に大勢いるはず。一歩引くことを学ぶ、それが40代女性の課題なのだろうな、と、漫画にグサグサきながらも、続きを楽しみにしている私なのでした。

 

 

【書籍紹介】

あした死ぬには、

著者:雁須磨子
発行:太田出版

20代ほどがむしゃらじゃない。 30代ほどノリノリじゃない。 40代で直面する、心と身体の変わり目。立ちはだかる40代の壁。 突然の病気更年期障害、取れない疲労働き方の変化、お金の不安、これからの人生プラン…… 私のあしたはどうなるの!?

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