「ひとり焼肉」など、おひとりさま用の店舗が話題です。それは「誰にも邪魔されず、ひとりで焼肉を味わいたい」と望む人がいるからでしょう。こうした人が増えているからなのか、最近「ギグワーク」なる流れが起きています。ひとりで出向き、ちょこっとだけ働くという形の働きかたなのです。
増えてきたギグワーク
ギグワークとは「単発の仕事」という意味です。どうやら世の中は、こうした単発仕事が増える傾向にあるようなのです。そして、フルタイムで働くのではなく、労働時間をわずかで済ませたいという人も増加しているそうです。
ちなみに、ライターが本職の私ですが、昨年の仕事を振り返ると、執筆以外にも舞台や映像の脚本や作詞、さらに「イケメン評論家」などと自称しているので、コメント依頼や審査員依頼なども舞い込みました。私の場合、この作詞や審査員のような単発仕事が「ギグワーク」になるでしょうか。
日本でも増えてきたギグワーク
今までは単発の仕事は、継続性もなく不安定なので、敬遠されてきました。けれど『ギグ・エコノミー』(ダイアン・マルケイ・著/日経BP・刊)によると、アメリカではすでに2015年の時点で労働者の15.8%が非伝統的就業形態であったといいます。
日本でも確実にこの流れが起きています。最近では「Uber Eats」でレストランから個人宅へと料理を運ぶ仕事がありますが、ふっと時間が空いた時に近場を自転車で配達すれば収入になるのでその自由さが受け、多くの人がエントリーしています。
また「タイミー」という求人アプリがありますが、その日限りの単発仕事が多く募集されています。なかには2時間電話調査をする、5時間皿洗いをするなどという短時間のものもあります。そしてすぐにその枠は埋まっていくので、こうした仕事を好む人が相当数いるようです。
不安定よりも自由を取る。
本によると、こうした労働形態が増えてきた理由には雇用側と被雇用側双方の都合があるようです。雇用側は、できるだけ正社員を減らし、人件費を少なくしたいという事情があります。そして、注目すべきは被雇用側の事情で、それほどお金はいらないので、自由に好きなことをする時間が欲しい、という人が多くなっているようなのです。
専門性を高めれば時給が高くなるので、短時間労働であっても生活できるようです。たとえば塾講師などは時給が数千円もすることがありますが、そういう高時給を狙えるスキルを高めて少しだけ働きたい人が出ているのです。
確かに最近の20代は「家も車もいらない、けれど大好きな映画を観る時間が欲しい」というようなことを求めている人が多いと感じます。「働き方改革」によって多くの正規労働者の労働力も短時間になりつつありますが、それでも正社員として縛られるよりは単発のギグに魅力を感じるようなのです。
「ギグワーク」は、まだ始まったばかりの新しい流れで、本の中でも引退後の生活はどうなるのかはデータがないとのことでした。病気や事故の際はどうするかなど課題は多いのですが、この新しい流れにワクワクさせられます。私たちは高時給を得るための専門性をいくつか備えていく必要があるのかもしれません。
【書籍紹介】
ギグ・エコノミー
著者:ダイアン・マルケイ
発行:日経BP
職から働きへ、ギグ・エコノミーが働き方・生き方革命を起こす! 自分なりの成功をイメージする。仕事を分散させる。所有ではなくアクセスで経済的な負担を減らす。終身雇用ではなく「ギグ(単発の仕事)」を基盤とした新しい働き方「ギグ・エコノミー」。思い描いたとおりの成功を収め、充実感に満ちた人生を送るための10の法則を解説。