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2020/2/10 21:45

独立した「個」として生きる――”超獣”ブルーザー・ブロディの生涯

プロレス界において、最強と称されるタッグチームはいくつか存在する。古くはジャイアント馬場とアントニオ猪木の「BI砲」、ジャンボ鶴田と天龍源一郎の「鶴竜コンビ」、外国人レスラーでは、ドリー・ファンク・ジュニアとテリー・ファンクの兄弟コンビ「ザ・ファンクス」、アニマル&ホークの「ザ・ロード・ウォーリアーズ」、テリー・ゴディとスティーブ・ウイリアムズの「殺人魚雷」など、さまざまなタッグチームが頭に浮かんでくる。

 

しかし、そのなかでも際だって「強い!」という印象があるのが、“不沈艦”スタン・ハンセンと“超獣”ブルーザー・ブロディの「ミラクルパワーコンビ」または「超獣コンビ」だ。タッグ結成は1982年から。タッグチームとして活躍したのは3年ほどだったが、その強さは際立っていた。

 

32年前のブロディ刺殺事件を考察した1冊

ブルーザー・ブロディ――本名フランクリン・ドナルド・グディッシュ――は、1988年7月18日、遠征先のプエルトリコでレスラー仲間に刺されて死亡。42歳だった。当時このニュースを知ったときは、かなりショックを受けたことを覚えている。

 

まだインターネットはなく、情報源はプロレス雑誌のみだったので、いったいどうしてブロディが刺されたのかよくわからなかった。とにかくもうハンセンとのタッグが見られないということが、ただただ悲しかった記憶がある。

 

そのブロディの刺殺事件について書かれているのが『ブルーザー・ブロディ 30年目の帰還』(齋藤文彦・著/ビジネス社・刊)だ。ブロディの事件については、ホセ・ゴンザレスというレスラー仲間が犯人なのだが、正当防衛が認められて無罪に。しかし、その場に居合わせたレスラー仲間の証言などによれば、正当防衛が認められるような状況ではなかったようだ。

 

ちなみにホセ・ゴンザレスは、その後マスクマンとなり日本のインディー団体などで活躍していた。当時はそのマスクマンがホセ・ゴンザレスだとは知らなかったのだが、もし正体を知っていたら、僕は当時どんな気持ちだったのだろう。

 

 

ブロディが“インテリジェント・モンスター”と呼ばれた理由

本書は、ブルーザー・ブロディの生前のインタビューがいくつか掲載されている。決してプロモーターなどに媚びることなく、自分の信念を貫き、団体に所属することなく活動していたブロディ。インタビューからは、彼のプロレス哲学を垣間見ることができる。

 

わたしはほかのレスラーたちと比べ、人一倍フリーであるという意識を強く持っている。

ほんとうに一流と呼ばれるレスラーは、決してプロモーターのいいなりになんてなりはしないんだ。

まず、レスラーに限らず、アメリカ人は一般に日本人よりも“自由”ということばの意味を理解している。自分が正しいと思ったことを自分の責任において行動に移すことを自由というんだ。

わたしは、わたしこそが最後のインディペンデント(独立した存在)であると考える。

(『ブルーザー・ブロディ 30年目の帰還』より抜粋)

 

ブロディは、決してプロモーターに合わせることなく、自分をきちんと評価してくれる団体にだけ上がっていた。そして、待遇が悪くなったり、自身が思い描いている活動ができないとわかると、契約中であってもその団体の試合には出なくなるといったことがあった。

 

以前、ブロディはタッグパートナーのジミー・スヌーカーとともに新日本プロレスのタッグリーグ戦の決勝戦をボイコットしたことがあった。その理由については本書でも語られてはいないが、新日本プロレスの考えるブローザー・ブロディ像と、ブロディ自身が考えるブロディ像の乖離があったのではないだろうか。

 

とかくプロレスラーというものは、お金の話や契約の話に疎い。昔のプロレスラーは特にだ。しかし、ブロディは違っていた。きちんとビジネスとしてプロレスを捉え、自分の商品価値というものを最大限に発揮できるよう、自己プロデュースをしっかり行っていたのだ。彼が“インテリジェント・モンスター”と呼ばれていた理由のひとつでもある。

 

 

ブロディが生きていたら、プロレス界はどうなっていただろう

本書の最後に、ブロディの妻であるバーバラ夫人のインタビューが掲載されている。収録は本書発行の2018年。ごく最近のことだ。そこでバーバラ夫人は、生前のブロディのモットーについて語っている。

 

フランクにはモットーがありました。それは、試合を観にきてくれたお客さまが人生最良の夜を過ごせるように For the best night of their lives、いつもそれだけを心がけて試合をしていました

(『ブルーザー・ブロディ 30年目の帰還』より抜粋)

 

ブロディの現役生活は14年ほどと、印象の割には短い。それだけ強く、インパクトがあったということだろう。

 

ブロディが事件に巻き込まれることなく現役を続けていたら、いったいプロレス界はどうなっていたのだろうか。「たられば」の話はあまりよくないが、ブルーザー・ブロディの早すぎる死は常にプロレスファンのパラレルワールドを作り出していると言える。

 

 

【書籍紹介】

ブルーザー・ブロディ 30年目の帰還

著者:斎藤文彦
発行:ビジネス社

1970年代から80年代にかけてアメリカ、そして日本のプロレス界を最高に盛り上げた伝説のレスラー、超獣ブルーザー・
ブロディ。彼の死は世界に衝撃と深い悲しみをもたらしました。あれから30年。いま一度、当時のインタビューや写真を振り返り、ブロディとはどういう人物だったか、なぜあの事件が起きてしまったのか、彼が残した影響や功績などを振り返る。

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