気付けば、不惑の年になった。
40代は仕事が乗りに乗っているゴールデンエイジだと言われる一方、人生100年時代、定年も70歳の時代がやってくるなかで、就職してから今までと、これから70歳まで、同じ働き方ができるとは限らない。
ただ、夫や友人知人を見渡してみると、べらぼうに忙しい40代ばかり。ここらで働き方を変えていかねばと頭でわかっていても、実際は仕事に忙殺されている人が多い。
そんなときは、偉大なる先輩方の経験談が活きる。
『40代で必ずやっておくべき10のこと』(『THE21』編集部・編/PHP研究所・刊)には、識者22人による「40代の成功法則」が収められている。
経営者から教授、キャスター、芸人までそれぞれの40代
何の気なしに手に取ってみたが、これがなんとも刺さる言葉ばかりだ。
ライフネット生命保険の創業者である出口治明氏、元ソニー社長の出井伸之氏、東京大学大学院経済学研究科教授の柳川範之氏、経済評論家の山崎元氏、オアシズの大久保佳代子さんなど、並ぶ顔ぶれも、多ジャンルに及ぶ。
ある人は、「無駄な残業をなくし、空いた時間で人と会い、本を読み、旅に出よ」と語る。
またある人は、「あえて居心地の悪いアウェイに身を置き、環境を変えることを意識せよ」と語る。
ある人は、「女性は特に、チャンスを捉えてキャリアアップをはかるべき」と語り、ある人は、「とにかく遊び、新たな趣味をはじめて極めよ。そして、定年後の礎を築け」と語る。
各人が大切にしていることや意識していることは違えど、皆に共通するのが「40代は人生における大きなターニングポイント」であり、「特に45歳が働き方の変革期、つまりモードチェンジ絶好のタイミング」であるということ。
これは何も50代になってしまったから遅いというわけではなく、逆に30代だから備えるには早すぎるということもない。ほんの少し意識を変えるだけで、今後の長い人生を花開かせることができる、そのためのヒントを先ゆく人々が教えてくれているのである。
「やらないこと」を決め、2種類のスキルを身につける。
22人の識者のなかで、私が特に「そうそう!ですよね!」と感銘を受けたのが、Indigo Blue代表取締役会長の柴田励司氏。
周囲に任せられる仕事は任せて、手放す。特定のスキルだけに依存するのではなく、意識的にポータブルスキルを身につける。相手の顔を見て話をする。自分以外はすべて師と考える。
そして、電話一本でお願い事や相談ができるような人脈づくりを優先する。そのためには、利害関係なしに、人と人を積極的につないでいくこと。
私自身はフリーランスなので、部下がいるわけではないし、役職なんてものもないのだが、これらの教えにはいたく共感した。
一方で、「余計な人付き合いはやめて、時間を捻出せよ」というHONZ代表の成毛眞氏のような主張も一理あると頷ける。
2つの主張はそれぞれ説得力があり、間違っても「人付き合いを大切にすべきなのか、しないほうがいいのか、どっちやねん!」と憤慨する気にはならないのである。
22の人生を疑似体験すれば、新たな道が見えてくる
人生なんの苦労もなく、成功体験のみの人などいない。試行錯誤して、時には痛い目に遭って、そのなかから自分なりの「道」を切り開いていくのであろう。
『40代で必ずやっておくべき10のこと』を読むことで、幸いにも22人の人生を疑似体験できる。彼ら彼女らが語る体験談は、必ずやあなたのこの先に広がる道を、より明るく照らしてくれるだろう。
管理職、営業職、専門職、フリーランス……いま自分がおかれている環境が何であれ、ビビッとくる何かがあるはずだ。ぜひ、すべてのビジネスパーソンに手に取ってほしい一冊である。
【書籍紹介】
40代で必ずやっておくべき10のこと
著者:『THE21』編集部
発行:PHP研究所
40代は「人生の折り返し地点」。この時期で何をするかで、その後の人生が決まると言っても過言ではありません。ただ、日々の忙しさに追われ、自分のキャリアについて真剣に考える余裕がない……。そんな人も多いはず。そんな忙しい人たちに向け、後悔しない40代を過ごすためのヒントを凝縮してお伝えするのが本書です。名経営者や著名ビジネスパーソン、タレントなどに 「40代 」 でどのようなことをやってきたかについてインタビューするとともに、キャリアの専門家たちに 「40代で何をすべきか 」 について聞いていきます。 「違う仕事に手を出す」 「人に任せる」 「趣味の時間を作る」 など、具体的なアドバイスが満載です。さらに、誰もが気になる 「定年後」 「勉強」 「転職」 「健康」 の話も。まさに40代のためのバイブル的な1冊となっています。