「最短の時間」と「最少の努力」で「最大の価値」を引き出す――「2ちゃんねる」の元管理人・ひろゆき氏が実践する常識を覆すような時間の使い方を紹介。著書『なまけもの時間術 管理社会を生き抜く無敵のセオリー23』(4月9日発売)から一部を抜粋してお届け!
僕は、「仕事」より「ゲーム」に頭を使ってる
僕が思う「頭を使う」というのは、「どれくらい集中力を切らさないでやるか」ということです。
たとえば学校の試験など、時間がすごく限られた中で、1秒もムダにせずひたすら問題を解き続けるみたいなのは、頭を使っているという感じがします。
あるいはアクションゲームとかでも、0コンマ何秒単位で操作しないといけません。ほんの一瞬でもボタンを押すのが遅れるとゲームが終わってしまう、というのを30分とか続けるわけです。ゲームをやっている人にしかわからない感覚かもしれませんが、これも頭を使っている感じがします。
でも、仕事において、それほどの集中が求められる状況は、あまり思い浮かびません。どうでしょうか。仕事で1秒もムダにできないとか、一瞬も遅れてはいけないとか、そんな状態が続く事態に陥ることなんて、ほとんどありませんよね。
「この資料を今日中に仕上げなきゃいけない」とか「この商品を午後3時までに納品しなきゃいけない」みたいなことはあるかもしれませんが、かといって会社帰りに、「はー、今日は1秒もムダにせずに仕事した!」なんて、誰も思わないはずです。
そう考えると、ある意味仕事ってけっこうぬるいですよね。究極のことを言えば、仕事は頭を使わなくてもできるものだし、頭を使ってするべきものでもない、という気がするのです。
プログラミングも会議も、大して頭は使わない
たとえば営業職などでも、頭を使ったかどうかで結果が大きく変わる場面って、それほど多く出会わないんじゃないかと思います。
「うちには、こういう商品があります。あなたにとって、こんなメリットがあります」という情報を伝えて買ってもらうのが、一般的な営業の仕事です。相手のニーズをうまく聞き出すコミュニケーション能力や、多少話を盛って商品をよさげに見せるといったプレゼンテーション力で結果が変わることは、当然あるでしょう。でも、それって、売れる営業マンは「いつものテクニックを使っている」に過ぎなくて、「頭を使う」っていうのとは違う気がします。
プログラミングなんかもそうです。
画面上に何かを表示させるために、必要な指示を並べていくのがプログラミングですが、それは「やるべき作業をこなしている」だけであって、別に「頭を使っている」わけではありません。「あるべきものを、あるべき場所に並べていく」という意味では、プログラミングは、掃除や片づけに近いですね。
企画会議とかで、いくつか案があって、どれを選ぼうかみたいなときだって、ウンウンうなって頭を使ったからといって、売れるものを選べるわけではありません。比較検討する際には、「最近はどういったものが流行っているか」「類似商品には、どういうのがあるか」などの情報を参考にするものです。そのためには売り場に行ったり、ネットリサーチしたりすればいい。売り場に行くのは「体を移動させる」こと、ネットで検索するのは「キーワードを入れる」ことです。
だから、仕事って「体を動かす」ことがメインになる場合が多くて、「頭を使う」ことはかなり少ないと思うのです。
仕事前に「全力で遊んでおく」というビジネスハック
むしろ、頭を使いすぎないほうが、仕事は成功しやすいという気がします。
何かに没頭している状態は、脳科学的には、「フロー」とか「ゾーン」とか呼ばれています。時間を忘れるほど集中して頭を使っている、脳的に「超、気持ちいい」瞬間です。じゃあ、仕事でもそれくらい没頭するべきだ、なんて思うかもしれませんね。
でも、人に何かを売り込むのも、比較検討してひとつを選ぶのも、単なる作業であって没頭する必要などありませんから、何もゾーンなんかに入らなくていいわけです。
僕自身の経験としては、過度な思い入れを持たず淡々と作業をこなすほうが、仕事としての仕上がりのクオリティはかえって高くなる傾向があるように思います。仕事で「ものすごく頭を使ったなぁ」と思ったことがありませんし、それよりはるかに、遊びに頭を使っていると思います。割合で言うと遊びに8割、仕事に2割くらいでしょうか。
少し前にボードゲームの仕事に関わったときなんか、まさにそうでした。どういう感じだったかというと、まず「遊び」としてボードゲームで遊んだ後、今度は「仕事」としてボードゲームの打ち合わせに移ったのです。
その日に遊んだのは「マーダーミステリー」というジャンルのボードゲームでした。6人でプレイしながら犯人やトリックを暴いていくのですが、プレイヤーそれぞれに役割分担があったり、それぞれのキャラクターになりきらなくちゃいけなかったり、時間制限つきのミッションがいっぱいあったりと、かなり集中力を要します。しかも、一度犯人がわかったらおしまいなので、プレイできるのは実質1回きり。おまけに5000円くらいするゲームなので、真剣にやらないとかなり後悔します。だから絶対にクリアするという緊張感を持って、脳みそフル回転でプレイするのです。
という感じで、めちゃくちゃ集中して遊んだ後で、仕事に移りました。
僕らはゲームの作り手として、当然ですが相当にボードゲームで遊び慣れています。だから、それほど遊び慣れていない人たち向けに、軽めのボードゲームを開発するには、多少、頭が疲れている状態のほうがいいのです。ゲームへのこだわりがエスカレートしないし、ゲームを「仕事」として客観的に眺めることもできます。その結果、自然とゲームのレベルが初心者にちょうどいいレベルまで下がるので、万人受けしやすい商品が作れるというわけです。
仕事に頭を使いすぎると、○○○になる!?
たとえば機械などでも、多機能で複雑なものと、ボタンひとつで最低限の操作ができるものがあれば、機械いじりに頭を使いたい人は多機能型を選ぶかもしれない。
でも、しょせんそれは少数派で、多くの人は操作に頭なんて使いたくないから、ボタンひとつですむほうを選ぶはずです。
ここで機械好きが、機械好きの頭のままモノを作ると、往々にして自分と同じ少数派にしか受け入れられない製品を作ってしまいがちです。機械に限らず、モノやサービス作りの失敗の多くは、そこが一大原因だったりします。先ほど挙げた僕のボードゲームの例も、これと同じだと考えています。
要は、仕事に頭を使いすぎると、成果物がマニアックになりすぎる。そういうことが起こりやすいというわけです。やっぱり頭は使いすぎないほうが仕事は成功しやすい。だから、使える時間全体の2割くらいに留めたほうが仕事で成果は出やすい気がします。
ある程度バカになる――なんて言ったら感じ悪いかもしれませんけど、あまり頭を使わないで受け止める人の感覚になって取り組んだほうが、世間で広く受け入れられるものができるに違いないと思っているのです。
もしも仕事に行き詰まったら、いっそ遊びに頭脳のほとんどを使って、その余力で仕事をするくらいに考えたほうが、じつは、ちょうどいいのではないでしょうか。そうすれば、「仕事後は疲れ果てていて、遊ぶ時間なんて作れない」という悩みも、ついでに解決できそうですよね。
【書籍紹介】
なまけもの時間術 管理社会を生き抜く無敵のセオリー23
著者:ひろゆき
発行:学研プラス
「2ちゃんねる」「ニコニコ動画」「ペンギン村」……誰も思いつかなかった「価値」を生み出して「お金」も「自由」も手にした男が語る「時間をかけずに、コスパよくひとり勝ちする」方法とは…? 「時間」と「成果」に追われる人におくる、成果主義社会を生き抜く時間術。