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2020/5/25 21:45

あなたのその言葉と文章、間違っていませんか?——『失礼な日本語』

日本語の間違いを指摘された経験は誰にでもあるはず。私にもある。随分と前になるが、ある雑誌の”美しい日本語”という特集でマナーの先生のところに取材に行った時のことだ。喋り始めた私に対し、先生は「そこ違うわよ」、「その言い方はだめね」と指摘し始めたのだ。やがて私は言葉に詰まってしまった。

 

「先生すみません。これでは何も話せなくなってしまいます」と訴えた。するとマナーの先生は微笑みながら「大丈夫よ、総理大臣でも間違えるし、国語の先生でも間違えることはある。それだけ日本語は話したり、文章にしたりするのに難しい言語なのよ」と言ったのだ。

 

それでも、ビジネス上のメールや話し言葉でのうっかりミスは避けたいもの。今日、紹介する『失礼な日本語』(岩佐義樹・著/ポプラ社・刊)は新聞社の校閲記者が、書き言葉、話し言葉のマナーを教えてくれる一冊だ。

 

 

校閲記者とは?

新聞社や出版社には”校閲”という部署がある。校閲とは、文章や原稿の誤りや不備な点を調べることで、多くの読者の目に触れる前に正確で読みやすい文章に訂正するのが校閲記者の仕事だ。

 

本書の著者、岩佐氏は毎日新聞校閲センターの前部長。自らを「基本的に人知れず仕事をする黒子です」と記している。その黒子たちがつぶやく毎日新聞校閲センターのツイッターは現在7万人以上のフォロワーを得ているそうだ。これについて岩佐氏は、

 

これだけ多くの支持を得たのも、ツイッターなどで気軽に発信する人が増えた割には、適切な言葉遣いについての知識が追い付いていないという現実がある気がします。(中略)言葉のやりとりで最も重要なのは、相手を思う心です。言葉は、人によってさまざまな受け取り方があることを心得たうえで、相手の立場や事情に思いを致し、状況に応じて表現を工夫することが大事です。そうしないと、伝わらない、失礼な日本語となってしまいます。

(『失礼な日本語』から引用)

 

 

失礼な日本語を気持ちのいい日本語へ変える

本書の構成は以下のようになっている。

 

第1章 「綸言汗のごとし」首相の言葉チェック

第2章 敬語は難しいけれど 畏敬か敬遠か

第3章 固有名詞の怖さ 誤りはこうして防ごう

第4章 いわゆる差別表現 理解と配慮があれば

第5章 イラッとする使い方 仲間内だけで結構です

第6章 「たが」の外れた文章 書き言葉は丁寧に

第7章 失礼ワード20選 誤解必至です

 

では、さっそくいくつかを抜粋してみよう。

 

 

「慎んで哀悼」?

首相官邸の談話でもホームページでも日本語の誤りは繰り返されていたという。「慎んで哀悼の誠を捧げます」、「慎んでお祈りいたします」など、岩佐氏によると「慎んで」が少なくとも5回使われていたのを見つけたそうだ。

 

正しくは「謹んで」です。「慎んで」は「控えめに」という意味ですので、控えめに哀悼や追悼をすることになってしまいます。「謹んで」は「相手を敬ってかしこまる」という意味。だから「慎んで」だと「敬意がない、失敬な」と受け取られても仕方ありません。

(『失礼な日本語』から引用)

 

これが新聞なら訂正の記事を掲載、テレビならアナウンサーがおわびして訂正をする。が、官邸のホームページでは訂正を出さず、これはまずいと判断したのかいつの間にか直していたようだ。

 

もうひとつ、岩佐氏が見つけた間違いが「御静聴ありがとうございました」。「静聴」は文字通り静かに聴くこと。「清聴」は「相手が聞いてくれることの尊敬語」。だから締めの言葉としては「ご清聴」が適切なのだ。

 

 

「お求めやすい価格」「ご利用できます」は不完全な敬語

CMや広告チラシでよく見かけるこの表現二つは不完全な敬語といえるそうだ。

 

尊敬語の形は「お……になる」ですので、「お求めになりやすい」が適切な言い方です。ただし、文化庁の「敬語の指針」(2007年)には「お求めになりやすい」は出てきません。(中略)あまりにも誤用が多いと、容認する見方も多くなってくるということなのでしょう。しかし、毎日新聞でも「お求めやすい」について、読者から誤用という指摘を受けたことがあります。やはり「お求めになりやすい」を使った方がよいと思います。

(『失礼な日本語』から引用)

 

「ご利用できます」については、「ご利用になれます」と言うべき。「ご……できる」は謙譲語だが、「利用できる」を例に考えると、「私どもがご利用できる商品を開発させていただきました」などと言うのはかなり不自然。つまり「利用する」を謙譲語にすること自体に無理があるのだ。よく聞く言葉、よく見る表現にも気をつけたいものだ。

 

 

「結構です」と「大丈夫です」

コンビニで弁当を買い、店員から「温めますか?」と聞かれ「結構です」と断ったにもかかわらず弁当を温められたことが一度や二度ではないと岩佐氏は記している。

 

ムカッとした後、冷静になって考えてみると「結構です」なんて温めていいのか悪いのか分からない言葉ですね。もともと「結構」は、構造・構成と同義でした。「文章の結構」などと、たまに小難しい論文には出てきますが、この意味での結構は話し言葉では既に死語。「結構なお味」というと褒め言葉になり、「もう結構」となると断ることに。「いいですね」「もういいです」と同じく、状況によってイエスにもノーにもなる、曖昧で不可思議な日本語の典型です。

(『失礼な日本語』から引用)

 

このような場面では「いえ、結構です」と「いえ」を付けるか、手を横に振って「結構です」と断るのがいいようだ。ちなみに若者たちは「大丈夫です」と言って断ることが多いそうだ。

 

 

パソコンの文字入力にご注意

メールや企画書などでミスをしやすいのがパソコン入力による文字変換。固有名詞を間違ってしまうことも多々ある。岩佐氏は官邸ホームページでとんでもない誤字を見つけたと綴っている。あるとき、総理の名前が「あべ・ふぞう」となっていたことがあるというのだ。「晋」が、なんと「普」に! 似ている漢字では済まされないミスだ。

 

ビジネスシーンでは、固有名詞の誤りはなんとしても防がなくてはならない。これについて岩佐氏は、

 

紛らわしい漢字はパーツを凝視せよと言われても、似た字があるという予備知識がないと、目を凝らす気にもならないでしょう。漢字を使って書く者の前提として、似て非なる文字の知識は必須です。

(『失礼な日本語』から引用)

 

失礼な日本語を繰り返さないためにも、本書をぜひ読んでおきたい。

 

【書籍紹介】

失礼な日本語

著者:岩佐義樹
発行:ポプラ社

「失礼な日本語」とは、「作法に外れた日本語」。誤字や文法的に不適切な言葉、つながりのおかしい文章を知らず知らずのうちに使っていませんか。毎日新聞社の校閲センターで日々、誤字・脱字と格闘するベテラン校閲記者が教える文章マナー。文法、敬語、誤解されやすい言葉…など読みやすい日本語の知識が満載。

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