本・書籍
2020/8/12 21:45

「鎖国」ってもう言わないの?−−あなたの「語彙力」をアップデートする1冊

テレビを見ていて、司会者やコメンテーターのちょっとした言葉遣いにいちいちツッコミを入れてしまう自分に気づき、はっとすることがある。これは老化の指標なのか? ツッコミを入れた後、それが老化の指標である可能性を自覚していることを知らせるため「はい出た!言葉ポリス」と自分で言ってその場の空気を鎮める。

 

言葉ポリスの日本語運用力

その言葉ポリスである自分自身の言葉遣いはどうなのか? 自分が書く記事の言葉遣いにはものすごく気を付けている。気を付けすぎるため逆に抜けた感じになってしまうことがあるくらいだ。でも、無意識に交わしている日常会話やメールでの言葉遣いについては全く自信がない。と言うか、気にしたこともない。

 

仕事で書く文章も日常での何気ない会話やメールの言葉遣いも、結局はその人の日本語運用力――語彙力という言い方もできるだろう――がもろに反映されるものにほかならない。筆者自身の日本語運用力はリアルにどの程度のレベルにあるのか。本当に細かいところまでわかっているのか。もうそこそこの年齢なので、人がたくさんいる場で変な空気を生んだり、恥ずかしい思いをしたりするのは嫌だ。そう考え始めたら、確かめずにはいられなくなった。そのプロセスの中で出会った本を紹介したい。

 

語彙について考える

使える「語彙力」2726』(西東社編集部・編/西東社・刊)のまえがきに次のような文章が綴られている。

 

「語彙」の「彙」には「一つのところに集める」という意味があります。「語彙」は一つの国語や方言、作品などを表す単語の総体のことです。つまり、たった一つの言葉を知っていたからといって、「その語彙」を知っているとはいいません。さまざまな言葉を知り、それを使いこなせることで、「語彙が豊富」といえるのではないでしょうか。

                         『使える「語彙力」2726』より引用

 

定義は明らかだ。あとはどの部分をどのくらい知っていて、それをどのように運用していくことを心がければいいのだろうか。

 

どこから始めても役に立ちそう

章立てを見てみよう。

 

第1章 敬語をマスターしよう

第2章 お付き合いの敬語を美しく

第3章 ビジネスで「できる!」人の印象を

第4章 失礼にならないビジネスレターの書き方

第5章 相手が一目置く、得する言葉

第6章 呼び方が変わった言葉

第7章 間違えやすい漢字

第8章 知っておきたい四字熟語

第9章 カタカナ語を攻略しよう

第10章 慣用表現は奥が深い

第11章 比喩として使いたいことわざ

第12章 季節・自然・暮らしを表す言葉

第13章 大和言葉で品格アップ!

 

実にもりだくさん。項目数にすると71もある。筆者が特に気になったのは「敬語をマスターしよう」「失礼にならないビジネスレターの書き方」といったところ。どこから読み始めても役立ちそうだし、章立てと項目をガイドに逆引き辞典のような使い方もできるはずだ。

 

ご存じの通り、「お越しになられました」はNGですよ

第1章「敬語をマスターしよう」には落とし穴がいっぱい。思わず口走ってしまいそうな「お越しになられました」はNG表現。正解は「お越しになりました」だ。

 

「ご~になる」で尊敬語なので、さらに「られる」をつけるのは間違い。「お話しになられました」も「お話しになりました」にする。

                         『使える「語彙力」2726』より引用

 

この間、うちのマンションの理事会でこのまま言っていた人がいた。注意しているつもりでも、ふとした瞬間に「こうに違いない」「これ以外の言い方であるはずがない」という思い込みが大きな間違いとなって現れてしまう。こんなのはどうだろう?

 

△ご案内申し上げます。

△ご案内致します。

謙譲語の「ご」と謙譲語の「申し上げる」が重なる二重敬語だが、「致す」や「申し上げる」による二重敬語は一般的に許容されている。正しくは「ご案内します」。

                         『使える「語彙力」2726』より引用

 

これは、特に下の方を言っちゃう人多いんじゃないでしょうか。筆者は何の疑いもなく言っちゃいます。

 

今日的変化にも対応

第6章「呼び方が変わった言葉」でも意外なところを突かれるだろう。かつては当たり前すぎた言葉とその意味が、思いもつかない形に変換されている例は少なくない。筆者にとっての常識がぴしゃっと否定される項目が目立つ。

 

鎖国 → 幕府の対外政策

江戸時代、外国との交流を断絶したわけではなく、実際には長崎や津島などを窓口としてオランダや中国と交易を続けていたため変更された。

                         『使える「語彙力」2726』より引用

 

完全にシャットアウトしていたわけではないから、鎖国という言い方はポリティカリー・コレクトではないということなのだろう。「鎖国」っていう比喩はもう使わないほうがいいな。

 

ユーゴスラビア → 6共和国

1991年に分離独立が始まり、ユーゴスラビアは2006年に消滅。セルビア、モンテネグロ、スロベニア、クロアチア、ボスニア=ヘルツェゴビナ、マケドニアに。

                         『使える「語彙力」2726』より引用

 

ワールドカップのヨーロッパ予選の組分けでなんとなくもやもやしていた部分があったが、これで少しすっきりした。

 

敬語の使い方から始まって、ビジネスレターの書き方、さらには歴史用語や国名の変化までカバーしてくれる本書を読んでいると、現代日本のコモンセンスが浮かび上がってくる。大学入試や就職試験対策としてもお勧めしたい一冊。

 

 

【書籍紹介】

 

使える「語彙力」2726

著者:西東社編集部
発行:西東社

社会人として使える「語彙力」を384ページの大ボリュームで紹介! 「相手を褒める言葉」「慣用表現」「大和言葉」「敬語」など、ただの教養だけではなく、本当に「使える」言葉を身に付ける!

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