コロナ禍の出会いのひとつの形として、マッチングアプリが注目されています。そんななか、マッチングアプリで30人の男性と会い続けた女性の実話コミックエッセイ『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』(松本千秋・著/幻冬舎・刊)がドラマ化され話題となっています。けれど、そこにはマッチングアプリに潜む危険も描かれています。
すぐ会うというアメリカ型感覚に
以前、ニューヨークに暮らす女性が「アメリカではマッチングアプリで知り合った異性と、まず会うのだ」と聞かされて驚いたことがあります。実際に会わないと判断できないからなのだとか。日本人は平安の時代より文を何度かやり取りする文化があるからなのか、メッセージをしばらく交わし、相手を好ましく思えるようになってから会う人が多い気がしたからです。
けれど、最近は、日本人も知り合ってすぐに会うパターンが増えつつあります。それは「恋愛」や「結婚」に主眼を置かない「お友達作り」的なマッチングアプリにより、気軽に会う感覚が育ちつつあるからのようです。私の周囲でも「SNSで知り合った知らない人と会うのと同じ感覚だ」と話す人が出てきました。
相手は見ず知らずの人
『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記』では、結婚はもういいと思っているバツイチアラフォー女性が、アプリで見つけたイケメンと次々会い続けます。知り合ってその日に会うこともあります。
友達を増やす感覚で約束しているとはいえ、会う相手は見ず知らずの異性であり、SNSのアカウントすらわからないのです。中には「あなたの家に行っていいか」と聞いてくる男性や、自宅を特定し、窓の外から呼びかける男性までいます。ストーカー化されたら怖いですが、名前も住所もわからないので、向こうがアプリを退会してしまったら、連絡の取りようがありません。
お互いのニーズが違うとトラブルに
本書にはこうしたアプリに登録している男性の9割が、肉体関係目当てだとも書かれています。しかも一晩だけの遊びの人も大勢いるようです。しかし女性は慎重なので、誰とでもすぐそういう関係を結べる人のほうが少ないでしょう。
男女の仲になるつもりでやってきた男性と、そうではなかった女性との間でトラブルが起きることもあります。本の中には、女性が住む駅まで送ってきて「終電がなくなったので泊めて欲しい」と切り出す男性が何人もいて、手首を掴まれ迫られるシーンもありました。
暴力を振るわれるリスクも
初対面では密室に行かなくても、会う回数を重ねれば個室でふたりきりになるケースも出てくるでしょう。本書では、男性に首を絞められるシーンまであり、アプリでの出会いにはかなりのリスクがある行為だということを読者は目の当たりにします。
とはいえ今や芸能人や政治家や起業家までもがマッチングアプリに登録し、気軽に誰かとつながろうとしている時代。今まで関わることがなかった世界の人とつながることができるワクワクももちろんありますが、リスクもあるということも把握したうえで慎重に行動したいものです。
出会い依存という苦しみ
世の中にはマッチングアプリに依存してしまう人がいます。著者も、30人以上の男性と次々に出会います。1日に3人をハシゴすることもあります。アプリを止めようとしても2週間で耐えきれなくなり、またインストールしてしまうのです。
誰かとすぐに会うことができるマッチングアプリは、満たされない思いを即日埋めることができてしまいます。様々な男性と予測できない展開を経験をするスリルに、自分がドラマの主人公になったかのように感じ、クセになってしまうものなのかもしれません。
とはいえこのマンガは2018年ごろのお話。現在はコロナ禍で、女性はなお一層用心深くなっているよう。以前からアプリを活用している男性が「コロナ禍以降、遊び目的の女性が激減した」ともぼやいていました。感染症予防のためにも、我が身を大切にする女性が増えることは、悪いことではないのではないでしょうか。
【書籍紹介】
38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみた結果日記
著者:松本千秋
発行:幻冬舎
cakesの大人気連載、待望の書籍化! 幻冬舎+テレビ東京+note「#コミックエッセイ大賞」第1回入賞作品。もうすぐ40歳、再婚する気まるでなし。イケメン沼にハマったチアキの実録恋愛ストーリー。
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