昨年末から、やたらとネットニュースを騒がせているのが、オリエンタルラジオの藤森慎吾さんだ。
相方のあっちゃんこと中田敦彦さんと一緒に吉本興業を辞めることを決意(あっちゃんはシンガポールに移住するが、藤森さんは日本に残るらしい)。そうかと思えば、年末には結婚報道も出た。すぐに本人によって「フェイクっ!!」と否定されたが。
そんなお騒がせ男・藤森さんだが、こんなにも“人たらし”な人はなかなかいないんじゃないかと感じる。それほどまでに、魅力的な人だと思うのだ。取材先で数回お見かけしたことがあるだけで、お話したことはないのだけれども。
酸いも甘いも知り尽くした男のやさしさ
たとえば、これはよく知られていることだと思うが、藤森さんは女性の外見を絶対に悪く言わない。容姿をいじらない。この件に関して、藤森さんはこう述べている。
「女の芸人さんに対する弄りってすごく難しいじゃない? 相当技術がいること。そういうことって、極々一部の腕のある人がやることで、自分にはその技術がないから。ウケもしないし笑えないんだったら、ただの悪口じゃん。だからやっぱ言わないよ、それは」
(藤森慎吾のYouTubeチャンネルより)
つまり、自分には(容姿いじりをしても)面白くする腕がない。そもそも、そういうことは好きじゃないし、やろうという感覚もない。だから容姿いじりはしない。(芸人として笑いの)腕がある人たちはやっているが、それはしっかり笑いが成立しているからいいけれど。自分はその技術がないから、やらない。それだけだと言うのだ。
容姿をいじらないというスタンスは徹底しつつ、かといって容姿をいじって笑いにしている芸人さんを蔑んだりもしない。ちゃんと相手を立てる。つまり、誰も傷つけない発言である。
咄嗟の受け答えが「君、かっこうぃーね!」
ほかにも、ほんの些細な受け答えだったが、ずっと心に残っていることがある。それは、同じくYouTubeでのガンバレルーヤの二人との会話の中のワンシーン。
藤森「久々だよね、ガンバレルーヤ。元気してた?」
ガンバレルーヤ「きゃー。どっちだと思います?」
藤森「いやいや。何その楽しいクイズ」
藤森さんと一緒にいることでテンションが上がっているガンバレルーヤの二人が、やや面倒くさい質問をしたのだが、それに対する「何その楽しいクイズ」って返答よ……。こんな素敵な返しをする人、今まで見たことがない。なんだか感動してしまった。
ほかにも、すべての言葉の返しに愛があって、これは老若男女みんな惚れてまうやろ! と心底思った次第である。
藤森慎吾が愛される所以は「プライドレス」な思考にあり
武勇伝で一躍ブレイクし、その後低迷しかけたけれど、チャラ男キャラで再びブレイク。最近では、YouTubeでの活躍のほか、ミュージカルや声優にも挑戦している藤森さん。映画『えんとつ町のプペル』でのスコップ役も最高だった。西野(亮廣)さんが当て書きしたことも相まって、ご本人の良さが120%反映されていた。
そんな、最高で最強の人たらし・藤森慎吾が、人たらしたる所以はどこにあるのか。その答えは、彼の著書『PRIDELESS 受け入れるが正解』(徳間書店・刊)に書かれている。
「褒め言葉」をすべての行動の原動力とし、なんにでもチャレンジする。けれども、どれだけ褒められ、もてはやされても、「学ばせていただいている」という姿勢は忘れない。プラスな感情のリアクションは惜しみなくして、相手に気持ちよくなってもらう。なにより、笑顔でいること。
そして、本のタイトルでもある「プライドがない」ことを最大の強みにする。つまらないこだわりが捨てきれずに、思うように生きられない人が多い中で、ハッとさせられる思考ではなかろうか。
本書では、藤森さんのこれまでの人生において何度も壁にぶつかり、その都度乗り越えてきたエピソードをまじえ、現在の「プライドレス」な生き方に至るまでの半生が描かれている。でもだからといって、「プライドレス」な生き方を読者に強いることは決してしていない。
むしろ、なにかのインタビューで「本に書かれていることすべてを真正面から受け止め、そのまま取り入れるのはすごく無駄な努力だと思う。こんな考え方もあるんだ、くらいの気持ちで読んでほしい」というようなことを語っていた。どこまでもフラットで、相手の気持ちをラクにさせる人である。
とにかくストレスフルな世の中には、プライドレスな生き方こそ処方箋になるんじゃないか? ひそかにそう思っている。
(『PRIDELESS 受け入れるが正解』―おわりにーより引用)
年齢を重ね、それなりの立場になり、ついいろいろな世間体やプライドが邪魔をして生きづらい人にこそ、ぜひ藤森流・プライドレスな生き方を。
【書籍紹介】
PRIDELESS 受け入れるが正解
著者:藤森慎吾
発行:徳間書店
こだわらない、逆らわない、競わない、あきらめない…成功を呼ぶ「気くばり思考」。初めて明かす、過去、現在、未来。大ブレイク後に訪れた悪夢。そこからの再起。オリラジ藤森が何度も立ち上がることができたわけ。「チャラ男」がたどり着いた現在地。