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2021/3/17 6:30

BLの原点にして日本の宝! 懐かしく新しい美少年漫画を丸ごと堪能できる『私たちがトキめいた美少年漫画』

今や男女共、当たり前に楽しめるようになったBL(ボーイズラブ)ですが、私が高校生だった20年ほど前は、隣の席の子から「BLって知ってる?」と教えてもらい「こんな世界があるの〜!」とドキドキしながら読んだほど秘めたものでした。今では気軽に電子コミックで読んだり、本屋さんでも普通に購入できるようになりましたが、当時は本屋さんで買うなんてめちゃくちゃ勇気のいる行為だったのです(私は借りる止まりで、買うことはできませんでしたw)。

 

けれど、そんな20年前よりもさらに昔、1970〜90年代にはすでにBLの原点とも言える美少年漫画という世界があったのはご存じでしょうか? 今回はBLが当たり前になった今だからこそ知っておきたい美少年漫画についてまるっと知ることができる『私たちがトキめいた美少年漫画』(オフィスJ・B・編集/辰巳出版・刊)をご紹介します。

 

漫画情報誌『JUNE(ジュネ)の誕生の経緯がすごい……!

耽美な美少年漫画の世界を語る上で外せないのが、雑誌『JUNE』だと言います。創刊号が出たのは1978年のこと。当時は『面白くてユニークでエキセントリックでヒワイでヘンタイチックで、マニアックで美しくしかもハイセンスな少女漫画誌を目指して作った』と編集部が語っていたそうなのですが、ちょっとどんな漫画雑誌なのかよくわからないですよね(笑)。『JUNE』には漫画家による美少年漫画の連載だけでなく、映画や小説などの情報、読者からの投稿コーナーも充実していたそう。しかし残念ながら、翌年1979年8月で休刊してしまうことに。その後に復刊しますが、そこには読者たちの存在があったそうです。その背景について当時の編集長である佐川俊彦さんは以下のように語っていました。

 

最初は売れ行きの予想がつかなくて10数万部出したんですよ。そうしたら返本が結構多くて休刊に。でもそのとたん読者から手紙が殺到して、コミックが240円とかの時代に、なぜかみんな判で押したように「1000円までなら出しますので復刊してください」って(笑)。

 

――熱烈ですね。読者は何を求めていたんでしょうか。

 

その手の情報すべてなんでしょうね。同人誌の紹介を載せていたので、コミケに行けない地方の人なんかは、『JUNE』を見て通販していたんです。投稿できる雑誌だということも大きかったと思います。

(『私たちがトキめいた美少年漫画』より引用)

 

今、これほど愛されている雑誌はあるのでしょうか……! 『JUNE』の創刊の歴史や当時の思い出を知ることで、女性たちのパワーのすごさを思い知り「現代を生きる私も、もっと頑張らないと!」と読んでいるだけでも力が湧いてきてしまいました(笑)。

 

みんなどんな目覚め方をしているの?

『私たちがトキめいた美少年漫画』には1955年生まれの漫画家・笹生那実さんとbelneさんのおふたりがどのようにしてこの世界に目覚めたのか……という対談も掲載されています。現役の方はもちろんのこと、「腐女子とは聞いたことがあるけど、一体どういうこと?」と思っている方が読んでも「なるほど!」と思える部分がたくさんありますよ。個人的に驚いたのが笹生先生の目覚め方!

 

私は小学校のときに『巨人の星』を見たのが最初です。とにかく花形くんの星くんに対する愛の深さに胸を熱くしました。花形満と星飛雄馬って、一方は眉目秀麗で精神年齢が上のキャラ、もう一方はちょっぴり可愛い精神年齢が下のキャラ。眉目秀麗側が密かに愛しているのに可愛い側は鈍感で…という組み合わせはBLによくありますよね。時代的なことや『巨人の星』が当時どれだけのブームであったかを考えると、『巨人の星』はBLの源流よりもっと深い、腐葉土であるというのが私の説なんです(笑)。

(『私たちがトキめいた美少年漫画』より引用)

 

想像力が素晴らしいのはもちろんですが、当時「ボーイズラブ」というジャンルがなかったのにも関わらず、小学生という年齢で物語の裏側を想像し、萌えや尊さを楽しんでいらっしゃったということに驚きます。

 

他にも、御手洗直子さんの『腐女子の目覚め』を描いたコミックエッセイも掲載されており、こちらもめちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでいただきたい……! たくさんの漫画家さんがこうやって影響を受けて「今」を生きていらっしゃるということに感激してしまいますよ!

 

また読みたい! 読んでみたい! 人も、電子書籍で読める時代だよー!

「昔は読んでいたのだけど、処分してしまって」「今はBL好きだけど、美少年漫画も読んでみたい」という方、ご安心ください。なんとこの『私たちがトキめいた美少年漫画』では、『ジャックとエレナ』シリーズ(清水玲子)、上海を舞台にした『南京路に花吹雪』(森川久美)、コメディとしても楽しめる『花の美女姫』(名香智子)など、今でも電子書籍で読むことができるコミックも多数紹介されています。

 

……なんて便利な時代! 『私たちがトキめいた美少年漫画』で読みたいと思った作品をすぐに読めるなんてうれしすぎますよね。私も読んでいて一番気になった『花の美女姫』を早速購入(笑)。感想をここで書いてしまうと長くなってしまうので割愛しますが、「この世界面白い……」と新たな沼を見つけてしまった予感がプンプンします。

 

全国的にも桜が咲き始めた今日このごろ、自分の中の新しい「春」を美少年漫画で見つけてみませんか?

 

【書籍紹介】

私たちがトキめいた美少年漫画

著者:オフィスJ・B(編)
発行:辰巳出版

ボーイズラブの原点・美少年漫画の世界を徹底紹介! 現在、ボーイズラブ漫画シーンが盛り上がっていますが、その創成期で、橋渡し的ともいえる美少年漫画の世界を紹介していく一冊です。紹介するのは70年代から90年代の作品をメインとして、基本的に「耽美」をテーマにした美少年と少年愛にスポットをあてていきます。竹宮惠子などの花の24年組や、坂田靖子などポスト24年組の少年愛の世界から、雑誌『JUNE』などに至る耽美の漫画誌や作品も辿っていきます。

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