今年は、東日本大震災から丸10年。そのためか、3月に入ってから地震関連の特別番組や特集が例年よりも多かった。
けれども、3月11日が過ぎると、その流れはパタリと止まってしまった。あの日あの時起こったことを思い出し、現在の自分の生活を省みること。防災対策が万全かをチェックすること。これらは、3月11日が終わって4月になっても、夏になって秋になっても、常に意識し続けなくてはいけないのではないだろうか。
防災を「ゲーム感覚」で楽しみながら学んでみる
みんな頭ではわかっている。防災が必要なことだと。でも、なんとなく億劫に感じたり、怖いイメージがあったり、何から始めたらいいかわからなかったり。
現に、今年2月に実施された「有事(災害時)の備えに関するアンケート(auじぶん銀行株式会社調べ)」では、「9割以上の人が災害への備えが必要だと思っている」にもかかわらず、「実際に災害への備えをしている人は約35%」にとどまっている。
少し前の私がそうだった。必要に迫られているのになにかにつけて言い訳をし、なぜか「自分だけは大丈夫」「生き延びられる」と根拠のない自信を胸に日々を過ごしていた。でも、それではダメなのだ。この地震大国に住んでいる限り、いつかはものすごい規模の大地震が起こるだろう。
そこでお薦めしたいのが、『防災クエスト』(辻 直美・著/小学館・刊)だ。著者の辻さんは、これまでにも防災に関する本を出しており、どれもわかりやすく実践しやすいものばかり。
特に今回は、防災をRPG(ロールプレイングゲーム)に見立てた漫画で展開されており、辻さんが課すミッションをひとつずつクリアしている仕掛けになっている。子どもでも読みやすい構成が特徴だ。
防災ミッションは、全部で13。防災とは何かを知ることから始まり、防災リュックの準備や家の中の防災対策、防災クッキングにチャレンジと少しずつステップアップしていく。そして最終ミッションは、防災キャンプをおこなってそれまでのスキルを実践するというもの。
どのミッションも、構えないとできないような難しいものではなく、ゲーム感覚で気軽に挑戦できるのが良い。これなら、週末に家族で楽しみながら実践できる。
災害用伝言ダイヤルを子どもと試してみた。
我が家でも、ミッションの中のひとつ「災害用伝言ダイヤルを使ってみよう」にチャレンジしてみた。
災害用伝言ダイヤルとは、災害発生直後の電話がつながりにくいとき、安否確認のために利用できる音声の伝言板のこと。自宅電話や携帯電話はもちろん、公衆電話からもかけられる。私自身、その存在は知っていたが実際に使ってみたことがなかった。そもそも、番号も怪しかったくらいだ(正解は171)。
毎月1日と15日に体験利用できるというので早速やってみたのだが、意外な問題点が次々と浮き彫りになる事態に!
171をダイヤルするとアナウンスが流れるので、特に使い方に困るわけではないが、録音にも再生にも共通の電話番号入力が必要だ。これを誰の携帯番号にするのか、家族で共有しておかねばいけない。また、いつ災害が起こるかわからないので、夫と私が使えるだけではいけない。子どもたちにこそ、電話番号と使い方を覚えておいてもらわなくては。
我が家は子どもたちに携帯電話を持たせておらず、家電(いえでん)もない。ということは、もしも子どもだけのときに被災したら、公衆電話を利用することになる。が、3人の子どもたちに聞くと、公衆電話自体がピンとこない様子。「緑色の電話でね」と説明するも、私自身、近所のどこに公衆電話があったかうろ覚えだ。災害用伝言ダイヤルはお金を入れなくても使えるようだが、そもそもの使い方から教えなくては。
せっかくありがたいツールがあっても、利用できなければ意味がない。そして、これらの問題点は、実際に使ってみたからこそわかったこと。ぜひ一度家族で実践してみてほしい。
災害は怖い。でも、防災をおもしろがろう。
辻さんは、本書を通じて私たちにこう訴えかける。
「災害は怖いけど、防災はおもしろい」
『防災クエスト』は、まさに防災を楽しみながら取り組むためにうってつけの一冊だ。まずは、読んでみる。そして、書かれていることを試してみる。
我が家は今度の週末、近所を歩きながら公衆電話を探してみようと思っている。ハザードマップを見ながら、家の周りの危険の確認も。子どもと散歩がてらおこなえば、楽しみながら防災に取り組むことができそうだ。目指せ、ミッション全クリア!
【書籍紹介】
防災クエスト
著者:辻 直美
発行:小学館
本書は、子育て家族のための防災の本です。防災をRPG(ロールプレイングゲーム)に見立て、家族みんなで楽しみながら防災スキルを身につけられる構成になっています。