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2021/4/16 6:30

「シェア」から「ギフト」へ。持続可能な新しい経済のまわし方——『ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』

モノや場所を多くの人と共有する「シェアリングエコノミー」が話題です。最近は「ギフトエコノミー」という言葉も出てきました。こちらはなんと、一切お金をかけずにモノやサービスのやりとりができるというのですが、どういう形で行われているのでしょうか。

 

ギフトエコノミーにはお金がかからない

シェアリングエコノミーは、モノやサービス、場所などをシェアまたは売買するもの。多くは利用する際に手数料や代金が発生します。たとえば、誰かとルームシェアをして共同生活を送る時は、大家さんに家賃を支払いますし、フリマアプリで不用品を売る時は、運営サイトに売買手数料の支払いが必要となります。

 

しかし、ギフトエコノミーにはお金が全くかかりません。ここがシェアリングエコノミーと大きく違うところです。無料でモノやサービスや場所を提供してくれる人がいて、利用者はタダでモノを受け取れたり場所を利用することができ、運営もボランティアスタッフが無償で行なっています。

 

なぜお金がかからないの?

モノをやり取りするのにお金が介在しないだなんて、にわかには信じがたいものがあります。けれど、私もかつては子育て系のネットコミュニティで、お古のベビー服セットを無料でいただいたことがあります。そして、私自身もそのベビー服をさらに別の人に譲り、リサイクルしていました。

 

なぜお金がかからなかったのか。それは送り主もそのほうが気楽だったからです。ベビー服をフリマサイトで売ったとしても大儲けできるわけではありません。それに、サイトに出品すると商品撮影などの手間もかかります。だったらまとめて誰かに譲って断捨離したほうが気楽です。近所のお子さんにお古の服をあげるのと似た感覚なのです。

 

ギフトエコノミーのコミュニティ

ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方』(リーズル・クラーク、レベッカ・ロックフェラー・著青土社・刊)は、無料のやりとりのコミュニティを作った女性たちの貴重な体験やノウハウが詰まった本です。著者のリーズル・クラークとレベッカ・ロックフェラーが2013年にFacebook上に地域の「Buy Nothing(買わない暮らし)」というコミュニティを立ち上げると、それはあっという間に世界各地にも広まり、総利用者が数十万人にまで成長しました。

 

地域のオンライン上のコミュニティ(本によると理想は500人程度)の中で、ベビーカーやホームベーカリーなどいろいろなモノや、ハウスクリーニングや散髪などのサービスを譲り合う、または貸し借りし合うのは、とても便利そうです。ご近所なので自分の足で受け取りに行けるから送料すらもかかりません。

 

消費とストレス発散

地域でモノを譲り合うシステムは、地球にもお財布にも優しいもの。もちろんすべてが無料というわけではなく、食料品や教育、それから文化などにはお金を使って暮らすのです。このシステムに慣れると、何かしらストレスが溜まった時の衝動買いがしづらくなります。

 

本書よると、ネットで買い物をする時や商品が到着した際に、脳は快感を得るのだとか。けれど、地域の人と不用品をやり取りする時にも、同様の感覚は得られるそうです。それは買い物体験とはまた違う「仲間とつながり、資源を分かち合う」という新しい喜びです。知恵を使いながら、ないものを調達したり、今あるものでまかなったりする暮らしは、心地よさにも満ちているでしょう。

 

こうした無償譲渡のコミュニティは日本にもいくつも出てきています。自分の持ち物を見返りを求めずに喜んで差し出すという行為を「喜捨(きしゃ)」と言います。それにはモノに対する執着を捨てるという意味も含まれているのだとか。ギフトエコノミーに清々しさを感じるのも、この喜捨の精神が流れているからなのでしょう。

 

【書籍紹介】

ギフトエコノミー 買わない暮らしのつくり方

著者: リーズル・クラーク、レベッカ・ロックフェラー
発行:青土社

持続可能な世界をつくるために私たちができること。ヒマラヤの小さな村で「見返りをもとめない贈与」=真のギフトエコノミーに出会った著者は、友人と二人で物々交換サイト「買わない暮らし」を立ち上げました。そして、サイトはまたたく間に会員を全米に広げ、一大ムーブメントを引き起こしました。この運動は単にエコというだけではなく、隣人とのつながりも深めるという意味で、新しいライフスタイルを提言しています。コロナ時代だからこそ求められる、読むだけで簡単に始められる、地球とお財布にも優しい「新しい生活様式」がここに!

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