本・書籍
2021/5/23 20:00

未踏の洞窟の奥に広がっていた光景とは!? 洞窟探検家が語るその魅力~注目の新書紹介~

書評家・卯月 鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。

 

人を引きつける洞窟という魔力

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。「川口 浩探検隊」に限らず、昔は狭い洞窟を進んでいくテレビ番組がちょくちょくありました。突如コウモリが襲ってきたり、横穴を抜けると美しい湖が広がっていたり……。ブラウン管にかじりつく勢いで、凝視していたのを覚えています。

 

今でも観光地に洞窟・鍾乳洞があるとつい足を運んでしまいます。観光地なので、安全かつ先に何があるかもわかっているのに、ドキドキするのはなんででしょう?(笑)

今回紹介する新書は『洞窟ばか すきあらば前人未踏の洞窟探検』(吉田勝次・著/扶桑社・刊)です。本書は2017年に刊行された書籍に、ラオス探検のパートを加筆、全体を修正した新書版。洞窟の魅力が詰まっています。

 

著者の吉田勝次さんは日本有数の洞窟探検家。外構工事会社を経営しつつも、洞窟探検にハマり、今では洞窟ガイドを行う地球探検社も設立。常に洞窟のことばかり考えている「洞窟病」に感染してしまったとか。

 

絶景が広がる地下空間の世界

第1章「洞窟病、重症化する」では、のちにホームグラウンドとなる三重県の大洞窟「霧穴」を見つけて、実際に探検していく様子がいきいきと語られます。

 

霧穴は、吉田さんと仲間が立ち入るまでは未踏の地でした。洞窟がある山の管理者に頼み込んで期待半分、不安半分で潜ったところ、そこは驚くほど広大な洞窟。

 

入口から歩いて30分ほどの平らな空間を見つけ、ベースキャンプを設置し、泊まりがけで探検することに! 地下水が流れているので生活用水は万全。天井から落ちる水滴はブルーシートを張って防ぎ、床にシートとマットを敷いたら快適空間の出来上がり。さらにインターホンを置いて外部と連絡ができるようにする……。

 

なお、洞窟を汚さないよう食事は捨てずに食べきり、排泄物はジップロックとペットボトルに入れて持ち帰る、というルールを徹底しているそうです。まさに秘密基地! 読んでいて子どものころの憧れが一気に蘇りました。

 

第3章は、国内外のさまざまな洞窟のエピソードが挙げられていきます。ベトナムにある世界最大といわれる「ソンドン洞窟」、奇跡的に水が引いた先に人類未到の空間が広がっていたラオスの洞窟。

 

なかでも行きたい気持ちをかきたてられたのが、沖縄・沖永良部島の「銀水洞」。巨大なホールの底にあるリムストーンプール(棚田)のすべてに透明なブルーの水がたまり、ライトを沈めるととんでもない絶景が浮かび上がったとか! 周囲の鍾乳石も真っ白な“生きている”状態。これはぜひ自分の目で見てみたいものです。

 

海外の洞窟探検は、通訳や村の人など「いい人に巡り会えるか」が成功のカギ。現地の政治家に振り回されて洞窟に入る許可を取るだけでも一苦労なんてことも……。各洞窟のページ量はそれほど多くはないものの、生の言葉で語られていて、臨場感に満ちています。

 

巻頭には16ページにわたって洞窟のカラー写真も載っています。特にラオスの洞窟の地下神殿を思わせる荘厳な岩壁は圧巻!

 

文章には吉田さんの洞窟愛が満ちていて、こちらも純粋な気持ちになりました。私たちの気がつかない場所に、こんなにも神秘の空間が広がっている。私もしばしの間、“洞窟ばか”の一員でした。

 

【書籍紹介】

洞窟ばか すきあらば前人未踏の洞窟探検

著者:吉田勝次
発行:扶桑社

落石で骨折し片手で300メートルのロープをよじ登る。17cmの隙間があればもぐりこむ。排泄物はすべて持って帰る。ときに10日間以上洞窟に入りっぱなしのことも。何度死にかけても、見てみたい!! 圧倒的な暗闇に広がる、美しくも恐ろしい世界。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

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