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2021/6/25 6:15

皮膚を刺激して「オキシトシン」を分泌させれば「幸せ」になれる!

誰もが幸せになりたいと願っているでしょう。けれども「幸せとは何か」と改めて自分に問うと、よくわかりません。もちろん、私も幸せを求めて日夜努力しているつもりです。それでも、やはり、生きているのは辛くて、苦しい……。

 

周囲に不満があるわけではありません。家族はそれなりに元気ですし、あたたかな心をもった友人や知人に恵まれています。これで文句を言ったら罰が当たるとよくわかっています。わかってはいますが、生きるのが苦しいのは変わりがありません。そもそも「幸せとは何か」わかっていないのが一番の問題です。

幸せが生きるのに邪魔って本当?

引き寄せる脳 遠ざける脳』(中野信子・著/セブン&アイ出版)は、「幸福とは何か?」を教えてくれる本です。著者・中野信子は、脳科学者であり医学博士であり、認知科学者でもあります。現在、東日本国際大学で教授として教鞭を執りながら、多くのテレビ番組に出演しているのでご存じの方も多いでしょう。彼女は幸福に脳科学者としてアプローチします。そこがユニークで面白いのです。

 

脳科学の観点で見ると、「幸せを感じる」という営みは、脳と体が絶えず行う相互作用に過ぎません。そのとき、脳で分泌される神経伝達物質である「オキシトシン」の作用が、幸せの感情をもたらすことが明らかになっています。

(『引き寄せる脳 遠ざける脳』より抜粋)

 

「えっ、そうなの?」と驚きつつも、著者に従ってついていけば幸せの正体をつかみ、自分を幸せにすることができると信じたくなります。幸せについて、著者はさらに驚くべきことを教えてくれます。

 

実は、人間の生命活動を維持するためだけなら、「幸せ」はとくに必要なものではありません。いや、むしろ邪魔になるものとさえいえます。

(『引き寄せる脳 遠ざける脳』より抜粋)

 

再び、「えっ、そうなの?」となります。幸せが邪魔だと言われると戸惑いますが、もし、幸せであることに満足してしまうと、もう何もしなくていいとなり、向上心が欠如してしまうというのです。そう言われるとそうかもしれません。幸せを求めて何かをすること、そこが肝心なのでしょう。

 

 オキシトシン、それは何?

幸せを感じているとき、人の脳にはオキシトシンという神経伝達物質が分泌されるとのだそうです。これまで幸せって何だろうと考えてきましたが、分泌物が鍵だったと知ると、なぜか心が楽になります。恵まれていると知りながら、生きるのが苦しいと感じる自分を恥じていましたが、きっとオキシトシンが足りなかったのでしょう。そう考えると、「オキシトンを増やせばいいのだから大丈夫〜〜」と自分を励ますことでき、それだけでなんだか幸せになってきます。

 

オキシトシンには不思議な力があります。ラットを使った実験でも、背中に傷をつけたラットにオキシトシンを注射すると、傷の治りが早くなるという結果が出たそうです。他にも、オキシトシンにまつわる衝撃的な実験を著者は示してくれます。

 

現在では倫理的にとても許されない実験が、第2次世界大戦後のスイスで心理学者のルネ・スピッツによって行われました。

これは、孤児院の新生児を対象に、食事や排泄などの日常の世話はするものの、誰も話しかけず抱っこもせず、栄養はミルクで与えることを続けて結果を観察するというものでした。つまり、スキンシップを与えることを続けて結果を観察するというものでした。

結果は衝撃的なものでした。

なんと55人いた子どものうち、27人が2歳までに亡くなり、残ったなかの17人があまり成長できず、成人を迎える前に死んでしまいました。さらに、成人後も生き続けた11人も、知的水準が低かったり、知的障害が見られたり、体が病弱だったりしたそうです。

(『引き寄せる脳 遠ざける脳』より抜粋)

 

つまり、赤ちゃんは栄養を与えてもそれだけでは生きていけず、抱き上げて可愛がってこそ、すくすくと育つのです。

 

振り返ってみると、私は息子が赤ん坊のとき抱いてばかりいました。ベビーベッドに寝かせるとグズグズいうからです。「抱き癖がつくわよ」と何度も注意され、「私は駄目な母親だろうか」と、悩んだこともありました。けれども、もし、赤ん坊が愛情を食べて育つのなら、あれでよかったのだと、40年近く前の子育てを肯定的にとらえることができ、幸せな気持ちになりました。オキシトシンが分泌されたのかもしれません。

 

オキシトシンを得るために

では、オキシトシンの分泌を増やすために、私たちは何をしたらよいのでしょう。著者は日常生活の中で、どうすべきか教えてくれます。それは意外に簡単なことでした。オキシトシンを出すためには皮膚への刺激やスキンシップが大切なので、それを満たすようにすればいいというのです。

 

たとえば、心地よい服を着ること、肌触りの良いタオルを使うこと、さらには、入浴も効き目があるといいます。音楽を聴く、とくにコンサートなどで、皮膚感覚に訴えかけてくる音を感じると、オキシトンシンが分泌されるそうです。確かに、私も肌が心地よいと幸せに包まれます。キーワードは「肌」にあったのです。

 

息すって吐く、それで上出来と思いたい

多くの人が「自分はなぜ生きているのだろう」と問い続け、胸つまる思いを抱えながら暮らしているのだと思います。それは人間にとって永遠のテーマであり、私たちを進歩させる問いでもあるのでしょう。同時に、私たちを不安に陥れ、苦しみの原因となることも多いに違いありません。

 

私の周囲には、鬱病や神経症を抱え苦しむ人がたくさんいます。私に悩みをぶつけて来る人もいます。「どうしてあなたはいつもそんなに幸福そうな顔してるの?」とか、「よく眠れていいよね」やら「恵まれてるからだよね〜」と、明らかに悪意に満ちた言葉を投げかけられることもあります。

 

そんなとき、私は返答に困りつつも、のんきでへらへらしてるのは事実だしな〜と、落ち込みます。けれども、私にだってやはり悩みや苦しみはあります。死ぬほど悩んで眠れなくなり、「私、心を病んでいるのかな」と、思ったこともあります。ところが、ある時、息子に言われました。

 

「母さん、生きているだけでいいじゃん。息すって、吐いて、それだけじゃ、駄目なの? それで充分だよ」と。その時、私は「えっ!そうか」となりました。

 

以来、人間は生きているだけで、たいしたものなのだと、自分を励ましてきました。今回、『引き寄せる脳 遠ざける脳』を読み、さらにその思いを強くしています。一日、ただ息をすって吐くだけでいいのです。それだけでもけっこう大変です。まして、ご飯を作り、掃除をして、原稿を書いた日は、「もう上出来、上出来。できすぎ〜」と、自分を褒めるようにしています。

 

一日をどうにか乗り切り、ちょっとでもオキシトシンを分泌できたらそれで十分……。いつかきっと幸福を引き寄せる脳を得ることができると信じて、今日を生き抜きましょう。

 

 

【書籍紹介】

引き寄せる脳 遠ざける脳

著者:中野信子
発行:セブン&アイ出版

人は誰もが「幸せになりたい」と願うもの。脳科学的に見れば、「幸せを感じる営み」とは脳と体が絶えず行う相互作用といえます。脳の機能と使い方を知り、「幸せホルモン」である「オキシトシン」を上手に活用することで、人は幸福感に満ちた人生をつかみ取れる。脳科学者・中野信子先生による、まったく新しい「実践・幸福論」。

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