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2021/8/22 6:00

各ピラミッドの角度が少しずつズレている謎とは? 古代と天文のミステリー~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月鮎です。「智恵子は東京に空が無いといふ」。これは高村光太郎の有名な詩の冒頭です。東京にだって空はあるのですが、都会のせわしさで空の雄大さを感じる心が失われてしまっている、そんな気がします。そういえば私も最近、雲や星をのんびり眺めてないなあと……。こうしたときだからこそ、空に思いを馳せるのもいいかもしれません。

 

最近、空を見てますか?

古代文明と星空の謎』(渡部 潤一・著/ちくまプリマー新書)は、古代と天文という二大ロマンが一気に味わえる一冊。

著者の渡部潤一さんは天文学者で国立天文台副台長。国際天文学連合で「準惑星」というカテゴリーが作られたときに、冥王星をその座に据えた惑星定義委員のひとりとしても知られています。『第二の地球が見つかる日』(朝日新書)、『眠れなくなるほど面白い 図解 宇宙の話』(日本文芸社)など著書多数。今回は昔の人たちが星空をどのように眺め、どう利用してきたか、遺跡や記録を手がかりに読み解いていきます。

 

ピラミッドの角度がズレている理由

第1章「巨石文化は何を示しているのか?」では、巨石で有名な古代遺跡を「古天文学」の見地からチェックしていきます。

 

イギリス南部のソールズベリーにあるストーンヘンジは、誰が何のために作ったのか、いまだにわからない謎多き遺跡。立てられた年代もはっきりとはわかっていません。このストーンヘンジ、中央に平たい石「聖壇石」があり、この石とサークルの外側に置かれている立石を直線で結ぶと夏至の日の出の方向と一致するのだとか!

 

あれだけの巨石がきちんと計算されて置かれている。ストーンヘンジは天文観測所だったのか、日時を測る巨大な時計だったのか、それとも宗教的な祭壇だったのか……。想像力をかき立てられます。

 

2章はエジプトのピラミッドと天文学の関わりについて。最近の研究では、ピラミッドの内部構造を「ミューオン」という素粒子で透視する手法が進んでいるそうです。これによって、ピラミッドの内部は太陽信仰に基づき、埋葬された王が天へ登るための階段を模していると考えられるようになりました。

 

星を使って方位を測って建築されたといわれるピラミッドは、各辺がかなり正確に東西南北を向いています。現在の測量技術で確かめてもほんのわずかな違いしかないというから驚きです。ただ、そうはいっても各ピラミッド同士を比べると、東西南北に微妙なずれが生じています。一見測量のずれと簡単に片付けてしまいそうですが、実はこれは天文学的な現象「歳差」が理由……という説があります。

 

地球は自転する際に地軸が円錐状に動く「みそすり現象」を行っているため、星が見える位置も時間の経過に伴い少しずつずれていってまたもとに戻ります(およそ2万6000年周期)。星を基準に厳密に方位を測っていたため、結果的に建造年によって各ピラミッドの角度が若干異なってしまった……。そして、この手がかりから正確な建造年が導き出せる! まさにミステリーの謎解きのようです。

 

ほかにも、マヤ文明と金星の関係、奈良のキトラ古墳で見つかった世界最古とされる天文図「星宿図」の秘密といったロマンをかきたてるトピックが多数。星の座標の概念など文系には少々手強い箇所もありますが、文章が柔らかく読みやすいのも本書のいいところ。人類がこれまで見上げ続けてきた空。空への想いは時を超えてつながっています。

 

【書籍紹介】

『古代文明と星空の謎』

著者:渡部 潤一
発行:筑摩書房

ストーンヘンジは夏至の日の出を示し、ピラミッドは正確に真北を向いている。古代人はどうやって計測したのか。当時の星空をシミュレーションして読み解く!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

 

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