本・書籍
2021/9/9 6:15

毎日がてんてこ舞いでトラブル祭り!? いつもより印刷物をありがたく感じられる漫画『印刷ボーイズに花束を』

突然ですが、私がこのページで書籍紹介をさせてもらうようになり5年ほどになります。毎週どんな本を紹介しようかと本屋さんをウロウロしたり、Amazonを眺めていたり、私のお仕事は「本」がなくては始まりません。そんな「本」が当たり前に印刷されて私の手元にやってきていると思ったら……そりゃあなた! バチがあたりまっせ! というのを実感させてくれる漫画が『印刷ボーイズに花束を』(奈良裕己・著/ワン・パブリッシング・刊)です。

 

印刷会社のナビ印刷に勤める刷元 正(すりもと・ただし)さんを中心とした登場人物たちが、印刷会社のあるあるを面白おかしく語りかけてきます。いつも必死! 常にトラブル! でも出来上がった商品を見て思わず笑顔になっちゃう! そんなどこかちょっぴり愛おしい彼らの世界をご紹介します。

 

漫画の面白さに加えて、印刷業界の情報がてんこ盛り

この『印刷ボーイズ』シリーズは、GetNavi webの漫画コーナーで連載されている人気連載をコミックブック化したもの。これまでに『いとしの印刷ボーイズ』『印刷ボーイズは二度死ぬ』と2冊出ており、今回ご紹介する『印刷ボーイズに花束を』で第三弾になります。

 

著者はマンガ家でイラストレーターの奈良裕己さん。元印刷会社&広告制作会社の営業マンという経歴を持つ方なので、他の業界漫画と比べても「これでもか!」というほどに業界知識が散りばめられています。過去2作品にもたくさんのあるあるや業界知識が掲載されていましたが、今回は気合がすごい(笑)。

 

特に、広辞苑ならぬ『印辞苑』がおまけとして付いているのですが、これっておまけのレベルじゃないよね!? と思うほど。以下のように丁寧に印刷に関する用語が紹介されているのです。

やれ【ヤレ】印刷・加工などの工程でどうしても出てしまう「製品として使用できなくなった印刷物」、つまりゴミのことです。破れたり汚れたりで使用できなくなった用紙を「ヤレ紙」と呼びます。

(『印刷ボーイズに花束を』より引用)

 

しかもこの『印辞苑』は全21ページ、196用語も掲載されているんです!!!! 専門誌ですか? いいえ、漫画です。

 

これから印刷業界を目指したい大学生や、転職先として検討している人なら、教科書レベルで役立ちます。私も雑誌を作るお手伝いをしたことがあるのですが、前2作品の『印刷ボーイズ』があったことで、デザイナーさんとのやりとりがスムーズにいくようになり、めちゃくちゃ助けられた経験があります。笑いながら漫画を読んでいるうちに、「どうしてそんなことを知っているの!?」という知識まで身についてしまう一冊なのです。

 

個人的にはビジネス書以上に役立つ一冊なので、印刷と関わるお仕事をしている方には、ぜひ持っておいていただきたい漫画だと思います。

 

CMYKとRGBの違いってちゃんとわかっていますか?

私自身、新卒で入ってから今までの10年以上ほぼウェブ畑だったため、ず〜っとRGBという色味で画像を作ってきました。ある時、RGBカラーのまま印刷データを作ろうとしたことがあり、デザイナーの子から「つるちゃん、それはまずいよ」と言われたのも懐かしい思い出……。

 

そう、ウェブのRBGのまま印刷すると若干のくすみが出たり「あれ? なんか画面上で見るとの違うな〜」という色になることがあるのです。

 

説明しよう
デジタル画像や動画のRGBと印刷のCMYKではそもそも色域が違うため、色によってはRGBで再現できてもCMYKでは不可能な場合がある!

(『印刷ボーイズに花束を』より引用)

 

「そんなの気にしないよ〜」という人も多いかもしれませんが、これ気になり始めるとめちゃくちゃ気になるポイントでして(笑)。デザイナーさんだけでなく、デザインに関わる全ての人に知っていただきたいポイントなのです!

 

ちなみに今回のシリーズから登場するフリーランスデザイナーの真戸珠緒ちゃんは、RGBの申し子と言っていいほどRGBへの強いこだわりがある子。彼女の要望に、ナビ印刷がどう応えるのかはかなり読み応えがあります。CMYKでのRGBの色味の再現化は「おおおお〜!」と声が出るほど感動しました。

 

本にチラシに商品パッケージ、街のポスターなどなど印刷物に幸あれ!

最近では、オンラインでの会議や動画コンテンツなど、紙を見る機会が減ったなんて言われますが、『印刷ボーイズに花束を』を読んでいると、身近な印刷物に愛着が湧くようになってきます。

 

本はもちろんのこと、自宅のポストに投函されているチラシ、買い物したらもらえるレシート、どうやって印刷したの? と思うようなツルツルな紙に印刷された商品パッケージ、どでかい街中のポスターなど、私たちの身近にはたくさんの「印刷物」が存在しています。何気なく、手にしているものですが、街の中に目を向ければそこは印刷物だらけ! そしてその印刷物は勝手にポン! と生まれたのではなく、デザイナーさんや印刷会社などたくさんの手を経て私の手元にたどり着いているわけです。

 

たかが印刷、されど印刷! 日々奮闘し続けている印刷ボーイズ達に感謝しながら、これからも本をいっぱい読んでいきたい、そんなことを考えています。

 

 

【書籍紹介】

印刷ボーイズに花束を 業界あるある「トラブル祭り」3

著者:奈良裕己
刊行:ワン・パブリッシング

印刷事故で謝りまくる営業マン、怖い現場の職人気質のベテラン、無茶苦茶を言うクライアント……。マニアックなのに不思議に魅了される面白さに、さらにシリーズ史上最大と言える新規コンテンツを収録!「印辞苑」~印刷用語の基礎知識~(21ページ)、「印刷王ウルトラクイズ」、コラム「印声人語」の欄外オマケ74本、特製<手描き>校正記号一覧表など、印刷・広告・出版業界関係者にとどまらず、紙に関わるすべての人が「面白く学べる」シリーズ第3弾です!

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