「ヤギ飼い」というと、多くの人は「アルプスの少女ハイジ」に出てくるペーターを思い出すことでしょう。ペーターは毎日村人達のヤギをまとめ、山に連れて行く仕事をしていました。そして実は、現代の日本で、ヤギの飼養頭数が増加しているのです。なぜ、今、ヤギが人気なのでしょうか。
ヤギの頭数1.5倍増
2011年から2018年の間、日本で飼養されているヤギの飼養頭数は約2万頭から約3万頭へと1.5倍も増加しています(農林水産省「めん羊・山羊をめぐる情勢」(令和2年)調べ)。
約1万2千頭と圧倒的シェアを誇っている沖縄や、九州地方ではヤギは肉食用で、それ以外の地域は乳用が多いとのこと。沖縄料理では豚肉以外にヤギ肉も使われ、専門店もあるそうなのです。
飼いやすく助けになるヤギ
食用ではなくヤギと暮らすことを選ぶ人も増えています。以前、東京都内の住宅街で、ペットのヤギを散歩させている人を見かけて驚いたことがあります。かつては渋谷にもヤギがいるカフェがありました。のどかな姿を眺めているだけで時間はあっという間に過ぎたのですが、今はもう引退されています。
また、立川駅北口の空き地でヤギたちが雑草をはべっていたこともありました。ヤギたちは除草作業のためにいたのですが、道ゆく人たちが眺めたり写真を撮ったりとしばしの間、癒しの存在になり、元の牧場に戻る際にはお別れ会が開かれたほどの人気でした。
ヤギはニワトリと並んで自給自足生活を送る際の助けになる家畜だとも言われています。ニワトリからは卵が、ヤギからは乳がとれるからです。牛よりもずっと小柄で飼いやすいうえに除草までしてくれる働きものなので、田舎暮らしの相棒として飼われることも多いのだとか。
ヤギのいる暮らし
『ヤギ飼いになる New edition!』(ヤギ好き編集部・著/誠文堂新光社・刊)は、1冊まるごとヤギと暮らすための本です。子ヤギの時から高齢時までのお世話の方法がレクチャーされ、なりやすい病気リストや困った時の問い合わせ先リストまで付いている、とても親切なつくりになっています。
目を奪われるのは、随所に並んだ写真の可愛らしさ! 実際にヤギを飼っている人たちを訪ね、日常の光景を綴っているのですが、まるで飼い主に笑いかけているかのような表情豊かな画像が多く、ヤギ愛に溢れていて、ほっこりします。
ヤギ撮影のコツ
動物園などでヤギを撮影しようとすると、まぶしそうに目を細めている顔になってしまい、あまり可愛く撮れないことが多いのですが、本書ではそれについてもしっかり説明がされています。明るいところではヤギの瞳孔は細くなってしまうのだそうです。
黒目がちな愛らしい顔を撮るには、夕方や曇りの時など、光が弱まっている時を狙うと良いそうです。本の表紙のヤギがまさにそんな感じのくりくりした瞳をしています。曇りの時に黒目に白っぽい空が映り込むようにして撮れば瞳が潤んで輝いて見えると、細かなアドバイスもありました。
ヤギがいるところ
草の上でのんびりとまどろむヤギの画像を見つめているうちに、実際に会いに行きたくなる人もいることを見越しているのでしょう、本書にはヤギ牧場やヤギのいる宿泊施設や飲食店も紹介されています。ヤギの乳やチーズは通販もされているので、一度試してみたくなってしまいます。
ヤギを大切に思って作られたであろうこの本は「もし私がいつかヤギを飼ったら……」という楽しい空想をも与えてくれます。気持ちを遠い高原に飛ばし、隣には白く温かいヤギが寄り添ってくれていることを思い浮かべるだけで、心が和らぎ、ひとときの幸せに浸ることができるのです。
【書籍紹介】
ヤギ飼いになる New edition!
著者:ヤギ好き編集部
発行:誠文堂新光社
自然の多い田舎のカフェやレストラン、体験ができる農家などで、ヤギを見かける機会が増えました。そういう場所でヤギに触れ、ヤギの魅力にはまっている人も多いはず。ヤギは、ミルクが取れ、除草の手助けもしてくれて、そして伴侶動物として何よりかわいく、私たち人間にとって、とってもとっても優秀な動物なんです! そんなヤギの魅力と実際に飼うにはどうしたらいいのかを、かわいい写真をたくさん交えて紹介します。