「うつ」や「不安」に悩み苦しむ人が身近にいる場合、どうしたら、その人が症状から脱出できるのか? なんとかしたいと思うものの、考えれば考えるほど、わからなくなる。
■「うつ」や「不安」に苦しんでいたら
『自分で「ストレスケア」ができる本』(足立總一郎・著/ブックビヨンド・刊)には、多くの人が陥る「うつ」と「不安」には、いったいどういう症状の違いがあるのか、また、そこからどう抜け出したらよいかがわかりやすく書かれている。
著者は精神科医として35年ものキャリアを持つ人だけに、診察室で白衣をまとい、身をかがめて私たちの訴えを聞いてくれているかのような語り口だ。もし、あなたがストレスを感じ、心の病に苦しんでいるなら、一度この本を読んでみてはいかがだろう。きっと、泥沼から抜け出せると信じて・・・。
■つらいもの、それは心の病気
素人の私が考えても、心の病は難しいものだと思う。手術もできず、投薬も複雑。全快したのかどうかもわかりにくい。1度かかってしまうと、もう立ち直れないのではという恐怖心から逃れることができない。
まるで膿みが出きらないおできのように、ジュクジュクと長引き、熱を持ち、汁を出しながら、病原菌をまき散らし、心をぐずぐずにしてしまう。どうやったら、この苦しみから逃れられるのかと、思い悩むものの、周囲に訴えることもできない人のなんと多いことだろう。
■心の病は脳の誤作動?
近年、心の病は脳の機能異常と関連していることがわかってきた。
日常生活で起こるさまざまな問題でストレスがかかり続けると、脳の前頭葉などの細胞が興奮し、抑制がきかなくなって誤作動を起こしてしまいます。こころの病といわれているものは、脳の病なのです。
(『自分で「ストレスケア」ができる本 』より引用)
フムフム、なるほど。誤作動と言われると、納得がいく。理由がわからぬまま、ただ憂鬱だったり、意味のない不安に苦しんでいるときは、この言葉を思い出そう。
■ワークシートが心の病に効きます
本書の中でとくに興味深いのは、「認知や行動を修正することで気持ちを楽にする方法」が書かれているところだ。認知行動療法と呼ばれるもので、ストレスを軽減するために有効であり、医療にも取り入れられているそうだ。
「自分の取扱説明書」というべきワークシートを書くことによって、自分の気持ちを整理することができる。『自分で「ストレスケア」ができる本』には、ワークシートが掲載されているので、記入例を見ながら、自分自身について書き込んでいけばいい。ペンを持ち、紙に書き付けるという行為は、心の散歩をするように、私たちの心と体をほぐしてくれる。
■ワークシートの記入法、6つのステップ
では自分のトリセツともいうべき、ワークシートの記入法だが、以下のように、 6つのステップがある。
①「今の自分」を書いてみる
②自分をとりまくサポーター
③日常生活で手軽に気分がよくなることリスト
④これだったらできそう!やりたいことリスト
⑤「嫌だ」を分析してみましょう
⑥より望ましい認知や行動を考えてみましょう
この6つの問いにワークシートを使って正直に答えてみることで、私たちは落ち込んでいる深い闇から這い上がれるとしたら、試してみない手はない。
■エネルギーを別の方向に向けよう
「うつ」や「不安」に満ちた生活は、本当に苦しい。死んでしまいたいほど苦しい。実際、その道を選んでしまう人もいる。けれども、落ち込んだときは「自分の取扱説明書」を書き、ありのままの自分を見つめて、暗い穴から這い出さそう。
そのために何より必要なもの、それは自分で自分を取り扱う方法を会得することだ。私は人間には幸福になる才能が備わっていると信じている。誤作動をただせば、心に巣くったジュクジュクのおできは治り始め、幸福という名の薄皮がはってくる。そう信じよう。
そのためにも、さあ、今すぐその手にペンを握り、あなたのワークシートを完成させようではないか!(文・三浦暁子)
【参考文献】
自分で「ストレスケア」ができる本
図解+書き込み イメージでつかめる「うつ」と「不安」
著者:足立總一郎、足立昇平、 中尾睦宏、 城月健太郎
出版社:ブックビヨンド
人は誰しも、ストレスがたまったり、困難な問題が生じたり、人間関係がうまくいかなかったりしたときに「うつっぽい」とか「不安でしかたがない」と感じることがあるでしょう。それは「こころの病」の始まりかもしれません。でも、「うつ」や「不安」とは、そもそもどういう状態なのか、あなたは説明できますか? 説明できないことにとらわれて悩んではいませんか?
本書は、誰にでも起こりやすい「うつ」と「不安」を取りあげ、そこから自分の力で抜け出していく方法を具体的に紹介しています。抜け出すにはコツがあります。そのコツを知っているだけで、あなたは日常生活をずっと楽に過ごすことができるはずです。内容は、今注目されている認知行動療法のエッセンスを取り入れ、極力専門的な言葉を使わず、図解を多用して、誰にでもわかるように構成しています。きっと、どなたでも気軽に始められると思います。
また、自分のこころのトリセツ(取扱説明書)を作るための書き込みシートも用意しました。これを作っておけば、もしあなたがストレスに押しつぶされそうになったとき、どうやったらそこから立ち直れるか、有効な指標となってくれることでしょう。本書を使って、あなた自身の力で、こころの元気を取り戻してほしいと願っています。
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