フリーランスという形で働き始めて27年。デビュー年でいえば有吉弘行さんや竹野内豊さん、そしてGLAYさんと同期ということになる。
年初の抱負
毎年、抱負や目標を決めて文字に残すことにしている。最初のうちは翻訳本や単行本を何冊出版したいとか、連載を何本持ちたいといった具体的な内容だったのだが、キャリアを積み重ねていく過程でより広いくくりでの言葉が多くなっていった。
そして2022年の抱負あるいは目標は、さまざまな形でより多くの人たちに興味を持ってもらえるようになることだ。そのために、去年の自分より面白くなりたい。ただ、面白いというのはとても範囲が広い言葉で、最大公約数的な定義がしにくい。
生きていく上で不可欠な感覚
面白いという感覚を可視化する上で役立ってくれそうなのが『面白いとは何か? 面白く生きるには?』(森 博嗣・著/ワニブックス・刊)という本だ。300冊以上の著作がある人気作家による本書の第一義的な性格は、「面白さ」を基準にクリエイターの視界に映るさまざまな要素についての思いを綴ったものということになるだろうか。ただ、本書の対象は仕事がらみで面白さを追い求めている人たちだけではない。
同時に、「面白さ」を知ること、生み出すことが、すなわち「生きる」ことの価値だという観点から、「面白い人生」についても、できるだけヒントになるような知見を、後半で言及したい。
『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用
面白いという感覚は、人が生きていくために不可欠な要素なのだ。
共感という機軸
章立てを見てみよう。
第1章「面白い」にもいろいろある
第2章「可笑しい」という「面白さ」
第3章「興味深い」という「面白さ」
第4章「面白い」について考える
第5章「生きる」ことは、「面白い」のか?
第6章「面白さ」は社会に満ちているか?
第7章「面白く」生きるにはどうすれば良いか?
第8章「面白さ」さえあれば孤独でも良い
第9章「面白さ」の条件とは
「面白い」という感覚の定義から始まって、それを反芻し、まず自分に反映させ、社会全体に投影し、最後にその不可欠性が語られる。筆者がイメージしていた面白さの可視化とは、まさにこういう流れなのだ。大前提に関しては、少なくとも部分的には次の文章によって説明されるはずだ。
人間は、いろいろいるし、また個人の中にもさまざまな価値観が混在し、非常に複雑に絡み合った反応をする。それなのに、大勢が同じものを「面白い」という現象が観察されるのは、とても不思議なことだ。この「共感」も人間の凄さの一つかもしれない。
『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用
ネット時代の面白さの中核は共感
森氏が指摘する面白さの機軸は、共感の他にもいくつかある。「興味深い」「考えさせられる」「気づき」「役に立つ」。いずれも何らかの行動のきっかけになる感覚だ。共感をはじめとする機軸が紐づけられるから、ネット上でも「いいね」がやりとりされる。実はこの仕組み、人間のサバイバル本能にも直結しているようなのだ。
脳が「面白い」「面白そう」と感じなければ、それらを得ようとする行動を起こさない。それでは、生きていくうえで支障がある。生物の基本的な指向は、「生存」であるから、「面白い」は、実は生きることにリンクしている。
『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用
面白さをカスタマイズする
面白く生きていくためにはどうしたらいいのか。森氏が示すビジョンは明快だ。
隅々まで探して、「面白さ」を見つける姿勢を、いつも持っていること。それが、「面白い」生き方の基本だ、と思う。
『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用
日常生活でさまざまな制約が多くなったここ2年。「つまらない」と嘆く前に、まずは隅々まで見渡してみる。その過程で、自分なりの面白さや指向性がうっすらと見えてくるかもしれない。
あなたの設計図は、あなたにしか見えない。他者を巻き込まないで、自分一人で、その設計図を実現するために作業を始めよう。「面白さ」とは、そういうものだ、と僕は思う。
『面白いとは何か? 面白く生きるには?』より引用
筆者の中では、おぼろげながらもすでにいくつか「面白さ」が形を取り始めています。
【書籍紹介】
面白いとは何か? 面白く生きるには?
著者:森博嗣
刊行:ワニブックス
人気作家が「面白さ」のメカニズムを考察。仕事で面白いアイディアが必要な人、人生を面白くしたいすべての人に役立つヒント。