今日食べたものがどこで育って、どこを経由して、自分の口に入ったかわかりますか? 自給自足をしている人はわかりますが、スーパーやコンビニで販売されている食べ物が辿ってきた道は、はっきりとわからないですよね。
「そんなこと考えたこともない」という人がほとんどだと思いますが、『SDGs時代の食べ方』(井出留美・著/筑摩書房・刊)を読むと、食に関する考え方が変わります。今回はちょっとの心がけで、未来の地球がガラリと変わるかもしれない一冊をご紹介します。
ハンバーガーにどうして大量の水が必要なの?
1つ100円前後で食べられるハンバーガーですが、そのハンバーガーひとつに3000リットルの水が必要だと言われています。3000リットルは、家庭のお風呂の10〜15杯分! どうしてこんなに大量の水が必要なのでしょうか?
1キログラムのお米を栽培するのには、およそ3700リットルの水が必要です。
一方、1キログラムの牛肉を生産するには、この5倍、2万リットル以上もの水が必要なのです。
牛肉を育てるには、水のほかに、大量の飼料(エサ)も必要です。その飼料を栽培するのにもまた、水が必要になるため、このような大量の水が必要になってくるのです。
(『SDGs時代の食べ方』より引用)
生産過程で使われる水の量って、こんなに多いんですね。この水の量を「バーチャルウォーター」と言うのですが、なんと日本は世界一の輸入量なのだとか。
バーチャルウォーターは、環境省のページで計算することができるので、最近の食事をバーチャルウォーターをチェックしてみると、驚くような数字が出てくるかもしれませんよ!
【バーチャルウォーター量自動計算】
https://www.env.go.jp/water/virtual_water/kyouzai.html
日本の食品ロスの半数近くは家庭から出ている
これだけたくさんの水を使って生産しても、「食品ロス」で捨てられてしまうことも……。日本の年間食品ロス量は570万トン! これまたどえらい数量です。
この食品ロス、コンビニや飲食店からのロスが圧倒的に多いと思いがちですが、令和元年度の農林水産省の推計によると、年間570万トンの食品ロスのうち261万トンが家庭由来、309万トンが事業系由来と、家庭からの食品ロスも結構多い。捨てる時には「これくらい、仕方ないやぁ〜」と思ってしまいますが、そのちょっとの積み重ねが261万トンにつながっていると思うと、捨てる前にちょっと考えたくなりますよね。
『SDGs時代の食べ方』によると、野菜の皮をむきすぎるなどの「過剰除去」と、賞味期限が過ぎたものを捨ててしまう「直接廃棄」などが要因になっているそう。どうしたら、家庭内での食品ロスを防ぐことができるのでしょうか?
家庭の食品ロスは、「買い過ぎない」、「まず家にある食品をチェック」、「買い物リストを作って、ないものだけ買う」、「食材の切り方や保存方法を工夫する」などで少なくすることができるのです。
(『SDGs時代の食べ方』より引用)
当たり前のことではありますが、少しずつ意識を変えて、家庭からの食品ロスを減らしていきたいですよね。ほかにも『SDGs時代の食べ方』には、食品のごみ処理にいくらの税金が使われているのか、家庭の生ごみの内訳など知っていると食生活が変わるようなトピックスが満載です。
10代に向けたシリーズ『ちくまQブックス』
この『SDGs時代の食べ方』は、10代のノンフィクション読書を応援します! をコンセプトにした、ちくまQブックスの中のひとつ。2021年9月からこれまでに10冊の書籍が出ており、2022年6月には第2弾が始まる予定なのだとか。
10代向けなので、文章にはルビがふられページ数も127ページで「最近本を読んでいないな〜」という人でも気軽に読めるようなシリーズです。巻末には、次に読んでほしい本が、著者の推薦コメントとともに掲載されているので、数珠繋ぎ的に読んでいく面白さも体験できます。
小説以外の本を読んでみたい10代の学生も、読書が苦手な大人も、毎日のように本を読んでいる人も楽しめること間違いなし! 読書術や、身体論、勉強法まで幅広いジャンルが刊行されているので、興味のある分野から読んでみるのがおすすめです。
【書籍紹介】
SDGs時代の食べ方
著者:井出留美
刊行:筑摩書房
世界にはまともにご飯を食べられない人が大勢いる。なのに日本では今この瞬間にもまだまだ食べられる食べものが捨てられている。その量は国連が飢餓の国に行っている食料支援のなんと1.4倍。これっておかしくない? SDGs時代にふさわしい食べ方で社会を変えよう!