スキャンダルを起こしたり失言をしてしまった芸能人が、SNSで炎上することがあります。このようなことはなぜ起きるのでしょう。そして炎上を防ぐ方法はあるのでしょうか。
誰だってミスをする
実はこの記事を書いている筆者自身もSNSで漢字を間違えるミスをしたことがあります。「間違ってますよ」と指摘いただくのはとてもありがたいし、もちろんすぐに「失礼しました」と修正もします。けれど、時には「作家のくせに正しい日本語も使えないのか」などと心ない言葉を投げてくる人もいます。
作家は正しい日本語を使うものだというイメージがあるのかもしれません。けれど作家や国語教師も、ロボットのように完璧な存在ではありません。人間なので時にはミスもします。けれどそのミスを許せず、非難する人がいるのです。
許すことができない人
たとえば、赤ちゃんの散歩の時に左右違う靴下をはかせて出かけてしまったなどというささいなミスを、「あの有名人、あんな育てかたをして子どもがかわいそう」などと書き立てられることがあります。
子どもを育てた人なら誰でもそうだと思いますが、経験のないはじめての子育ては手探りで、時には間違えることもあります。失敗したら親として落ち込むでしょう。それを励ますどころか、いつまでも何度も責めてしまう人がいるのは、なぜなのでしょうか。
批判が拡散する恐怖
『まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』(サイドランチ・シナリオ、川井いね子・作画/アスコム・刊)は、中野信子さんの同名著書(アスコム・刊)を、ストーリーコミックとして再構築したものです。
この本には、企業のSNS担当となった女性が、自らの書き込みによってアカウントを炎上させてしまう様子が描かれています。次々と浴びせられる非難の言葉やどんどん拡散されていく様子は、読んでいるこちらもつらくなってしまうほど。
ひとたび炎上すると、言い訳を書き込んでもそれをさらに揚げ足取りのように批判されてしまうこともあり、鎮火が難しい状態になることも。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという言葉もあるように、一度腹を立てるとその人のすべてを嫌いになってしまい、なかなか許すことができない人もいるようです。
SNSと炎上
中野さんによると、こうした炎上現象が起きる一因にはSNSがあるとのこと。今まで意見を公の場で発表する機会が乏しかった一般の人間が、スキャンダルを起こした有名人のSNSに厳しい批判や非難を書くこともできるようになったからなのです。
批判することがクセになり、攻撃対象を探し求め、常に誰かを叩きたがる人がいますが、これについては彼女は「正義中毒」と表現しています。誰かを叩くことが快感となり、依存のような状態になってしてしまうのだとしたらおそろしいことです。
本書には「一度も会ったことがない、会う可能性すらない赤の他人からもなじられてしまうようになりました」とありますが、まさにそういう状況がSNSでは発生しています。しかも、一部のSNSでは匿名投稿が可能で自分の正体を隠して相手を攻撃できてしまうため、きつい言葉も平気で書けるのかもしれません。
相手の立場を思いやる
最近は悪意ある書き込みが訴えられることも増え、多少は沈静化してきたかのように見える辛辣な書き込み。でも、事件やスキャンダルが発生するとその人のSNSへのコメントが増るように感じます。歯に衣着せぬ投稿では相手を傷つけてしまいかねません。
投稿の前に一度手を止め、向こうにもいろいろ事情があるのだろうと思いやる気持ちを持てば、言葉は柔らかくなり、炎上もかなり減るのではないでしょうか。ミスをした人を責めるのではなく「自分も間違えることはある」と考えれば、必要以上に責めなくなるでしょう。ほんの少しの配慮で、SNSはさらに気持ちよく使えるサービスになるはずなのです。
【書籍紹介】
まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?
著者:中野信子(監修)、サイドランチ・シナリオ、川井いね子・作画
発行:アスコム
SNSいじめ、炎上、ハラスメント、誹謗中傷ー他人を許せない人の脳で起きていること。誰かを「傷つける」「傷つけられる」を断ち切るために、怒りや憎しみの感情を手放すヒントを脳科学から学ぶ。