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2022/3/6 6:00

日本料理はドラマだ! 世界をうならせる気鋭の料理人が語る日本料理の神髄~注目の新書紹介~

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。若い頃はステーキ! フレンチ! イタリアン! と横文字ご飯に飛び付いていましたが、最近は日本料理が心にも体にもしみてきます。ランチ時、静かなお庭を見ながら、つややかな料理の数々をゆっくり食べていると本当に時間が止まった気分。上質な映画を一本見終わった後の感覚と似ています。

 

では、“日本料理”とは一体何なのでしょうか? ほかの料理とどこが違うのでしょうか? 食べる側からではなく、作る側の視点から日本料理の秘密と神髄に迫るのが今回の新書です。

 

三つ星料理人が語る日本料理の精神

日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか』(奥田 透・著/ポプラ新書)の著者、奥田 透さんはミシュランガイド東京版で三つ星を獲得した「銀座小十」の店主。

 

2013年にパリ、2017年にはニューヨークに店をオープンするなど、日本を代表する気鋭の料理人として知られています。また、『日本料理 銀座小十』(世界文化社)、『世界でいちばん小さな三つ星料理店』(ポプラ社)など著書も多く、日本料理の魅力をわかりやすく伝えています。

 

日本料理の基本は「切る」にあり!

第1章「日本料理の神髄とは何か」では、日本料理の本質が見えてきます。私が日本料理と聞いて思うのは「盛りつけが綺麗で、淡い味つけ」……というぼんやりとした印象ですが、奥田さんによれば、日本料理の大きな特徴は極端に油を使わないこと。だしの旨みを中心としているため、余計な油を必要とせず、身体への負担が少ない料理だとか。そのため、料理人は味をみるために全神経を舌に集中させなければなりません。

 

そして、西洋料理と比べてはっきりと「メインディッシュ」の概念がないことも特徴。「付き出しに始まって、10品ほどの料理をつないでいくのが日本料理」と奥田さん。その流れを考えることはある意味シナリオ作りと一緒で、ドラマのように意図があって組み立てられている、と表現しています。

 

私も小説を書評する際には物語の構造に注目するので、日本料理との共通点が見いだせてうれしくなりました。一品一品の料理で山あり谷ありの世界を作る、それがプロの料理人の意識なんですね。

 

第2章「『調理法』から見る日本料理」にも発見がありました。奥田さんいわく、日本料理の基本はなんといっても「切る」。割烹料理の語源となった「割主烹従(かっしゅほうじゅう)」は、「割」が切る、「烹」が煮るを指し、切ることが主で煮ることが従、という意味だそうです。

 

雑に切ると味が抜けてしまうため、素材に合った包丁できちんと切らないと口のなかで味が膨らまない。奥田さんは、「和包丁の世界は、やはり武士、侍が持っていた刀から来ているような気がします」と言います。

 

ほかにも、炭火で1時間かけてじっくりと焼き上げる究極の鮎の塩焼き、香りを出しつつ丁寧に中の松茸エキスを残す焼き松茸、ニューヨークでも知れ渡っている豊洲市場ブランド……など食欲と知識欲を刺激するトピックスが並んでいます。

 

平易ながらも奥深い言葉で語られ、日本料理の精神を多くの人に知ってもらいたいという情熱も伝わってきます。料理というカテゴリを超えて、仕事への真摯な向き合い方はビジネスの参考にもなりそう。ちょっと贅沢な日本料理を食べる前にぜひ読んでおきたい一冊です。

 

【書籍紹介】

日本料理は、なぜ世界から絶賛されるのか

著者:奥田透
発行:ポプラ社

ミシュランを圧倒する世界一美食の国・日本。素材・調理法・精神性…日本料理の神髄を一冊に!世界で活躍する料理人が、日本料理の魅力を問う!

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

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