本・書籍
自己啓発
2022/9/16 21:30

わからない未来を不安がらない。人生を“快適化”する『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』

過去にやらかしてしまったことを思い出し、「ぎゃっ」と、叫び出したくなることはありませんか? 私はあります。しょっちゅうあります。ここのところは「しょっちゅう」ではすまず、毎晩、布団に入ると、「あぁ、どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」とか「もっと丁寧に接するべきだったのに、何をしていたのやら」と、くり返し自分を責めてしまいます。今さら後悔しても仕方がないとよくわかっていながら、考えないではいられないのです。当然、よく眠れません。

 

「大丈夫だよ」と、心に手を添えてくれる

そんな私にとって、『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』(枡野俊明・著/三笠書房・刊)は、「大丈夫だよ。そんなに苦しまなくていいんだよ」と、慰めてくれる優しい友達のような存在です。

 

著者の枡野俊明(ますの・しゅんみょう)は、曹洞宗徳雄山健功寺の住職をつとめている方です。大本山の總持寺で修行した禅僧ですが、もう一つの顔も持っています。著者は庭園デザイナーとしても有名なのです。芸術選奨文部大臣新人賞を庭園デザイナーとして初受賞し、その後も、ドイツ連邦共和国功労勲章功労十字小綬章等など、数々の賞を受賞しています。まさに「二つの顔を持つ男」と呼びたくなりますが、彼にとって、禅僧であることと庭園デザイナーであることは、ぴったりと一致しているのでしょう。二つの顔を持つというより、どちらも彼そのものだと言ったほうが正しいかもしれません。彼がデザインした庭を観ていると、『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』を読んだときのように、「大丈夫だよ」と、そっと背中に手をあててもらったような気持ちになるからです。

 

「放下着(ほうげじゃく)」という禅の語があります。一切の執着を捨て去ることを意味するのだそうです。日常生活の中でも、これに倣い「放っておく力」を発揮すれば、過去の後悔をいつまでも引きずったり、自分で自分を苦しめることから解放されるといいます。

 

そうは言っても、この世には、自分ではどうすることもできないことが、たくさんあります。放っておいていいものかの判断も難しいところです。それに、そもそも放っておきたくても放っておけないから悩んでいるのです。私は心配性で、お節介なところがあります。そんな私を「親切なヒト」として頼ってくれる友人もいます。それをうれしいと思いながらも、私がしてあげられることなどたかが知れています。だから、時々、「どうして私はこう駄目なんだろう」と、落ち込むのです。

 

ところが、著者は、数多くの事例を挙げ、どうしたら自分を解き放つことができるのか、教えてくれます。その数、なんと99。詳しい目次がありますから、自分の悩みに近いものを選んで、電子書籍ならタップして、該当する部分から読んでいきましょう。

 

私たちがかかえる問題

『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』の中で、私がとくに印象深いと感じたいくつかの事例を紹介してみましょう。

 

スマホ時代に入ってこの方、人が孤独に弱くなっているように思えてなりません。(中略)それは非常にもったいないことです。なぜなら「孤独に過ごす」のは、大事な時間だからです

(『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』より抜粋)

 

確かに、一日中、一人でいても、私たちはSNSで数多くの人たちとつながっていますから、真の意味で孤独な時間を過ごしているかというと、はなはだ疑問です。私は寂しがり屋なので、SNSでのつながりを有り難いと思って来ました。けれども、ただ自分の寂しさを紛らわそうと、メールを打ったり、電話をかけたりするのは、相手に失礼だと気づきました。その行為は、相手の大事な時間を邪魔することにほかならないからです。時には、スマホを切り、スマホがなかったころの孤独な時間を思い出すことも必要でしょう。

 

何が起こるかわからない未来のことを、いま不安に思ってもしょうがない。現実に問題が起こったときに必死になるしかないのです

(『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』より抜粋)

 

うむむ、確かにと、唸ってしまいます。私は未来を考えては、「何かよくないことが起こったらどうしよう。いつもそれに備えておかなくちゃ。手遅れになったら大変だ」と、いらぬ心配をしてしまうところがあります。確かに、未来は不安に満ちています。けれども、それに完全に備えることはできません。思い通りになる未来など、ほとんどないからです。未来はすべて想定外のことばかり。何かが起きたら、その時、全力で考えるしかありません。それよりも、今を生きることに集中すべきだと『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』によって、学びました。

 

「あ、そうか。事が起きてから考えればいいのね」。そう思った瞬間、私は自分の心が軽くなるのを感じました。さらには、「期待してたのにがっかりだな」と捨て台詞を残して電話を切られても、前のように心が張り裂けんばかりに「申し訳ない」と思わなくなりました。がっかりさせたのは悪いかもしれないけれど、「私の実力はこんなもの、ご期待にこたえられずすみません」と、素直に頭を下げるしかありません。自分で自分を追いつめたところで、何の解決にもなりません。

 

他にも、「素の自分を失う前に「いい人」の仮面を外す」、「もし、人と比べるなら昨日の自分と比べよう」、「後悔をやめて検証する」等々、胸に沁みる教えが並んでいます。もし、あなたが人間関係に悩んで落ち込んでいたり、そんなことも知らないのかと馬鹿にされて傷ついたり、毎日に疲れを感じて一歩も進めなくなっていたりしたら、『仕事も人間関係もうまくく放っておく力』を手にとってみてください。あなたの目の前に、静かな、しかし、エネルギーあふれる庭の光景が浮かんでくることでしょう。そこに広がる空間が、あなたを救い、生き返らせてくれるに違いありません。

 

疲れた時、一服の茶を振る舞われると、心底、ほっとします。『仕事も人間関係もうまくいく放っておく力』は、それと同様の安堵感を与えてくれます。もちろん、毎日はいろいろ面倒なことの連続です。それでも、「なんとかなるさ」と、小さく呟き、今を生きていくしかないと思えるようになりました。

 

 

【書籍紹介】

仕事も人間関係もうまくいく放っておく力

著者:枡野俊明
発行:三笠書房

いちいち、気にしない、反応しない、関わらない。人生を“快適化”するヒント。

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