すっかり春の陽気になり、街に賑わいが戻ってきた今日この頃。「そろそろ旅行に行きたいな」と考えている人も多いのではないでしょうか? コロナ禍でも旅行支援や割引などで旅行を楽しめていましたが、どこか遠慮していた人も多かったはず。
今回は2011年に初版が発売された『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』(益田ミリ・著/幻冬舎文庫・刊)をご紹介。12年前の本で、実際に益田さんが旅をしていたのも2002年〜2006年のことですが、どの時代でも変わらない旅のソワソワ・ワクワク感を思い出させてくれる一冊でした。
4年かけて、47都道府県を好きな順に巡る旅
日本には47の都道府県がありますが、いくつ行ったことがありますか? 私は、通り過ぎただけの都道府県を除いて、目的を持って観光や宿泊に行った都道府県は29ほどでした。意外と行っていない! この『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』は、ウェブ連載をまとめた書籍なのですが、益田さんのエッセイとともに当時の交通費と宿泊費、旅行で使ったお金などがざっくりとまとめられており、なんとなくこんな金額で楽しめるのね〜とイメージしやすくなっていました。また、冒頭にはこんなことも書かれてあります。
青森に行ったついでに秋田にも、なんてことはしないで、
毎月毎月、東京からフラッと行くことにしよう。
月に一度の旅で、47都道府県をまわると4年かかるが、
別に急ぐこともない。
何かを学ぶ、などにはこだわらない「だた行ってみるだけ」の旅。
(『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』より引用)
フラッとどこかへ行くって、コロナ禍でできなかったことのひとつではないでしょうか。ここ2〜3年で、旅行は特別なもの! という印象がついてしまいましたが、そもそも旅行ってこんな感じだったわぁ〜、求めている感じはこれよ! と読みながら感じてしまいました。
ちなみに47都道府県制覇にかかった費用は、約220万円だったそう。金額だけ聞くと驚きますが、自分のタイミングで長い期間かけて楽しむ旅行なら「ちょっとやってみようかな?」と思える価格ですよね。もちろん贅沢な趣味ではありますが、本を読んだ後には、いいかも。と思ってしまった私もいます(笑)。
旅行にはつきもの? 名物の呪縛
『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』は、旅の達人でも、一人旅のエキスパートでもない益田さんが、楽しみながら、戸惑いながら、ときには「飽きたなぁ」と思いながら(笑)、旅をする素直な様子が綴られています。その中でも特に印象的だったのが、2003年8か所目に行った石川県での文章でした。
ああ、いつになったらわたしは「名物」の呪縛から解放されるのだろうか。たいして好きでもないものを「名物」というだけで食べるのはやめよう。そう誓ったはずなのに、まだ「旅なんだから、食べないといけない」ような気持ちから逃れられない。
(『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』より引用)
益田さんは魚貝類が苦手なのですが「海鮮丼」が名物と聞いて、つい有名なお店に入って「海鮮丼」を注文してしまったそう。結局、食べ切ることができず、ハンカチに包んでカバンに隠してしまったのだとか。旅先での失敗や後悔って、絶対ありますよね。楽しいだけじゃない旅の醍醐味も教えてもらったように思います。旅先だから、名物だからマジックにかからないよう(笑)、次の旅では気をつけたいと思いました。
住んでいる街も旅行先になる?
益田さんが『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』で47都道府県目の旅行先に選んだのは、自分が住んでいる街「東京都」でした。どうやってひとり旅をするんだろう? と読み始めると、東京大学の学食でご飯を食べて、国会議事堂に行って、帝国ホテルでパンケーキを食べるという満喫旅でした。しかも移動はすべてタクシーで、宿泊はしなくても旅費は1.6万円ほど。都内でもフラッと観光気分って味わえるんですよね。
旅行と聞くとついつい遠くへ出かけよう、名物を食べよう、名所へ行こうと思いますが、身近なところでも旅行気分は味わえると、改めて感じられました。気温も上がり、好きなところへ好きなタイミングで堂々と行けるようになった今、あなたならどこへ行きたいですか? 旅の楽しさだけでなく、切なさや後悔なんかも感じさせてくれる『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』を読んで、次の旅行先を考えてみましょう! 時代とともに情報や名所は変わっても、街の変わらぬ魅力がつまった一冊です。きっと行きたい街が見つかりますよ。
【書籍紹介】
47都道府県 女ひとりで行ってみよう
著者:益田ミリ
発行:幻冬舎
日本には47都道府県もあるのに、行ったことがない場所があるというのはもったいないなぁ。というわけで、全部行ってみることにした。33歳の終わりから37歳まで、毎月東京からフラッとひとり旅。名物料理を無理して食べるでもなく、観光スポットを制覇するでもなく。その時の自分にちょうどよいペースで、「ただ行ってみるだけ」の旅の記録。