本・書籍
2023/8/27 18:00

応援のその先へ!ラグビー観戦の質を高める入門書。フランスW杯の楽しみ方を元日本代表主将が伝授~注目の新書紹介~

こんにちは。書評家の卯月鮎です。9月8日に「ラグビーワールドカップ2023フランス大会」が開幕します。日本は1次リーグD組でチリ、イングランド、サモア、アルゼンチンと対戦。日本開催となった2019年の前回大会では初のベスト8入りを果たしましたが、今回はどうなるでしょう?

 

私は超のつくインドア派でスポーツをすることを避けてきた人間ですが(笑)、未経験者でも観戦して楽しめるのがスポーツの凄さ。プレイヤー同士の駆け引きとその背景にあるドラマには、勝敗を超えて引き込まれます。その競技をどれだけ深く理解しているかで見える景色が変わってくるというのも、多くの人がスポーツ観戦に夢中になる理由のひとつでしょう。

元日本代表主将が教えるラグビーの楽しみ方

今回紹介する新書はラグビー質的観戦入門』(廣瀬俊朗・著/角川新書)。著者の廣瀬俊朗さんは元ラグビー日本代表主将(2012~2013年)。2015年W杯では日本代表史上初の同一大会3勝に貢献。現在はラグビー日本代表応援サポーター2023を務めています。著書に『ラグビー知的観戦のすすめ』(角川新書)、『相談される力 誰もに居場所をつくる55の考え』(光文社)があります。

タックルは倒れ方で展開が決まる!?

直前に迫った2023年W杯をより一層楽しむためのガイドブックとなっている本書。ラグビーのわかりやすいルール説明はもちろん、選手目線で何を考え、どう判断してゲームを進めているか、表面には現れない部分まで丁寧に掘り下げているのがポイントです。

 

第1章「「意味」がわかればラグビー観戦の「質」が高まる!」では、試合の流れに沿って、各プレイがどのような意味を持つのか例を挙げつつ解説されていきます。

 

単純にボールを蹴っているように見えるキックオフですが、実はたくさんの意図や戦略が秘められていると廣瀬さん。キックオフを蹴る側は、再獲得する方法や意図をしっかり考え、何通りも想定して準備を重ねている。逆にレシーブ側は、ボールを確保して自分たちが準備したアタックにつなげたい……。

 

つまみとお酒を用意しているうちに試合が始まっているなんてよくあることですが(笑)、キックオフは双方の意思がまっさらな状態で最初にぶつかり合う大事な場面なのですね。

 

タックルで倒された際も、その倒れ方に注目。敵に背中を向けて、味方にボールが見えるように倒れればサポートする選手も次のプレイがスムーズに行なえます。一方、相手にボールを見せたり、仰向けに倒れたりするとジャッカル(ディフェンス側がボールをもぎ取るように襲いかかること)されるリスクが高まるとのこと。こうした積み重ねが大きな差になるのですね。

 

「キックオフの瞬間に注目してほしいのがウイングのタックル」「スクラムの攻防では、スクラムハーフが放りやすい形でボールが出てくるかがポイント」「80分間を6分割して見ると、試合の流れが読める」など、具体的なアドバイスが示され、達人が隣で丁寧に観戦のコツを教えてくれているかのよう。ラグビー初心者でも、ひとつひとつのプレイの意図が飲み込みやすくなっています。

 

第3章以降は、日本代表の戦術や各国代表のカラー、実際に試合が開催されるフランスの都市の紹介など、今回のW杯の見どころが詰まっています。

 

ラグビーは15人という特に多人数で行うスポーツ。それだけに「チームの文化が勝敗を分ける」「チームとして掲げる大義が大切」と廣瀬さん。これは一般的な組織論にも通じるところがあり、ビジネスのヒントにもなりそう。

 

2023年W杯、日本を応援するだけでなく、世界最高峰のプレイをじっくり観戦してみたいと思います。

 

【書籍紹介】

ラグビー質的観戦入門

著:廣瀬俊朗
発行:KADOKAWA

元日本代表主将が、ゲームの意味を理解する「コツ」を完全解説。一つひとつのプレーの「意味」を考えれば、ラグビー観戦がもっと面白くなる! 元日本代表主将がゲームの要点を一挙に紹介。「キックオフ後の一連のプレーは戦い方の意思表示」「80 分間を6分割して状況を分析」「ポジション別、選手の担うマルチタスク」ほか。ラグビー理解のレベルが各段にアップする、永久保存版入門書!

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