大地震や台風に水害…。今の日本に「災害が起きない安全な場所」は、残念ながら存在しないのではないでしょうか? 突然の災害によって普段の生活が奪われ、明日から避難所生活になるという可能性は誰にでもあります。そんな非常事態に見舞われた際、私たち大人以上に大きな不安や恐怖を感じるのが子どもたち。もしもの時に慌てないためにも、災害時に子どもが発するストレスのサインや、そのケア方法についてシミュレーションしておきませんか?
災害直後の子どもの様子
『災害ストレスから子どもの心を守る本』(内海裕美・著/河出書房新社・刊)によると災害直後の子どもたちは、ショック状態に陥っているのだそう。なので、いつもと違って落ち着きがない、物音に過敏に反応する、災害が起きた時間になると気分が悪くなるなど、精神状態の不安定さから色々な異変が起こりがちに…。
しかし、中にはこうした様子を見せず、一見落ち着いてみえる“ぼーっとした状態”の子もいます。こうした感情や感覚がまひしたように、ぼーっとする状態は「解離症状」といい被災体験と自分を切り離してしまう症状なのだそう。こうした状態の子をみて「落ち着いているし特に心配ない」と大人は思うかもしれませんが、子ども自身は何をどうしてよいのか分からない茫然自失の状態。
特に体調の異変がない子でも、話しかけてもぼーっとしている場合は、心に傷を負っている可能性が充分にあることを心得ておきましょう。
災害直後の子どもの心を落ち着かせる3つのこと
大人も子どもも災害直後は非日常の生活を強いられます。この「いつもとちがう」という状態が、子どもにとっては大きなストレスとして降りかかるのです。なので、子どもの心を落ち着かせる・安心させるためには「日常生活」を取り戻すことが第一。
具体的には
①毎朝、決まった時刻に起きる
②三食きちんと食べる
③プライベートな空間を確保する
この3つが重要なのだそう。①と②は停電や物資不足などで思うようにいかないかもしれませんが、生活リズムを取り戻すうえで大切。特に寝つきが悪いと、ついダラダラ寝かせてしまいがちですが、寝不足でも決まった時間に起きれば夜もキチンと眠れるようになることが多いようです。
そして、③ですが、避難所では多くの人と共同生活を送らなければならず、プライベートな空間を持つのはとても難しいと思います。しかし、そういった場合でも下記のような過ごし方を取り入れて、子どものストレスを軽減させてあげましょう。
一日に少しの時間でもよいので、家族やお友だちだけで過ごせる場所を確保し、心の緊張を解いてあげましょう。室内に限らず、近くの公園に行ったり、ちょっと散歩に出かけるだけでもだいぶ違います。
(『災害ストレスから子どもの心を守る本』から引用)
この他にも災害直後に子どものショックのもととなる刺激を与えない、大声でしからないなど、災害直後から数ヶ月たった頃など時期に合わせた細やかな対処法が掲載されています。いざという時に心身ともに子どもを守れるよう、備えておきたい一冊です。
(文:凧家キクエ)
【参考文献】
災害ストレスから子どもの心を守る本
著者:内海裕美
出版社:河出書房新社
災害に遭ったり衝撃的な映像に触れることで、子どもの心は大きな影響を受けます。本書は周囲の大人がすぐに異変に気づけるよう、子どもが発するサインとその対処法を年齢別にやさしく解説。
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