我が家の子どもたちは、長男が中学生、長女と次女が小学生。今年で通算8回目の「小学生&中学生の保護者」をやっているわけだが、この8年間で子どもたちを取り巻く環境は大きく様変わりした。
一人一台デバイスを保有し、宿題などのクラス連絡はTeamsで。個人で考えて発表する授業形態から、ひとつの議題に対して周りと話し合い、意見を出し合い、考えをまとめる形態に。運動会の組体操は廃止され、かけっこもリレーも順位を競わない。
コロナを経たことも大きいが、数年前には想像もできなかった学校生活を令和の子どもたちは送っている。昭和や平成生まれの親たちは、ただただ驚くばかりだ。
自分で考えて、思うように行動できない子どもたち。その原因は大人にある!?
まさしく激動の時代を生きている子どもたちだが、我が子を含め、いまひとつ自分で物事を決められないことが多いと感じる。誰かに指示されたことを成し遂げるのは得意。けれども、自分がどうしたいかを考え、そのゴールに向かって進んでいくために行動することが苦手なのだ。
つまり、「主体性がない」子どもが増えてきたということだろう。事実、多くの教育専門家がこの現状を憂い、口をそろえて「これからの時代は、主体性を伸ばすことが大切」だと論じている。
そうは言っても、親として子どもの主体性をどう伸ばしていけばいいのだろうか。正直、大人だって言いたいことも言えないこんな世の中で。
その答えのヒントをくれるのが、宿題や中間期末テスト、クラス担任制など、これまでの当たり前を次々と廃止したことでその名を知らしめた工藤勇一先生だ。最新著『
』 (Gakken・刊) では、こう述べている。
主体性とは自発的な意思に基づき動くこと。それは誰でも生まれつき持っているものです。
しかし、成長していく中で周囲の大人に行動を制限されたり、命令されたりするたびに少しずつ主体性が奪われていきます。『家庭 学校 社会みんなに知ってほしい・教育について工藤勇一先生に聞いてみた』より
何と言うことだろう。子どもたちの主体性を奪っていた張本人が、我々大人だったとは。でも諦めないでほしい。子どもの主体性を取り戻す方法として効果抜群の、工藤先生流3つの問いかけがある。
子どもの主体性を取り戻す問いかけ①「どうしたの?」
私たち大人は、自分の言うことを聞くように子どもたちを叱りがち。けれど、高圧的な指導をすればするほど、その大人に対する不信感は増すばかりだ。そこで、子どもへの第一声を「どうしたの?」に変えてみることだと工藤先生。
まずは、行動の背景にある事情を聞き出すこと。そして、子どもがとった行動を一度受け止めることが、主体性を取り戻すために大切な心理的安全性に繋がる。
子どもの主体性を取り戻す問いかけ②「どうしたい?」
「どうしたの?」と尋ねたあとは、子ども自身の考えや思いを引き出すために、「どうしたい?」と問いかけることだと工藤先生。
これまで「~しなさい」と指示され、主体性を奪われ続けてきた子どもたちにとっては、うまく答えられないかもしれない。けれども、小さな自己決定を続けていけば、次第に大きな自己決定もできるようになると言う。
ひとつ注意すべきは、「どうしたい?」と聞いたからと言って、子どもの言いなりになる必要はないということ。できる限り子どもの意思を尊重しつつ、こちら側の考えも伝えて、お互いにとって一番良い方法を見つけていくことが大切。
子どもの主体性を取り戻す問いかけ③「何かできることはある?」
「どうしたい?」と聞いても自己決定ができない場合は、「何かできることはある?」とフォローすることが有効だと工藤先生。場合によっては、いくつかの選択肢を提案してもOK。
この問いかけによって、子どもはやりたいことを自分で決めて行動できるようになる。たとえ、こちらが提案した選択肢の中から選び取ったとしても、自己決定したことには変わりがない。そんな「自分で決められた」という事実が、成功体験として子どもの心に強く刻まれるのだ。
主体性を取り戻すのに「遅すぎる」ことはない
工藤先生が教える3つの問いかけを繰り返していけば、少し時間がかかるかもしれないけれど、子どもの主体性は必ず取り戻せるのだと言うから心強い。
我が子のこととなると、つい過干渉になってあれこれ口を出してしまいがち。けれども、これからはお節介心をぐっとこらえて、子どもが本来持つ「自分で考え、行動する力」を伸ばしていこうと思う。
大丈夫、子どもも親も、きっと変われる。そんな工藤先生の声が聞こえてきた気がした。
【書籍紹介】
監修:工藤勇一
発行:Gakken
目まぐるしく社会が変容している現在、教育観は大きくアップデートしていく必要があります。家庭・学校・社会のみなさんが持つ教育の悩みの数々を、常識を覆して日本の教育を牽引してきた、工藤勇一先生がイラストでわかりやすく解説します。