新型コロナウイルス感染拡大からそろそろ8か月。以降、「働き方」は随分と変わり、デスクワークが主体だった大半の人は、「リモートワーク」を経験することになりました。当初マスコミでは、コロナ禍での働き方として主に「テレワーク」の呼称を使っていましたが、徐々に「リモートワーク」という呼称も使われるようになりました。あくまでも筆者の感覚ですが、「テレワーク」と聞くと、今ではやや前時代的で、お役所的な響きにも感じます。
しかし、この「テレワーク」と「リモートワーク」の違い、正しく解説できる人ってどれだけいるのでしょうか? そして、今後もさらに普及されるであろう「リモートワーク」の正確な意味や合理性について、きちんと語れる人はどれだけいるのでしょうか?
そんな中、今年9月、リモートワークに必要な知識を身につけるための検定試験が誕生しました。その名もズバリ「リモート実務検定」。意外と知らないことを学べるこの検定試験の内容、覗いてみたいと思います。
リモートワークに不慣れな人のための検定
リモート実務検定は、コロナ禍での「働き方」の変化を受けて、今後さらに広まるであろう「リモート社会」に向け、主に、就職活動をする人、デスクワークに不慣れな人、転職を目指す人、社内で昇格を目指す人のために設立された検定試験。民間資格ではあるものの、取っておいても損はなく、仮にリモートワークに慣れている人であっても、意外な発見や、より合理的なリモートワークでの取り組みを知ることができそうです。
運営は、この検定試験をするために設立されたリモート実務検定協会で、検定試験第1回として年内いっぱい「第1回リモート実務検定3級」をオンライン上で毎日受験可能。会場は、全国にあるCBTテストセンターで、もちろん、受験申し込み~合格証などの発行もオンライン上で全て行います。受験費用は7000円(税別)。受験には公的な証明書(顔写真付き1点、または顔写真なしの場合は2点)が必要ですが、学歴・年齢・性別・国籍の制限はありません。
「リモート実務検定」試験の内容は?
気になる検定試験の内容ですが、制限時間は60分で、全50問の4択式のようです。現在実施されているリモート実務検定3級の合格基準点は50点満点中、35点以上。45点以上を得た人は、さらに「スペシャリスト」の称号ももらえるようです。検定結果は、試験当日の検定終了後に表示されるそうです。なんだか運転免許試験の合否を待つような感じにも似て、結果が出るまでは緊張しそうですね。
また、合格者にのみ「リモート実務検定合格者(またはリモート実務検定スペシャリスト合格者)」としての登録が可能となります。登録料は3000円(税別)で合格証をもらうことができます。
気になる「リモート実務検定3級」の例題とは?
気になる「リモート実務検定3級」の例題も覗いてみました。その内容は、社会人なら誰でも分かる簡単なものから、リモートワークに慣れた人やネットツールの扱いに長けた人でないと全く分からないものまで様々。ここではその例題を覗いてみます。
【リモート実務検定3級・例題】
■第1問 ITツールやインターネットを使ってオフィス以外の場所で仕事をする働き方は次のうちどれか。
A・リモート飲み会
B・リモートコントローラー
C・リモート出演
D・リモートワーク
■第2問 専用の回線を使うため安定した接続環境で大人数の会議ができるコミュニケーションツールとして最も正しいものは次のうちどれか。
A・ビジネスチャットツール
B・Web会議システム
C・ナレッジ共有ツール
D・テレビ会議システム
■第3問 リモートワークにおける時間外労働に当てはまる(=割増賃金の支払が必要である)ものを全て選べ。
A・法定休日に労働を行わせる場合
B・実労働時間が法定労働時間を超える場合
C・みなされた労働時間が法定労働時間を超える場合
D・深夜に労働した場合
■第4問 東京都と国がテレワークの普及を推進することにより企業における優秀な人材の確保や生産性の向上を支援するために設置したワンストップセンターは次のうちどれか。
A・東京テレワーク推進センター
B・ワーケーション自治体協議会
C・テレワーク導入マニュアル
D・信州リゾートテレワーク
【リモート実務検定3級・正解】
■第1問……D・リモートワーク
■第2問……D・テレビ会議システム
■第3問……A・法定休日に労働を行わせる場合/B・実労働時間が法定労働時間を超える場合/C・みなされた労働時間が法定労働時間を超える場合/D・深夜に労働した場合
(※第3問は多答式の設問で、すべて選択が正解)
■第4問……A・東京テレワーク推進センター
これを読んだ方はどれだけ答えられたでしょうか。正解だけを見れば、納得できる解答も多いですが、多答式の設問ですべて選ばないといけないなど、混乱しそうな引っ掛け問題も多く、事前に公式テキストなどできちんと学んでおかないとまず合格点クリアは難しそうです。「リモートワークの経験があるから」と言っておごらず、受験に際しては事前に正しく学び、理解した上で試験に挑むのが賢明です。
「テレワーク」と「リモートワーク」の違いとは?
ところで、冒頭でも触れたテレワークとリモートワークの違いとは果たしてナンなのでしょうか。リモート実務検定協会ではこの素朴な疑問に対しても、分かりやすく漫画で紹介しています。
上の漫画の通り、リモートワークは「remote(遠隔)」と「work(働く)」の2つが合わさってできた呼称で、テレワークはICT(情報通信技術)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を意味し、この2つの定義はほとんど同じ意味のようです。ただし、政府が積極的にテレワークという言葉を使っているのに対し、「チームで働く」という印象が強いリモートワークのほうが一般的には浸透しているようです。ほとんど同じ意味を持つテレワークとリモートワークですが、こういったそれぞれの呼称が持つ背景を理解すれば、他人に対して正しい解説をすることができそうです。
アフターコロナもさらに普及するであろう、リモート社会に役立つ実務検定
最後に、リモート実務検定協会・山崎勝路さんに、協会発足の成り立ちや、検定制度を始めた最たる理由について話を聞きました。
ーーリモート実務検定および協会発足の成り立ちの理由と経緯から聞かせてください。
リモート実務検定協会・山崎勝路さん(以下、山崎) リモート実務検定協会は、昨今の社会情勢の変化を鑑み、これからさらに進むであろうリモート社会に適応する人材づくりに貢献するために発足しました。
また、リモートワークそのものは企業や勤務者はもちろん、社会全体にもメリットがある働き方で、仮に新型コロナウイルスの感染拡大が収束したとしても、今後広く普及していくことは間違いないと考えています。しかし、この「働き方」を実施するには、遵守しなければならない様々な法令や適切な労務管理、執務環境、情報通信システム、セキュリティ対策、メンタルヘルス対策などがあります。
こういったリモートワークに伴う諸問題は、就活生、転職活動者、企業側全てが前もって実務知識を高めておく必要があります。そういうためにも、当協会および検定を発足しました。実務検定を通して、多くの方のスキルアップに役立てていただきたいと考えています。
ーー現在は「リモート実務検定3級」のみ実施されていますが、今後は昇級試験もありますか?
山崎 もちろんあります。「リモート実務検定2級」は近々検定試験を開始する予定で、「リモート実務検定1級」についても現在準備しています。現在の「リモート実務検定3級」は当初、「一般の社会人、学生の方の受験が多いのではないか」と想定していましたが、教育委員会や教育機関、企業の代表の方からの受験および問い合わせも増えています。やはり、リモートワークにまつわる実務や様々な問題は、きちんと学びたい方が多いのだと実感しています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
山崎 これからのリモート社会において、実務を正しく知り、学ぶ必要があります。これからも実務検定を通して多くの方のお役に立つことができれば良いなと考えています。
コロナ禍でのリモートワークの経験で、「リモートのことなら、十分理解しているし語れるぞ!」と思っていた筆者でしたが、この「リモート実務検定」の中身を知り、全然甘いことを思い知りました。就職活動の方、転職志望者の方にとっては、「リモートワークへの理解」を企業に伝える一つの手段としても使える「リモート実務検定」今後さらに注目を浴びるように思いました。
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