ここ数年、アップルとFacebookはプライバシー保護をめぐって対立が続いています。特にiOS 14.5以降にアプリトラッキング透明性(ATT)、つまり「異なるアプリやWebをまたいで追跡するときはユーザーの明示的な同意が必要」とされたことで、Facebookがユーザー行動を追いかけることが難しくなり、ターゲティング広告の収入も大打撃を受けたとみられています。
しかし、かつてアップルがFacebookと協力して、収益を分け合うことを検討していたと報じられています。
米The Wall Street Journalによると、それは2016~2018年にかけてのこと。アップル幹部がFacebookに話を持ちかけ「一緒にビジネスを築き上げたい」と言ってきたそうです。両社が検討したアイデアのひとつは、月額料金を支払うFacebookの広告なしバージョンだったとのこと。
この案ではアップルがApp Storeを通じてアプリと決済システムを提供し、それにより15~30%の手数料を取ろうとしていたとのこと。さらにFacebookアプリのブースト投稿機能(お金を払うことで、より多くの人にFacebookページを宣伝できる機能)はアプリ内購入と見なされ、30%の手数料を取るべきだと主張したそうです。
が、どちらもFacebook側は首をタテに振らず、交渉は物別れに終わったと伝えられています。
この報道を受けてアップルの広報担当は、「毎日、我々はあらゆる規模の開発者と会い、協力し、提案し、懸念に対処し、彼らのビジネスが成長し続ける手助けをしています」とコメント。さらにFacebookのようなアプリ開発者に対するルールも「公平な施行が最高のユーザー体験をもたらすと考えており、すべての開発者に平等に適用されています」とも付け加えています。
漠然とした言い方ではありますが、要するに「Facebook開発者も多く取引先のひとつに過ぎず、特別扱いはしていない」といったところでしょう。
また興味深いのは、アップル広報(上の人とは別)が「提携に関する議論と、後に実施された広告トラッキングの変更との間には、何の関連性もない」と言っていることでしょう。iOS 14.5やiPadOS 14.5以降にアプリトラッキング透明性を導入したのは、Facebookとの交渉が破談に終わったからではない、と示唆しているようです。
ちなみにデータ管理企業Lotameの試算によると、2022年現在までにFacebook、Twitter、Snap、YouTubeはATTのために178億ドルの収益を失っているそうです。もしもFacebookとの交渉が上手くいかなかったことが理由のひとつとすれば、Twitterなどはトバッチリを受けたのかもしれません。
Source:The Wall Street Journal
via:MacRumors