パナソニック エレクトリックワークス社は、工場向け電動工具の新製品・Azelossを発表しました。これは家電などの組み立て工程における、ネジ締め作業で使われるAC100V式電動工具。作業者のスキルによらず、誰でも一定の品質を実現できるよう工夫がされているほか、無線による作業状況の管理に対応しているのが特徴です。
製造業が抱える人材不足・資材高騰への対応策として開発
現代の製造業は、人材不足やエネルギー・資材価格の高騰といった問題に苦しめられています。あらゆるメーカーにとって、人材の確保・育成や生産性向上が急務。さらに、社会がカーボンニュートラル化に向けて動いており、企業は変革を迫られています。
Azelossは、そういった課題を解決するために開発されました。その名の由来は、アッセンブル(Assembly=組み立て)におけるロスをゼロにするという、同社の想いにあります。
女性でも使いやすいデザイン。作業ミスを防ぐ機能を多数搭載
Azelossには、Type A〜Dの4つのモデルがありますが、そのすべてに共通しているのが、グリップ下部に搭載された判定ランプです。設定通りのトルクで正しくネジ締めできた場合、グリーンのランプが灯りますが、ドライバーの空転など異常を検知したときには赤のアラートランプが点灯。視覚的に異常を知らせます。なお、製品には低トルク・低トルク(高速回転)・高トルクの3つの仕様があり、多彩な目的に対応します。
グリップは女性でも使いやすいよう、パナソニックの工場現場で働く社員へのヒアリングも行った末、38mm径に設計。スタート方式はグリップ横のレバーを押すレバー方式と、ネジに本体を押しつけるプッシュ方式から、作業者の好みで選択できます。
Type A〜Cは、締めるべきネジの残り本数を表示してくれる本数カウント機能や、複数台の工具を使って行う複雑な作業をサポートする機能を備えています。高トルクの工具1で4本のネジ締めを行ってから、低トルクの工具2で2本のネジ締めを行うという工程の場合、まず工具1のランプが点灯し、カウンタには4の数字が表示されます。
これで4本のネジ締めを終えると、次は工具2のランプが点灯、カウンタには2が表示され、この工具を使うよう指示します。なお、間違った工具を使おうとした場合、動作せずにアラート出るので、手順ミスは起こりません。
さらに、斜め締めなどによるネジのかじりを防ぐため、最初はゆっくり締め始めて中盤になると加速し、最後にまた速度を落とす、ソフトスタート・ソフト着座の機能をType A〜C共通で搭載しています。また、その3モデルはネジ締めのOK、NG判定に、トルクだけでなく着座までの回転時間も加味して、成否判断を行います。ハイグレードなAとBは、回転時間だけでなく回転回数も測って、ネジの斜め締めや浮きをしっかり検知します。
無線通信による、作業状況の一括管理に対応
Azelossの目玉ともいえるのが、Type AとBに搭載されている無線機能。設定したトルクで正しいネジ締めができたか、工具と接続した受信機を経由して、PCにデータを送信します。プログラミングなどは不要で、CSVでデータを管理できるのも特徴です。また最上位モデルのType Aは、トルク換算値の測定にも対応。工程の状況を見える化することで、NGが多発している箇所を早期発見できるなど、作業効率の向上に貢献します。
なお、Type Cも有線による作業データ出力には対応していますが、PLCなど外部機器を用意する必要があり、そのプログラミングも必要になります。
パナソニックがこれまで世に出してきた工場向け電動工具はすべて充電式で、AC100V式のものには参入していませんでした。しかし製造業が抱える問題を解決したいという想いのもと、参入を決めたといいます。
同社の工場で、Type Aを試験導入しているラインもすでにあるそうです。Azelossは、厳しい社会情勢に苦しむ、製造業者への救いの手になるかもしれません。