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クレカ
2023/8/28 6:00

最大18%還元の三井住友「Olive」そして「Vポイント」はポイント経済圏を制す一手となりうるか

クレジットカードやキャッシュレス決済の疑問・悩みにクレカの鉄人・岩田昭男師範が答える連載企画。前回「共通ポイント」の現状について解説したのに続き、今回はなかでもいま注目の「Olive/Vポイント」を中心に「共通ポイント」「ポイント経済圏」の今後の動向について解説してゆきます。

 

【第8回】SMBCグループの新サービス「Olive」について詳しく知りたい!

【前回記事はコチラ】

【第7回】TポイントにVポイント……移り変わる「共通ポイント」の現状を知りたい!

 

【解説する人】岩田昭男

クレジットカード・キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わるオピニオンリーダー。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。

 

【今月の悩める子羊】宝院 敏樹(ほういん としき)

都内在住の独身会社員(46歳)。前回「共通ポイント」や「ポイント経済圏」の現状について話を聞いたが、その際にも話題に出かかった、いま最も精力的にサービスを展開しているSMBCグループの「Olive」について詳しく知りたいと思い、再度道場を訪ねた。

 

相談者の要望

○前回聞けなかった「Olive」について詳しく解説してほしい。

○「新Vポイント」の課題・懸案点についても知っておきたい。

○「ポイント経済圏」との付き合い方のコツが知りたい。

 

Olive」はすべてを兼ね備えたサービス!

師範 今回は、前回触れられなかった「Olive」について話をしようかの。

 

宝院 三井住友銀行の「Olive」はテレビCMでよく目にします。でもCMだけだと、どんなサービスなのかよくわからなくて。

師範 簡単に説明すると、三井住友銀行のキャッシュカードとクレジットカード、デビットカード、ポイントカードの4機能、さらに保険や証券を同一カード&アプリで一括管理できるサービスじゃ。Oliveのアカウントを開設すると上記の4機能を持つマルチナンバーレスカード「Oliveフレキシブルペイ」が発行される。各機能の切り替えはアプリで行い、支払い方法を店頭で伝えれば、カード決済にもタッチ決済にも対応。

 

もちろんスマホを使ったApple PayやGoogleウォレット払いにも対応しとる。カードにはカード番号や有効期限が印字されず、セキュリティは万全。口座番号を印字するかどうかも自分で選べる。ちなみに、カード番号や口座番号などの情報はアプリで確認することになる。

↑キャッシュカード一体型Visaカード「Olive」。クレジット、デビット、ポイント払い(プリペイド)機能(写真左)と、キャッシュカード(写真右)機能を1枚に集約した両A面デザインを採用している

 

宝院 複数の機能が1枚にまとまるとカードを何枚も持たなくていいし、セキュリティ性が高いのも安心。でも、それだけだと申し込みへの決定打にはなりませんね。

 

師範 その辺も抜かりなしで、Oliveはポイント還元も魅力的。例えば、年会費無料の一般カードの場合、基本ポイント還元率はクレジットモードのほか、デビットモードでも0.5%。ポイント払いモードでも0.25%のVポイントが付与される。さらに、スマホアプリ「Vポイント」やVisaプリペなどへのチャージでも0.25%ポイント還元される。

 

宝院 還元率はそれなりですが、デビット払いやポイント払いでもポイントが貯まるのはおトクですね!

 

師範 驚くのはまだ早い。三井住友カードがコンビニや飲食店で最大18%ポイント還元のキャンペーンを行っとるが、この特典がそのままOliveにも適用される。

 

宝院 最大18%! それならOliveに申し込む気になります!!

師範 ただし「最大18%」の還元を受けるには、三井住友カードの本会員である家族の登録など、諸条件が揃う必要がある。自分がよく使う店舗も対象なのか、また、家族が現在本会員または本会員になる予定があるかなど、事前にしっかり確認しておくことをおすすめしたい。

 

ちなみに、同カード申し込みと同時にSBI証券に口座開設し、同証券での投資信託をクレジットカードで積み立てると、積立額の0.5%のVポイントが毎月貯まる。また同グループの「保険ポータルサイト」もOliveから利用可能で、保険料に応じてVポイントも貯まるぞ。

 

宝院 すべてのポイントをVポイントに集約できれば、ポイント払いなんかも幅広い場面で利用できそうですね。

 

TポイントとVポイントの統合はメリット大だが…

宝院 確かにポイントが貯まりやすくて1枚でキャッシュカードにもクレジットカード、デビットカード、ポイントカードにもなるのは財布のカード入れがスッキリして助かります。個人的には、クレジットカードとデビットカードを使い分けることはないかなと思いますが……。

 

師範 そこはワシも感じておる。「Oliveフレキシブルペイ」は基本はクレジット機能付きで、クレジット機能なしのカードは未成年者かカード審査に落ちた人にのみ発行される。世の中にはクレジットカードを持ちたくない人も一定数おるから、個人的にはクレジット機能なしが選べるほうがベターだと思うがな。

 

宝院 来春にはTポイントとVポイントが統合され、「Oliveフレキシブルペイ」はTポイント加盟店でも使えてポイントが貯まるようになりますね。逆に、TカードもVisa加盟店で使えてポイントが貯まることになり、Tカードユーザーにはものすごい恩恵ですよ!

師範  ところがコトはそう簡単には運ばぬ。というのも、Tカードには物理カードの「Tカード」とスマホのアプリ上に発行されるデジタルカード「モバイルTカード」の2種類がある。モバイルTカード・アプリがVポイントアプリにリニューアルされる際にVisaプリペイドカードによる決済が可能になるため、来春以降にVisa加盟店で決済できるのはモバイルTカードユーザーのみ、ということになる。

 

つまり、TカードではVisa加盟店での決済ができないんじゃ。現在Tカードユーザーの約75%がいまだに物理カードを使い続けており、特にシニア層は「モバイルTカード」への移行に消極的だとワシは見とる。この問題をどう克服するかが、新Vポイントのシェア拡大の鍵を握りそうじゃ。

 

銀行系で三井住友グループだけがポイント経済圏を構築できる理由

宝院 お話を聞いてるとOliveが魅力的なのに納得です。ほかの銀行には三井住友のようなポイント経済圏を作る動きはないんですか?

 

師範 いまのところ寡聞にして聞かんな。もっともこれには理由があって、ほかの銀行や銀行系カード会社には「ポイント経済圏」に参入するノウハウがないんじゃ。ではなぜ、三井住友にはそのノウハウがあるのか。

 

秘密は三井住友銀行と三井住友カードの関係性にある。両者は“別会社”ながら人的交流が盛んなようでな。同行にしばらく勤めると三井住友カードに出向となり、そこでカードについて学び、その後また銀行に戻る。逆もまた然り。

 

だから同グループには銀行とカードの両方の業務・知識に精通した人材が多く、銀行とカード会社の連携がうまくいく。一方、ほかのグループではそうした交流はあまりないようじゃ。

 

宝院 なんと、そんな裏事情があったとは!

 

師範 さらに、三井住友カードは2012年からアメリカのシリコンバレーに駐在員事務所を置いており、アップルや現地のフィンテック企業の動きをウォッチしておる。それでナンバーレスカードやタッチ決済もいち早く取り入れることができた。その辺、グループとしての方向性にブレがないな。

 

そうそう。以前、三井住友に取材した際、なぜシリコンバレーに進出したのか聞いたことがあったな。そのとき「シリコンバレーで培ったノウハウを日本や東南アジアで生かす」と言っとった。そういう意味では、10年、20年の長期計画の上で事業を進めているとも言える。

 

宝院  現在の躍進の種はすでに10年以上前に蒔かれていたわけですか。それはすごい!

 

ポイント経済圏にこだわりすぎるのも考えもの

宝院 ポイント経済圏が我々消費者にとっておトクなのはわかるんですが、銀行や保険、電力会社まで同じ経済圏から選ばなきゃならないのは不自由ではないですか?

 

師範 確かに、その視点は大事じゃ。その経済圏に属する銀行を使うことで、振り込み手数料が無料になったり、ATMからの引き出しが24時間無料になったりするメリットは大きいし、ポイントが貯まりやすいのも魅力じゃが、例えば、楽天経済圏で楽天ポイントを貯めたり使ったりするには当然ながら楽天トラベルを選ぶしかなく、サービスの選択肢が制限される。

 

ワシはほかの旅行サイトのほうが割安なチケットが取れるならそれを選べば良いし、様々なサービスをポイント経済圏に拘りすぎず自由に、かつバランスの取れた目で選ぶべきだと思っとる。

 

宝院 要は、何が一番トクかをフラットに見定めるってことですね。

 

師範 まあポイント経済圏は、将来的には2~3の経済圏に収斂されていくじゃろうが、個人的には20~30の経済圏があってもいいと思っとる。それだけあれば、より自分の生活スタイルに合った経済圏が選べるからな。

 

そのなかでの魅力づけとしてワシが望むのは、前回も触れたが、2重取り3重取り以上の多重取りシステムが打ち出されること。そう考えるとドラッグストアは非常に魅力的で、決済ポイントと提示ポイント、ストアポイントなどのポイント3重取りが比較的容易にできる。

 

特に、注目はウエルシア薬局で、同グループは最近ウエルシアカードの発行を始めた。このカードではWAON POINTを貯めて使えるのが魅力。グループ内の対象店舗でのクレジット払いと提示で、合計最大2.5%ぶんのWAON POINTが貯まる。

 

さらにウエルシア薬局ではTポイントも貯まるため、Tカードとウエルシアカードを提示、ウエルシアカードで決済すれば、合計最大3.5%のポイント還元が受けられることになる。

(ダブルでポイントを貯めるには、Tポイントが貯まるカードとWAON POINTが貯まるカードの両方のカードと、ウエルシアメンバー登録手続き書類の記入ならびにWAON POINTの会員登録が必要で一部対象外商品がある)

 

宝院 最大3.5%還元!? いつもながらウエルシア薬局は大盤振る舞いしますね。

 

師範 ちなみにウエルシアカードの発行元はイオンカード。というのも含め、イオン経済圏も新しいポイント経済圏として最近注目を集めとる。「お客さま感謝デー」などイオン各店舗での多彩な現金値引き/ポイントアップ特典があるのに加え、イオン以外でもWAONポイントを貯めて使える店が多数。利便性がさらに向上しとる。

 

宝院 色々お話を聞きましたが、いま一番興味があるのはOliveかな? ただ、PayPayや楽天、イオンなどほかのポイント経済圏の動きにも、今後は注目していきたいと思います。

 

【もっと詳しくなるためのキーワード解説】

 Googleウォレット

電子マネー、クレジットカードまたはデビットカード、ポイントカード、各種チケットや搭乗券、自動車用デジタルキーを保存できるデジタルウォレット。セキュリティ機能やプライバシー保護機能が組み込まれていて、Androidスマホでタッチ決済してもGoogle Payからクレジットカード番号が支払い先に提示されることはないなど、安全に利用できます。従来のGoogle Payアプリが2023年3月以降、Googleウォレットアプリに切り替わりました。

 

最大18%ポイント還元

Oliveフレキシブルペイや三井住友カードは、SMBCグループの各社サービスの利用状況により、対象のコンビニ・飲食店の利用時に最大+6%のVポイントを還元する「Vポイントアッププログラム」を採用。

 

これにより、最大18%のポイント還元が受けられます。「最大18%」の内訳は、基本ポイント還元率0.5%に加え、対象のコンビニ・飲食店でスマホのタッチ決済を利用すると+6.5%の計7%を還元。また、家族の登録で、ひとりにつき+1%、最大+5%を還元する「家族ポイント」が付与され、ここまでで合計最大12%の還元率になります。

 

さらに「Vポイントアッププログラム」では、Oliveアカウントに登録し、三井住友銀行アプリやVpassアプリに月1回以上ログインすると+1%還元、住宅ローンの契約で+1%、SBI証券の利用で最大2%還元されるなど様々なサービスを利用することで最大+6%の還元を受けられ、合計最大18%のポイント還元が可能になります。

 

イオン以外でもWAONのポイントを貯めて使える店が多数

WAONのポイントを貯めて使える店はイオンやイオンモール、まいばすけっと、ミニストップなどイオン系列の店だけではありません。ファミリーマートやローソンなどのコンビニをはじめ、ドラッグストア(くすりの福太郎やセイムスほか)、家電量販店(ビックカメラやコジマなど)、飲食店(マクドナルドや吉野家等々)といった幅広い店でポイントが貯まり、そのままもしくは電子マネーWAONに交換することで買い物に使えます。

 

ここで要注意なのは、WAONのポイントには「WAON POINT」と「電子マネーWAONポイント」の2種類があること。「WAON POINT」はイオンカードのクレジット・デビット払いやイオングループの対象店舗での電子マネーWAON払い、WAON POINT加盟店でのイオンカード提示で付与されるポイントで、貯まったポイントは1ポイント=1円で買い物に使えます(電子マネーWAONとして利用する場合はWAONステーションなどで電子マネーWAONへの交換が必要)。

 

一方、「電子マネーWAONポイント」は、WAON POINT加盟店以外で電子マネーWAONで決済した場合に付与されるポイントで、買い物に使うには必ず電子マネーWAONへの交換(チャージ)が必要です。

 

◎情報は掲載時のものです。価格は特に記載のある場合を除き、すべて税込価格です。

構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男