クレジットカード・キャッシュレス決済の疑問や悩みを、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が一刀両断に解決する連載企画。今回は7月から「申し込み制」を導入したことで話題の「楽天ブラックカード」に関する疑問に答えます!
【第20回】最近、カード業界で話題の「楽天ブラックカード」について教えて!
【解説する人】岩田 昭男
クレジットカード・キャッシュレス決済分野の取材・研究に30年以上携わるご意見番。『あなたの生活をランクアップさせる プレミアムカード』(900円/マイナビムック)など著書・監修書多数。
【今月の悩める子羊】捨井 達望(すてい たつみ)
楽天市場をはじめ、楽天経済圏の様々なサービスを利用する45歳の自営業者。楽天プレミアムカードを使い始めて3年が経つが、その上位カードである楽天ブラックカードが申し込み制になったとの報道を知り、興味が爆上がり。楽天ブラックカードに関する情報、メリットを入手しようと道場を訪ねた。
(相談者の要望)
〇楽天ブラックカードの歴史や魅力について知りたい。
〇申し込み制になって何が変わるのか教えて。
〇ほかのブラックカードやプレミアムカードについても知りたい。
“謎のベール”に包まれていた楽天ブラックカードがついに表舞台に!
師範 楽天ブラックカードのことが知りたいというのはおぬしか?
捨井 はい。ポイントが貯まりやすいということで楽天カードをずっと使っていて、いまは楽天プレミアムカードを持っています。毎月それなりの額を使っていますが、楽天の最上位カードである楽天ブラックカードは招待制ということもあり、雲の上の存在だと思ってたんです。ところが先日、その楽天ブラックカードが申し込み制になったと聞いて、「もしかしたら私も持てたりするのかな?」と。
師範 確かに楽天ブラックカードが7月から申し込み制になったというニュースは、多くのメディアに取り上げられたな。それまでは保有者のみがスペックを知っているという、謎に包まれたカードだったのじゃ。
捨井 おお、元々レア中のレアカードだったんですね!
師範 2009年頃から「招待制カード」として発行していたが、このカードが一般ユーザーの話題に上がるようになったのは最近の話。当初は「楽天ブラックカード」と言っても、ほぼ誰もその存在を知らなかった。それから徐々に「そういうカードがあるらしい」と噂になり始め、今年になり有名人が「アメックスのセンチュリオンより遭遇率低め」とSNSで紹介したこともあり注目度が一気に高まった。そして今回、満を侍して「申し込み制」に移行したというわけじゃ。
同伴者2名も無料のプライオリティ・パスや投資信託で2%ポイント還元など特典充実!
捨井 ほかのブラックカードと比べての、楽天ブラックカードの魅力って何なんでしょう?
師範 まずは、3万3000円というブラックカードとしては破格の年会費の安さ。もちろん一般カードと比べれば高いんじゃが、年会費と入会金で100万円以上かかるアメリカン・エキスプレスのセンチュリオンはもちろん、ラグジュアリーカードのMastercard Black Card(年会費11万円)などと比べると圧倒的に割安じゃ。特典面ではプライオリティ・パスを無料で申し込むことができ、しかも同伴者2人まで無料になるのに注目。本人はプライオリティ・パス無料でも同伴者は有料になる場合が多いなか、この厚遇は特筆すべきじゃ。
捨井 旅行や出張で海外に行くとき、同行する家族や仕事仲間と気兼ねなく空港ラウンジを使えるのがいいですね。
師範 ちなみに、年会費1万1000円の楽天プレミアムカードでもプライオリティ・パスは無料で申し込めるが、こちらは同伴者は有料。また、来年1月から楽天プレミアムカードはプライオリティ・パスの年間利用回数は5回までに制限されるが、楽天ブラックカードは利用回数無制限のままじゃ。さらに、楽天プレミアムカードにはないコンシェルジュサービスも付帯。航空チケットやホテル、レストランやゴルフ場の手配や予約を電話1本でお任せでき、旅行や出張が多いなら楽天ブラックカードを持つ価値は大きいと言える。
捨井 確かに上級カードのコンシェルジュサービスって旅行日と場所を伝えればオススメのホテルやレストランを提案し予約してくれると聞いてて、魅力的だと思ってました。
師範 旅行障害保険は海外最高1億円/国内最高5000万円。Mastercardブランド限定ながら「Mastercard Taste of Premium」という特典が付き、全国約200のレストランの2名以上の利用で1名ぶんのコース料理代金が無料になる。一方、JCBブランドは日本各地の上級のホテルや旅館にザ・クラス会員の専用料金で宿泊できる「JCBプレミアムステイプラン」という特典付きじゃ。
捨井 上級のレストランやホテルの優待特典が付くのはいかにも“ステータスカード”ですね。
師範 さらに楽天ブラックカードならではの特徴が、楽天証券の投信積立で楽天ブラックカードを利用した場合、全積立対象商品に対して2.00%のポイントが進呈されること。もちろん新NISAで利用可能じゃ。
捨井 おお、私もちょうど新NISAで毎月上限10万円までクレカ積み立てをやり始めたところです。年間120万円で2万4000ポイントが付けば、年会費の高さもかなり相殺されますね。
師範 その通り。これは逆に言えば、楽天証券の投信積立をしない人には関係のない話ではある。ただ楽天経済圏のヘビーユーザーであればうまみもあって、楽天プレミアムカードでは「+1%ポイント還元率アップ」の特典が楽天市場コース/トラベルコース/エンタメコースのどれかひとつしか選べない(2025年1月からは「楽天市場コース」のみになる)のに対し、楽天ブラックカードでは全コースで+1%ポイント還元を受けられる。楽天証券の投信積立を楽天ブラックカードで利用する人や、旅行や出張が多い人、これに加えて楽天のサービスを頻繁に幅広く利用している人なら3万3000円の年会費を払う価値は十分にあるじゃろう。
カード取得のハードルは年間カード利用額500万円を越えられるか
捨井 今回招待制から申し込み制に変わったことで、カード取得はしやすくなるんですか?
師範 そこが何とも言えんのじゃ。一般に招待制の場合、招待される条件は公開されず、カード希望者はネットに伝播された噂をもとにひたすらカードを使い続けるしかない。一方、申し込み制の場合は「年間利用額が○○万円以上」など条件が明確で目標が立てやすい。楽天ブラックカードの申し込み条件は2つ。まず、楽天プレミアムカードの契約から12か月以上経っていること。
捨井 おお、私それはクリアしてます!
師範 そして2番目の条件が難物。12か月間のカード利用額が合計500万円を超えていることじゃ。
捨井 そ、それはかなりハードルが高い。1か月平均で約42万円とは……。
師範 実際SNS上でも、「500万円」の壁に戦意喪失する声が多かった。ただし、おぬしは新NISAで年間120万円クレカ積み立てを行っとる。それに加えて、仕事用に「楽天ビジネスカード」を作り、仕事上の支払いと私生活の支払いを合算すれば、月に42万円のカード利用もできなくはなかろう。
捨井 なるほど。確かにそういう工夫を積み重ねれば、手の届かない金額ではないかもですね。ただ、楽天プレミアムカードとの年会費の差が2万2000円あるのは考えものだなあ。
師範 そうじゃな。年間120万円の投資信託での両カードのポイント還元の差は1万2000ポイントで、残る差額は1万円。それとプライオリティ・パスやコンシェルジュサービス、レストランでの優待特典(Mastercardのみ)など、楽天プレミアムカードとのサービスの違いを天秤にかけて、自分にとってトクかどうか判断すれば、自ずと答えは出るじゃろ。
ブラックカード“最高峰”はアメックスのセンチュリオン・カードとラグジュアリーカードのMastercard Black Diamond
捨井 ところで、ほかのカード会社のブラックカードだと、どんなカードがオススメですか?
師範 まず、年会費が同程度のカードなら、ブラックカードではないが、アメリカン・エキスプレスのゴールド・プリファード・カードがオススメ。年会費は3万9600円とやや高めだが、カードの継続で「アメリカン・エキスプレス・トラベル オンライン」のトラベルクレジット1万円ぶんが毎年もらえるほか、年間200万円以上のカード利用で国内の対象ホテルに1泊2名無料で宿泊できるギフトが贈与され、これだけで年会費の元が取れる。ほかにも、国内外約200店舗のレストランで、所定のコースメニュー2名以上の予約・利用で1名ぶんが無料になる「ゴールド・ダイニングby招待日和」など旅行や宿泊、レストランでの優待特典が目白押し。プライオリティ・パス専用ラウンジの無料利用が年2回までなのは楽天ブラックカードには劣るが、旅行が年1回程度なら問題ないじゃろ。メタル素材のカードもステータス感満点じゃぞ。
捨井 ちなみに、“ブラックカードの最高峰”は何カードになるんですか?
師範 それはもちろん、アメリカン・エキスプレスのセンチュリオン・カード! アメックス自体がその存在を公式には認めておらず、招待制でインビテーションを受ける条件はまったく謎。年会費は55万円と言われておる。カード会員にはプラスチック製の本カードと、職人が1枚1枚手作りしたチタンカード、アディショナルカードの3枚が渡され、会員一人ひとりに専属のコンシェルジュが付くという。
捨井 うわあ、なんだか別世界の話です。
師範 ところがそんな“王者”の地位を揺るがすかもしれないカードが2021年に登場した。それがラグジュアリーカードの「Mastercard Black Diamond」。その名の通り券面に天然ダイヤを埋め込んだ超ゴージャス仕様で、入会金は110万円、年会費は66万円。合計初年度費用はなんと176万円じゃ! こちらも完全招待制を取っており、当然特典も超豪華でスケールの大きい特典が揃っておるぞ。
捨井 いやあ、特典もすごいんでしょうが、まず年会費がスゴ過ぎて、頭がクラクラしてきました。
師範 ワッハッハ! その気持ちはわからんでもないな。で、話は戻るが、楽天ブラックカードの本格展開に当たり、楽天カードは今後アメックスやダイナースクラブの元ブラックカード担当者を引き入れるのではないかとワシは推測する。なぜなら、ブラックカードの豪華なサービスを企画・運営するには、専用のノウハウやコネクションが必要だからじゃ。京都のお寺の夜間拝観イベントを企画するのにどこに申し込めばいいかなど、経験なしではまずわかるまい。現状そうしたサービスがないのは、まだその方面に強い人材がいないということ。今後T&E(トラベル&エンターテイメント)に詳しいスタッフが入り、楽天ブラックカードに魅力ある新サービスが誕生するのを、楽しみに待ちたいところじゃ。
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構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎 監修/岩田昭男