古いカメラファンなら、「PEN-F」という名前を聞いて「おっ!」となる人も多いだろう。かつて、オリンパスが発売していた、ハーフサイズカメラの名称だ。ハーフサイズカメラとは、フィルムのフォーマットが35mmフルサイズの半分になっているカメラ。簡単に言えば、36枚撮りのフィルムで72枚撮れるカメラだ。コンパクトなボディと、撮影枚数が2倍になる点、また本体が比較的安価であったことなどから、当時人気となった。
オリンパスは、レンズ一体型のコンパクトハーフサイズカメラ「PEN」シリーズを1959年から発売。さまざまなタイプがあったが、1963年にレンズ交換式の「PEN-F」が登場。コンパクトで精悍なデザインのボディと、レンズ交換ができる点が大人気となり、いまでも愛好家がいる。その伝統を受け継いだのが、今回ご紹介する「OLYMPUS PEN-F」だ。
フィルムカメラ好きにはたまらないクラシカルで重厚なデザイン
デザインは、往年のPEN-Fを想起させるクラシカルなもの。トップカバーはマグネシウム合金を使用しており、持ったときに「カメラを持っている」と実感できる。本体上部のダイヤル類も上質。露出補正ダイヤルやシャッターボタンがクラシカルな雰囲気を醸し出している。また、ON/OFFスイッチはフィルムを巻くワインダーの形状をしている。
本体前面には、「クリエイティブダイヤル」を搭載。ここでモノクロやカラーのプロファイルコントロールが行える。また、アートフィルターを呼び出すことも可能だ。
背面液晶は3インチ、104万画素のタッチパネルとなっている。
この液晶は2軸可動式となっており、横に開いて回転させることができる。
また、液晶面を裏返せばフィルムカメラのようなスタイルに。ファインダーを覗くときに、液晶画面を気にせずに済むというメリットもある。液晶ビューファインダーは236万画素で、かなり見やすい。
今回、本体と一緒にお借りしたレンズは、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」。35mm判換算で24mmの広角単焦点レンズだ。ピントリングを手前にスライドさせると、指定の距離にフォーカス位置が移動する「スナップショットフォーカス機構」を搭載している。あらかじめ、カメラ側で絞り値を設定して、ピントリングを手前にスライド。そこに記されているフォーカス位置に設定すると、パンフォーカス(画面全体にピントが合っている状態)で固定され、AF不要でシャッターを切ることができる。ピント合わせが不要になるため、シャッターチャンスを逃しにくくなる。
このレンズは、金属製で質感が高い。PEN-Fとベストマッチのレンズだ。
本体にはフラッシュは内蔵されていないが、小型の外付けフラッシュ「FL-LM3」が付属。小型ながらも、バウンス撮影に対応する。
金属の質感に反して、本体は電池込みでも約427gと割と軽い。単焦点レンズをつけて、ちょっとスナップ撮影に行くというときに持ち出したくなる雰囲気を持ったカメラだ。
広角レンズで日常の「一瞬」を切り取る
今回は、PEN-Fに搭載されているアートフィルターを多めに使って撮影を行った。撮像素子は4/3型Live MOSセンサー、有効k画素数は2030万画素だ。ボディ内5軸手ぶれ補正となっているため、あらゆるレンズで手ぶれ補正が有効となる。この手ブレ補正がなかなか強力で、手持ち撮影でもほとんど手ブレには気を使わなかった。
それでは作例を見ていこう。
明治神宮入り口付近にある電話ボックス。神宮風なデザインで色使いも渋い。
雨上がりで青空が広がっていたところをパチリ。解像感が高く、落ち着いた色味だ。
ピクチャーモードの「モノクロプロファイル2」を使って撮影。高感度モノクロフィルムのような粒子が特徴。PEN-Fはモノクロ撮影が似合うような気がする。
広角レンズで地面の枯れ葉をマクロ撮影。「モノクロプロファイル2」使用。絞り開放付近でググッと被写体に近づけば、ぼけが楽しめる。
アートフィルターの「ファンタジックフォーカス」で撮影。ソフトフォーカス調になり、夢の中のような写真になる。
アートフィルターの「トイフォト2」で。画面周辺の光量が落ちて、トイレンズを使ったような写真になる。
広角レンズのおもしろいところは、メインの被写体を大きく映しながら、背景も広く取り入れられるところ。広々とした風景を撮るのも楽しいが、個人的にはこういう写真のほうが好きだ。
ISO 3200の高感度撮影。まだそれほどノイズが気になったり描写が乱れる感じではないが、ISO 6400になると明らかにノイズが目立つ。ISO 3200が常用感度の目安となるだろう。
所有する喜びを思い出させてくれるカメラ
PEN-Fを使ってみて感じたことは、「撮影の楽しさ」だ。もっといえば、「カメラを所有する喜び」だ。カメラは道具であると同時に、嗜好品のような傾向も持ち合わせている。描写がよければよいということももちろんだが、手に持ったときの感触や操作性、細かい部分のデザインなども重要だ。そういう意味では、PEN-Fは手にしただけで「よし、写真撮るぞ」という気持ちが高まるカメラと言える。そして、使えば使うほど手に馴染む感じがある。
クラシカルな外見とは裏腹に、花火や星の写真などで美しい光跡を撮影できる「ライブコンポジット」や、インターバル撮影、4Kタイムラプス動画、HDR撮影モードなどの最新機能も備えており、幅広い撮影が行える。写真欲を刺激される、末永く付き合っていけそうな魅力を持ったカメラだ。
オリンパス
OLYMPUS PEN-F
実売価格15万1000円(ボディ単体)、21万3300円(12mm f2.0 レンズキット)
世界初のハーフサイズ一眼レフ「PEN F」の名を受け継いだミラーレス一眼カメラ。クラシカルなデザインのボディに、5軸手ブレ補正や、0.5ピクセル単位でセンサーをずらしながら高解像度撮影を行う「ハイレゾショット」などの最新機能を搭載。高精細の電子ビューファインダーも内蔵している。
【SPEC】
撮像素子:有効2030万画素Live MOSセンサー
レンズマウント:マイクロフォーサーズ
モニター:3型/約104万画素
サイズ:W124.8×H72.1×D37.3mm/約427g(バッテリー等含む)
【URL】
オリンパス https://olympus-imaging.jp/
OLYMPUS PEN-F 製品情報 https://olympus-imaging.jp/product/dslr/penf/