毎年、夏になると思い出す、小学生時代の夏休みの“自由研究”。そういう人は多いと思う。昆虫標本、アサガオの観察日記、日用品を使った工作……。これらが代表的な自由研究のテーマだが、自分の場合は昆虫標本や貝殻標本が思い出深い。それも、実際の標本作りよりも、採集のために野山や磯を観察するほうが楽しかったのを覚えている。
今回手にする道具は、虫取り網やシャベルではなく「カメラ」である。そして、普段の風景やスナップの撮影とはひと味違う“観察によって見えてくる世界”を、探してみたい。まずは防水カメラを使って磯遊びをしてみよう。
カメラで自由研究② 顕微鏡モードで身近なものを撮ってみた
海岸の磯遊びで、海の生き物を捉える
訪れたのは、静岡県にほど近い神奈川県西部にある真鶴半島。その半島の突端にある「三ツ石海岸」である。この場所で干潮の時間帯を選んで“磯遊び”にトライ。そして、岩場の潮だまりに生息する、いろいろな生き物を観察&撮影したいと思う。そこで、撮影に使用するカメラには、防水タイプのコンパクトデジカメを選択した。
▲真鶴半島の突端にある景勝地「三ツ石」。その手前に広がる三ツ石海岸の潮だまりで、カメラを使って自然観察にトライする。
2つのタイプが異なる防水カメラを用意
今回用意したのは次の2モデル。
1つ目は、オリンパス「Tough TG-6」。開放F2.0(広角端)の大口径ズームレンズを搭載し、被写体に最短1cmまで接近できる高い接写能力を持つ。水中撮影モードも、従来モデルTough TG-5よりも充実。また、各種の撮影アクセサリーも揃っている。
2つ目は、ソニー「Cyber-shot RX0 II」。キューブ形の超小型ボディに、1.0型という大型のメモリー一体積層型CMOSイメージセンサーを搭載。そして、従来モデルDSC-RX0にはなかった可動式液晶モニターを搭載する。
このTough TG-6とRX0 IIは、どちらも防水(TG-6:水深15m、RX0 II:水深10m)、防塵、耐衝撃(TG-6:高さ2.1m、RX0 II:高さ2.0m)、耐荷重(TG-6:100kgf、RX0 II:200kgf)の性能を持つ、非常にタフなモデルなのである。
「Tough TG-6+フラッシュディフューザー FD-1」で被写体に肉薄!!
まず、近場の潮だまりのなかから、目を引く生き物がいるスポットを見つけて、オリンパス Tough TG-6を使って水中撮影にトライ(水際で手を伸ばしてカメラを浸けるだけだが)。このカメラの大きな特徴は“レンズ先端から1cmまで接近して撮影できる”という点だ。それによって、水中の生き物のリアルな姿を捉えることができる…と期待する。
▲モードダイヤルを顕微鏡アイコンに設定して使用する「顕微鏡モード」。レンズ先端から1cmまで被写体に接近でき、驚異的なマクロ撮影が行える。また、光学ズームも使用できる。
ただし、当日はあいにくの曇天で、光量的にもメリハリ的にも厳しい状況である。また、極端に生き物に接近すると、カメラ本体で外光が遮られたり、フラッシュ撮影で露出オーバーになったり光にムラができたりする。そのフラッシュ撮影時の不満を解消してくれるアクセサリーが「フラッシュディフューザー FD-1」である(水中使用可)。カメラ本体のフラッシュを光源に使いながら、レンズ先端から2~30cmの範囲の被写体を安定して照射できるのだ。
▲オリンパス Tough TG-6に「フラッシュディフューザー FD-1」を装着。これによって、極端な近接撮影でもフラッシュ光を安定して照射できる。
潮だまりのなかで最初に目についたのは、イソギンチャクのような小さい赤っぽい色の生物。調べてみると、ゴカイの仲間の「ケヤリムシ」のようだった。ただ、通常撮影モードの撮影距離では、思ったより大きく写せないし、光線状態や水中の浮遊物の関係で全体的に不鮮明になってしまう。
そこで顕微鏡モードで大胆に接近しつつ、フラッシュディフューザー FD-1を使用。抜群の近接性能と安定したライティングにより、ケヤリムシの興味深い(ちょっと気持ち悪い?)多くの触手の様子がハッキリ写せた。
オリンパス Tough TG-6 プログラムオート(顕微鏡モード) F6.3 1/30秒 WB:オート ISO800 内蔵フラッシュ(フラッシュディフューザー FD-1使用)
Tough TG-6を顕微鏡モードに設定すると、ズームレンズの広角側は25mm相当から30mm相当になる。先ほどの作例は30mm相当で撮影したものだったが、そのまま望遠側にズームすることも可能である。それによって、ケヤリムシ触手の細部が、より明確・鮮明に描写できた。
オリンパス Tough TG-6 プログラムオート(顕微鏡モード) F14 1/100秒 WB:オート ISO1600 内蔵フラッシュ(フラッシュディフューザー FD-1使用)
続いて、移動した先の別の潮だまりでは、白っぽいカニを発見。Tough TG-6を持つ手を近づけても動く(逃げる)気配がない。最初は「死んでる?」と思ったが、どうやら脱皮殻らしい。その原形を留めた見事な姿に、顕微鏡モードで肉薄した。
オリンパス Tough TG-6 プログラムオート(顕微鏡モード) F6.3 1/30秒 WB:オート ISO500 内蔵フラッシュ(フラッシュディフューザー FD-1使用)
チルト式モニターを備えたRX0 IIで快適に撮影
カメラを持つ手を水中に入れる磯遊びの撮影では、どうしても目線と液晶モニターに角度差が生じてくる。そうすると、地上撮影以上にモニター表示が見えにくくなる…というか、まるで見えないケースが多い。だから、実際の撮影では、被写体の大きさや位置や全体の構図がアバウトになるケースも少なくない。
だが、RX0 IIのように液晶モニターが上下方向に動く「チルト方式」なら、モニター表示の視認性は各段に高くなる。そのチルト機能を利用して、上から見下ろすアングルではなく、低い位置(もちろん水中)から水平に近いアングルで、水中の生き物を狙う。それによって、あたかも水中に潜って撮影したかのような臨場感を得ることができるのだ。
▲キューブ形のフォルムが特徴的な、ソニー RX0 II。とても可愛らしい小型カメラだが、1.0型の大型センサーを搭載していて、画質クオリティは非常に高い。24mm相当の広角単焦点レンズを採用。
▲自分撮りにも対応できる、上方向約180度・下方向90度までのチルト可動式液晶モニターを搭載。この機構によって、海面近くの水中撮影が、かなり快適に行えるようになる。
例えば次のようなシーン。潮だまりの底に、赤っぽい海藻を見つけたので、水中に浸けたカメラをその位置まで下げ、上方向に可動させた液晶モニターを見ながら撮影。このカメラの最短撮影距離は「20cm」とあまり近くないが、そのぶん周囲の様子までわかる。よく見ると、背後に泳いでいる魚の姿も!
ソニー RX0 II プログラムオート F4 1/100秒 WB:オート ISO125
海岸の岩場(陸上)にも目を向ける。夏の到来を感じさせる色鮮やかなスカシユリが咲いていたので、それにカメラを向けてみた。背丈が低い花なので、普通に見下ろすと図鑑的な写真になりがち…。だが、カメラを地面に近い位置まで下げて上に向けた液晶モニターを見ながら撮影すると、周囲の状況まで写し込める“花のある風景”に仕上げられる。
<しゃがんで見下ろして撮影>
<チルト機構使用で地面近くから撮影>
共通データ:ソニーRX0 II プログラムオート WB:オート ISO125
山間部で生まれ育った筆者は、幼い頃から野山や川の自然に触れながら遊んでいた。そんな自分にとって、たまに出かける海での“磯遊び”は、驚きと感動に満ちた時間であった。色鮮やで変化に富んだイソギンチャクや海藻、動き回るカニやヤドカリ、ちょっと不気味なウミウシの類、などなど…。オリンパス Tough TG-6の顕微鏡モードによる生き物のクローズアップ撮影や、ソニー RX0 IIのチルト式液晶モニターを使用した“臨場感のある海中風景”。それらは、幼い頃から抱いていた海への憧れや関心を呼び起こしてくれた。
次回は自然公園に舞台を移し、マクロ撮影を中心に、普段目にするのとは違う斬新な視点や描写を楽しみたい。