出社前や仕事の移動の合間にサッと食べられる「駅そば」は多忙な〝ビジネス戦士〟のオアシス。なかでも、都内中心部をぐるりと周るJR山手線は、ビジネスマンなら必ず使う大動脈。ここで美味しい店を押さえておくと、あわただしいビジネスの合間にも、つかの間の幸福を味わうことができますよ。というわけで今回は、絶品の一杯で人気を博す、山手線駅改札内のおすすめの店、7店を一気に紹介します!
【立ち食いそばまとめ】これぞビジネスマンが求める味! ウマさがしみる「新橋の名店」ベスト4
その1
神田駅「そばいち 神田店」
早さが求められる駅そばで生麺ゆでたてを提供し人気
生麺ゆでたては、昨今の立ち食いそばの大きなトレンド。特に時間にシビアな客の多い駅そばも同様で、厨房機器の進化などにより、いまや駅ホームで生麺ゆでたてを食べられる時代になりつつある。
ここ「そばいち」も、そんな生麺ゆでたてを提供する店のひとつ。山手線では神田駅のほか、新宿、恵比寿、秋葉原の各駅の改札内(池袋駅改札外のフードコートにもあり)で営業している。
同店のそばは自社工場で製麺し毎日配送する〝自家製〟。生そばを一からゆでたあと水で締めて、温かけそばならもう一度そばを温め直して提供する。そばはのどごしのいい細麺で、ややモチっとした食感とわずかにざらっとした粒感が面白い。
つゆは甘めで、香り豊かな本醸造しょうゆとうまみの濃い再仕込みしょうゆを合わせた返しの味わいを、かつお節ベースのだしがしっかり支えている。
天ぷらはかき揚げ、ちくわ天、コロッケと少数精鋭だが、いつでもほぼ揚げたてを提供。定番のかき揚げは衣少なめでサクサクの食感だ。また、そばいちの隠れた名物がさといもコロッケそばで、埼玉県狭山市産のさといもを使い、じゃがいものコロッケにはないモチモチ感と甘みが堪能できる。
神田店は平日で1日平均約900人が訪れる盛況ぶり。客層はビジネスマン中心だが、女性客も3割程度いるとか。立ち食いそば激戦区の神田で「そばいち」は、確たる人気を誇っている。
そばいち 神田店
営業時間:7:00 ~ 22:30(月~金)、7:00~21:00(土)、8:00~20:00(日、祝日)
定休日:無休
その2
上野駅「国産二八蕎麦 蕎香(きょうか) エキュート上野店」
本格二八そばの香りとのどごしを駅ナカで堪能!
「なんと駅ナカで二八そばを食べる時代がくるとは!」と往年の立ち食いそば好きも感嘆。上野駅改札内3階の大型商業施設、エキュート上野にある「蕎香」は、国産のそば粉と国産小麦をつなぎに使った二八そばを提供する店だ。改札内にあるから〝駅そば〟には間違いないが、そばのクオリティも接客も「本格そばの店」と言ったほうが正確。
オープンは2010年12月。そばは駅構内の製麺室で打った打ち立てを、もちろんゆでたてで提供。そのそばをひと口啜れば、爽やかなそばの香りと独特の甘みが口いっぱいに広がる。コシやのどごしも申し分ない。
だしは香り豊かなかつお節に味に力強さのあるにぼし、うまみの濃い宗田節、さば節などを合わせたもの。これに本醸造しょうゆをベースにした返しを合わせる。辛汁(もりつゆ)はしょうゆのうまみ、辛味を効かせつつ、みりんの甘みも感じさせるキリッとした味わい。甘汁(かけつゆ)はだしの香りと味が柔らかく出ていて、ほどよい甘さが心地いい。
人気メニューは5種類の野菜を使ったかき揚げそばで、夏はせいろ、冬は温そばがよく出る。天ぷらは注文を受けてから揚げられ、熱々サクサクの状態。そばの味をストレートに楽しめる二八そば(せいろ)や鴨肉のうまみあふれる鴨そばも人気だ。
1日に800人ほどが来店するそうだが、客の4割は女性。時間帯によっては、店内の客がほとんど女性ということも。土・日・祝日は家族連れも増え、また上野駅という場所柄、旅行・出張の前後にスーツケースを引いて来店する客も多い。従来の駅そばとは一線を画す「蕎香」は、純粋に「うまいそばを楽しむ」ために訪れたい。
国産二八蕎麦 蕎香 エキュート上野店
営業時間:7:00~23:00(月~土)、7:00~22:30(日、祝日)*ラストオーダーはそれぞれ閉店15分前
定休日:無休
その3
池袋駅「爽亭(そうてい) 池袋店」
昔ながらのつゆとゆで麺がクセになる王道駅そば!
JR池袋駅の1・2番線階段から中央1改札へ向かう途中にひっそりと佇む駅そば店がある。昔ながらの立ち食いそばを提供する「爽亭」だ。
「佇む」と書いたがその人気は「ひっそり」どころではない。平日は1000人もの客が訪れ、朝6時半の開店から賑わう。客は中高年男性が9割で、みなその味を「懐かしい」と評する。
つゆはかつお節のほか、さば節やむろ節でだしを取った甘めの味わい。最初のひと口はすっきりだが、食が進むにつれどんどんうまみが増すタイプだ。めんはやや細めのゆで麺で、立ち食い王道のもそっとした食感。
人気メニューは「海鮮かき揚げ天そば」。えびやいか、玉ねぎ、いんげんなどが入った豪華版だ。甘辛く煮た豚肉におろししょうがをトッピングした「豚肉しょうがそば」も一度食べるとくせになるほどおいしい。
なお同店は池袋駅のほか、上野、荻窪、国分寺、登戸の各駅でも営業。駅そば好きの心と胃袋をガッチリつかんでいる。
爽亭 池袋店
営業時間:6:30 ~ 23:00(月~土)、6:30~22:00(日、祝日)*ラストオーダーはそれぞれ閉店15分前
定休日:無休
その4
五反田駅「道中そば 五反田店」
キリッとした関東風つゆに五反田ワーカーも舌鼓!
「道中そば」は五反田駅ホームで営業する立ち食い店。1997年に経営母体が日本レストランエンタプライズになる前は「小竹林」名で営業していた歴史があり、五反田ワーカーにはまさに〝なじみの店〟といえる。
この店のそばはやや細身のゆで麺で、もっさりしつつも適度なコシがある。つゆはしょうゆのうまみが効いたかえしにさば節、うるめ節、いわし節などから取っただしを合わせた、甘さ控えめのキリッとした味。このつゆとゆで麺が食べつけるとヤミツキになる相性の良さなのだ。
同店のそばは比較的人気の偏りは少ないそうで、「かき揚げそば」「コロッケそば」が根強い人気な一方、近年レギュラー入りした「ジャンボ鶏から揚げそば」もよく出る。またこの店の「中華そば」は、ラーメン好きにも知られる人気メニューだ。
客の中心は男性ビジネスマンだが、最近は女性客も増加。駅そばにも女性進出の波は確実に訪れている。
道中そば 五反田店
営業時間:7:00~22:00(月~金)、7:00 ~ 21:00(土、日、祝日)
定休日:無休
その5
品川駅「常盤軒」(ときわけん)
品川駅ホームでかみしめる駅そば最古参の味わい
品川駅の「常盤軒」は大正12年に弁当販売を開始。立ち食いそばを始めたのは昭和39年で、関東の駅そばでは最古参の部類だ。
そばは中細のゆで麺を使い、ソフトな食感ながらのどごしはよい。つゆはかつおだしとしょうゆのうまみが立った甘辛の味わい。そばにもつゆがしっかり絡んで、満足感のある一杯だ。
一番人気はかき揚げそば。かき揚げは小麦粉メインで、2種類の干しえびを使用。B級の味わいには根強いファンも多い。
同店は現在品川駅ホームに4店を展開する(ちなみに、今回取材したのは横須賀線が走る13・14番ホームにある「品川26号売店」)が、各店舗で微妙に味が違う。元々同じレシピだったが、各店のベテランが長年調理するうち、徐々に個性が出てきたそうだ。立ち食い好きにとっては、そんなエピソードも最高の調味料だ。
常盤軒
営業時間:6:20〜23:30(月〜金)、6:20 〜 23:00(土、日、祝日)
定休日:無休
その6
大崎「あずみ」
だしが香る上品なそばを電車の眺めとともに味わう
平成14年、JR大崎駅構内のショッピングモール内に開業した「あずみ」は、清潔な店内に落ち着いた和の雰囲気が漂う店。椅子席も多く、女性客も多い。
オリジナルのつゆは、かつおの香りが鮮やかだ。かえしはしょうゆが立ちつつも、あと味がさっぱり。生麺ゆでたてのそばは、コシのある細打ちで食べ応えがある。
人気の「野菜かき揚そば」は、かき揚げの衣に甘みがあって、辛めのつゆとの相性がいい。
ちなみに同店は、窓から電車の発着が見下ろせる鉄道ファンの穴場スポット。長居は禁物だが、ときには電車を眺めながらそばを味わうのも面白い。
あずみ
営業時間:7:00~22:00(月~金)、8:00 ~ 20:00(土、日、祝日)
定休日:年始
その7
秋葉原「新田毎」(しんたごと)
ゆでたて麺とうまいつゆに1日1000人の客が舌鼓
「新田毎」は、JR秋葉原駅の総武線下りホームにある店。1968年の創業以来、長い間秋葉原の通勤客の腹を満たしてきた老舗だ。
1日の来店客数は平均1000人! 朝7~9時やお昼は満席状態が続き、夜9時以降も帰宅途中の客で賑わう。ほかの時間帯も、客が絶えることはない。
そばは生麺を5人前ずつ、混雑時は20人前まとめてゆでる。注文が次々入るので、ほぼゆでたて。つゆは、だしの濃厚なコクにしょうゆのうまみ、ほどよい甘みが加わった力強い味わいだ。
揚げ物の種類も多く、定番の天ぷらそばをはじめ、春菊そば、とり天そばが人気。また、月水金は天丼セット、火木土日はステーキカレーが超サービス価格で提供される。ステーキカレーは、1日に300食が出る人気ぶりだ。
新田毎
営業時間:6:30~23:00
定休日:無休
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立ち食いそば名鑑120 首都圏編
定価:本体690円+税
発売日:2017年12月7日
発行所:(株)学研プラス