食べた人が「一度は指にはめた思い出があるお菓子」と言えば、東ハト「ポテコ」そして「なげわ」です。今年で発売から45年になる商品ですが、あのリング形状のお菓子を作るには相当な研究と製造技術がいるとのこと。今回は、そんな「ポテコ」「なげわ」の秘密を探るべく、東ハトの速水雄飛さんに話を聞きました。
「ポテコ」「なげわ」は日本では当時珍しい形のスナック菓子だった!
――東ハトさんには「ポテコ」と「なげわ」と、リング形状の2つのお菓子がありますが、どちらも今年で45周年になりますね。
速水雄飛さん(以下:速水) はい。発売された1973年ごろは、ちょうどアメリカの文化が日本に徐々に入ってきていた時代です。当時、アメリカではすでにスナック菓子が数多くあったようですが、日本でお菓子というとおせんべいや和菓子が中心でした。
弊社でも様々な素材や製法でのスナック商品開発を試行錯誤していましたが、アメリカにならってポテトを原料にしたお菓子を作ろうと開発したのが「ポテコ」「なげわ」でした。ポテトチップスのようなものはありましたが、形状にこだわった商品は当時は珍しかったと思います。
余談ですが、いまでも残っているロングセラーのスナック菓子は弊社と同じように、この時代にスタートしたものが多いですね。
――発売当初のパッケージは、そのままアメリカンな感じですね。
速水 はい。「ポテコ」はアメリカの星条旗をイメージしたデザインで、「なげわ」はポテトの輪をカウボーイの投げ輪に見立ててウエスタンなイメージのデザインでした。
「ポテコ」「なげわ」とも指にはめて食べることを当初は想定していなかった!
――この「ポテコ」と「なげわ」、どちらもリング形状のスナック菓子ですが、商品を発売する際、どういうすみ分けを考えられていたのですか?
速水 よく「関東圏向けが『ポテコ』、関西圏向けが『なげわ』として開発された」と言われることがあるのですが、それは結果的に売れ行きが地域によって異なっただけで、当初はそういう地域別で販売のすみ分けをしようと思っていたわけではありませんでした。
それよりも食感ですね。「ポテコ」はカリッとした固めの食感。一方、「なげわ」はサクッとした軽快な食感です。元の原料は同じものなのですが、こういう異なる嗜好を意識して、当時の弊社の開発者が2つに分けて、開発したようです。
――どちらも指にはめて食べた経験がある人がいると思いますが、これは想定していたことなのでしょうか?
速水 当時はそこまでは想定していなかったようです。
ただ、後でわかったこととして、心理学的にリング形状のものがあると、指を入れたくなるということはあったようで、結果的に指にはめていただくことで、商品の親しみやすさや記憶に残るということに奏功したところはあったと思います。
――それがいまではキャラクターになっていますね。
速水 ポテコくん、なげわくんですね。2006年から設定したキャラクターで、様々なシリーズ商品に則して、ポテコくんの家族はどんどん増えて、いまでは数えきれないくらいいます。
――有名なところですと?
速水 サツマイモをベースの生地にした「おさつポテコ」には、ポテコくんの姪っ子として、おさつポテコちゃんというキャラクターを作ったり。あとはリングの長さを3倍にしたパパポテコシリーズを出したり。
なげわくんはあまり家族はいないのですが、こうやってお菓子とキャラクターを同時に楽しんでいただけるよう工夫をしています。
無数に登場した「ポテコ」のフレーバー
――現状のフレーバーを見ると、「ポテコ・桜香るうましお味」「Vなげわ・柚子胡椒味」など実に様々ですね。
速水 最近ですと年に数回くらい、「ポテコ」「なげわ」の季節フレーバーを出させていただいています。これはお客様からの声やトレンドを意識して考えたものですね。
基本は、「ポテトに合うフレーバーであること」と、「お子様とお母様が一緒に食べていただけそうなものであること」の2つです。
「ポテコ」「なげわ」は親子で食べていただくことがテーマです。味もそうですし、さきほど言ったキャラクターの設定で家族が増えていくことも、「親子で食べていただく」に基づいてのことですね。
――速水さんから見て、これまでに斬新だと思った「ポテコ」はなんですか?
速水 やはり「すいーとぽてこ」ですかね。通常の「ポテコ」と違って、「ポテコ」に蜜をコーティングしたもので、弊社の「キャラメルコーン」の技術を反映させた商品でした。
あとは「チーズフォンデュ ポテコ」ですね。通常のパッケージに、濃厚チーズパウダーを入れた別添の袋を付けて、「ポテコ」にお客様ご自身でパウダーを振りかけていただき、シャカシャカ振って食べていただくというものでした。これは味だけでなく、食べる楽しみ方も打ち出せたと自負しています。
45年間、「ポテコ」「なげわ」が愛され続けている理由とは?
――他社さんでもポテトを原料にしたスナック菓子は数多くありますが、実はリング状の商品って「ポテコ」「なげわ」以外に見つからないです。
速水 独特な形が、食感や指にはめて食べるといった食シーンを生み、オリジナル性のあるポジションを確立させたのだと思います。
――何故なのですか?
速水 実はポテトを原料にして、リング状に成形するのが難しいんですね。これを出来るのは、おそらく日本ですと弊社だけだと思います。
ポテトを主原料にしたスナック菓子は大きく分けて2つあるんです。1つは生ポテトをスライスしたもの、もう1つは粉状のポテトを固めて成形するものです。
「ポテコ」「なげわ」は粉状のポテトを成形しているのですが、
生地の配合バランス、成形機械の調整やコントロールは長年の経験と技術で培ってきたものです。他社様にはなかなかないはずです。だから、類似商品は出にくいのだろうと思っています。
「ポテコ」をインスタで検索すると…?
――45年もの歴史を経て、これから先「ポテコ」「なげわ」はどういった商品であり続け、育っていって欲しいと思われますか?
速水 やはりこれからも親子で親しんでいただき、食べ続けていただきたいですね。
いまはスナック菓子の世界も多様化していますが、例えばインスタグラムなどで「ポテコ」で検索をすると、大人の方が女子会などでこれらのお菓子を指輪にして楽しまれている写真を見ることがあります。
こういったことも、きっと小さいころから皆様が「ポテコ」「なげわ」に親しんできてくださったからだと思います。長い歴史のある商品ですが、これまでの経験を大切にさらに多くの方々に親しんでいただけるよう、定番はもちろん新たなフレーバーもどんどん開発していきたいと思っています。
定番のスナック菓子でありながら、時代に合わせた柔軟なフレーバーを開発し続ける東ハト「ポテコ」「なげわ」。大人になった今も、やっぱり指にはめて食べたい商品ですね。
東ハト「ポテコ」「なげわ」ホームページ