注目の日本酒その3
ライチを思わせる個性的なスパークリング「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」
次は、スパークリングSAKE部門で最高金賞に輝いた一本を紹介。ちなみにこの部門の最高金賞は、入賞率4.6%と今回最も狭き門でした。紹介する蔵元は、ネーミング的にも個性のある福島県の人気(にんき)酒造です。聞けばこちらは、アワードのスパークリングSAKE部門の常連。今回は、最高金賞受賞の「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」と、2014~2017年で4年連続最高金賞に輝いた「Rice Magic人気一スパークリングレッド」を紹介します。
どちらも、芳醇な甘味がありながら、酸も効いていてバランスの良い仕上がり。「人気一Rice Magicスパークリング純米大吟醸」は、口に含んだ瞬間、「ライチか!?」と錯覚させるような、個性的な風味がありました。シャンパンの製法として知られる「瓶内二次発酵」ならではのきめ細かな泡も秀逸。ボトルのデザインもかわいらしいので、女性にプレゼントしたら喜ばれそうです。
「両方とも添加物は一切使用せず、米と米こうじのみで発酵させたナチュラルな仕上がりが特徴です。やわらかく、やさしい味で飲みやすいと思いますよ。レッドのほうは、黒米を使っているから色味が赤くなるんです。紅白で縁起もいいということで、贈り物に選んでいただくことも多いですね」(田畑さん)
注目の日本酒その4
こだわりの自社栽培米で醸した軽やかなお酒「竹林 かろやか 大瀞」
続いて紹介するのは、プレミアム純米部門で最高金賞を受賞した一本「竹林 かろやか 大瀞(おおとろ)」。こちらも入賞率が5.3%という厳しいジャッジのなかから選ばれた名作です。こちらを醸した蔵は、米作りに並々ならぬこだわりを持つ岡山県の丸本酒造。
受賞作は、「かろやか」の名前の通り、「水か?」と驚くほど口当たりは極めて軽やか。華やかな吟醸香とほのかな甘みを持ち、余韻にはまろやかさが残る絶妙な味わいでした。
「とにかく、日本酒で米本来の旨みをダイレクトにお伝えしたいですね。当社では、すべての『竹林』ブランドの酒を社員自ら栽培した山田錦で造ります。山田錦は低農薬で稲本来の力を引き出す『三黄造り』という農法で栽培。また、掛米と麹米(※)で田んぼをわけ、それぞれ最適な方法で育てています。掛米は繊維がぎゅっと詰まった米が最適。麹米は菌糸が食い込めるよう、スカスカな米質のほうが良いので、それに応じて作り分けているんですね。ちなみに、ワイングラスはお酒の温度が上がりにくいですし、口元が広くて薄いので、お酒の味がよくわかります。ぜひ、このお酒もワイングラスで楽しんでみてください!」(高橋さん)
※掛米……もろみ(かゆ状のお酒のもと)に投入されるお米のこと。もろみを増量するときに使われます ※麹米……麹菌を繁殖させ、米麹の元になるお米のこと
注目の日本酒その5
「思いっきり味を乗せてみよう」と生酒のまま1年寝かせた「御園竹 蔵内生熟成」
最後は、最高金賞ではない金賞ながらも、個人的に印象深かった一本をご紹介。主催者のひとりに「これは本当に変わっている」と教えてもらった長野県・武重本家酒造の「御園竹(みそのたけ) 蔵内生熟成」です。
その特徴は、加水しない原酒ならではのアルコール度数19%というパワフルな飲みごたえと、濃厚な甘味と旨み。そして生酒のまま1年間寝かせたことによる、何ともいえない熟成香とトロリとした口当たり。苦味すら感じるクセのある味わいですが、ワイングラスで飲むと一層ハマりそうです。
「濃いでしょう? 通常のお酒と違い、実験的に思いっきり味を乗せてみよう、と造ったのがこれ。生酛造り(※)の酒は本来、熟成がゆっくりなので、熟成が進むよう、蔵のなかで生酒を常温で1年寝かせてみました。味はしっかりしているんですが、実は悪いニオイの『生老香(なまひねか)』も出ていて、ワイングラスだとそれがよくわかります。アルコール度数も高いですし、好き嫌いは分かれるでしょうが、熟成酒マニアの方にはぜひ飲んでいただきたいですね」(武重さん)
※生酛(きもと)造り……伝統的な造りの手法で、酵母を雑菌や微生物から守る乳酸菌を自然界から取り込む方法。濃淳な旨みと酸がある本格的な味わいの酒になります
贅を尽くした大吟醸から、唯一無二のスパークリング、クセが強すぎるお酒まで。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」では、個性豊かなお酒との出会いがあり、大いに興奮させていただきました。みなさんも、今後の同アワードに注目するともともに、今回紹介したお酒を見つけたら、ぜひワイングラスで楽しんでみてください!