代々木は穴場のグルメ街であり、駅から足を延ばすと宝物のような名店があるとかつて述べたことがある。では駅周辺はつまらないかというと、実はそんなことはない。代々木駅を利用する人なら、だれもが目にしているはずの街中華が存在する。「中国風レストラン 山水楼」だ。
元祖と肩を並べるヤミツキのウマさ
とにもかくにもここはまず、場所がすごい。改札を出た目の前なのだ。駅前と呼べるエリアのなかにスターティンググリッドというものがあるならば、同店はまさにポールポジション。周りはチェーン店だが、そのなかで唯一といえる存在感を放つ。
とはいえ、立地がいいだけでは繁盛しないのが飲食の厳しい世界だ。当然としてここには、多くのファンの心をつかんで離さない美食がある。代表的な一皿が「酸辣湯麺」。これはスーラータンメンという、酸っぱくて辛いラーメンだ。
豚ロース、鶏のモモとムネ、たけのこ、しいたけ、えのきだけ、絹ごし豆腐。これらをすべて細かく刻み、鶏ガラ、ゲンコツ、香味野菜からなるスープでサっと煮る。そこにしょうゆダレや溶き卵を投入し、ラストにとろみ、酸味、辛味を調整して完成だ。
中国の四川や湖南地方の「酸辣湯」がルーツといわれるこの料理。酢、ラー油、胡椒などが効いたパンチのある味わいだが、決して強烈すぎる刺激ではなく、食べ始めると箸が止まらない。その大きな理由は特製のしょうゆダレにある。タレのなかに昆布と煮干しでうまみをプラスしているため、どこかふくよかでやさしい。また、ごま油の香ばしさが酸味をほどよく抑えるとともに食欲をかきたてる。