立ち食いそば店の食べ歩きが趣味で、立ち食いそばムックも執筆したことがあるライター、平島憲一郎さんが気になるお店をレポートするコーナー。今回は、東京・京橋の「恵み屋」を紹介します。立ち食いそば屋といえば、揚げ物は定番メニューと化していますが、同店には薬味以外のトッピングは一切存在しません。
揚げ物はなし! そばの味だけで勝負する硬派な店
京橋駅近く、首都高の高架下路地にある「恵み屋」は、押し出し式製麺機を使った十割そばが人気の店。押し出し式製麺機とは、シャワーノズルのように穴の開いた投入口に一杯分の麺玉を入れ、加圧して麺を押し出す機械。製麺後すぐにゆでるので、新鮮な香りのそばを提供できる。
同店は基本的に3種類のそばを扱う。「恵み蕎麦」はのどごしの良さが特徴の細麺。「田舎蕎麦」はそばの香りがより鮮烈な太麺で、「ダッタン蕎麦」はポリフェノールの一種、ルチンを豊富に含み、ほのかな苦みがクセになる。本かつお節やしいたけなどでだしを取ったつゆは、キリッとした辛みのなかにふくよかな甘みとうまみがある。
3種類のそばはどれも並盛り300gとボリューム満点だが、驚くことに立ち食いそばの定番、揚げ物はなし。トッピングは大根おろしやとろろなどごく少数だ。これはまさに「うちはそばの味だけで勝負できる」という自信の表れで、実際に客は女性でも並盛り300g、男性なら大盛り500gをぺろりと平らげるという。
ちなみに同店は、夜は居酒屋としても営業。店内には常にハードロックがBGMで流れている。大盛りの絶品そばを格安で提供する「恵み屋」は、どこか破天荒な魅力もある店なのだ。