立ち食いそば店の食べ歩きが趣味で、立ち食いそばムックも執筆したことがあるライター、平島憲一郎さんが気になるお店をレポートするコーナー。今回は、神奈川・横須賀中央の「えびすや」を紹介します。「えびすや」は横須賀市で34年間、暖簾を守り続ける老舗。女将をはじめスタッフも全員女性ということもあり、店内はいつも活気に満ちています。
超薄型のかき揚げは未体験のおいしさ!
この店で一番人気のメニューは「天ぷらそば」だ。この天ぷら(かき揚げ)が他に類を見ないほど薄く揚げられていて、丼のつゆに浸すとすぐにホロホロとほどける。その崩れかけをそば、つゆと一緒に食べると、これがとにかくうまいのだ。女将は試行錯誤の末、この薄さに辿り着いたそうで、これ以上厚いと味が重くなるという。
一方、かつお節、さば節、昆布から取っただしと自家製のかえしを合わせたつゆはほのかに甘く、コクが濃厚。化学調味料は不使用で、口の中には柔らかな味の余韻だけが残る。まさに「また飲みたくなる」味だ。麺は細めのゆで麺で、つゆや衣としっかり絡むのがいい。
揚げものはいさぎよく、かき揚げオンリー。「カレーうどん」も人気で、材料は玉ねぎカレー粉、かたくり粉のみとシンプルなものだが、同店のつゆでカレー粉を伸ばすと絶品のうまさになる。これにかき揚げを追加する人も多く、「カレーのコクが増す」と評判だ。
「天ぷらそば」を含め多くのメニューは創業時と変わらず、価格もほとんど変わらない。そんな女将の心意気も、「えびすや」が慕われる理由なのである。