スパークリングワインの代表格といえば、フランスのシャンパン。手が届きやすいリーズナブルな価格帯では、イタリアやスペイン産が有名です。そんななか、ここ数十年の間にスパークリングワイン市場で話題を振りまき、世界中から注目を集めているのがイギリス産のスパークリングワインなんです。
イギリスのビールやウィスキーは知っていても、スパークリングワインを作っていることすら知らない人も多いのではないでしょうか? その一人であった筆者は先日、英国政府が日本で初めて開催したイベント「英国発! 新しい美味しさ体験 Food is GREATギャラリー」に参加し、その秘密を探ってきました。
大阪で4/4から4日間の日程で開催された同イベントでは、世界的に有名なイギリス産の蒸留酒、スコッチウィスキーやジン、スパークリングワインの紹介のほか、イギリス産のビーフやラム、サーモンと和の要素を取り入れた食材とのペアリンググルメの試食も行われました。
世界的に有名なスコッチウィスキーやカラフルなボトルが特徴のイギリス産ジンの展示が並ぶなか、一際目立っていたのがスパークリングワインです。筆者がイギリスを最後に訪問したのは十数年前。ロンドンのいたるところにあるパブで飲み歩きして目にしたのは、パイントジョッキに並々と注がれたビールを飲む老若男女でした。スコッチウィスキーを飲む人も多く、スパークリングワインを飲んでいる人はおろか、置いているパブも少なかった印象があります。
英国で活躍する日本人ミクソロジストにインタビュー
イギリスとスパークリングワインがまったく結びつかないため、イギリスで「ミクソロジスト(俗に言うバーテン)」として活躍している岡田隆一郎さんにイギリス産スパークリングワインの魅力やフランスのシャンパンとの違いを聞いてみました。
−−イギリス産スパークリングワインが注目されたきっかけとは?
岡田さん 2009年にイタリアのワイン雑誌が主催したボリチーネ・デル・モンドで、13種類ものシャンパンを差し押さえ、イギリスのナイティンバーのスパークリングワインが金賞を獲得したことで、世界中から注目を浴びました。12年にはエリザベス女王即位60周年記念パーティーで提供されたほか、13年のパリ・ファッション・ウィークでは、フランスのシャンパンではなくナイティンバーが採用され、さらに注目を集めました。
−−イギリス産スパークリングワインがシャンパンを超えた理由とは?
岡田さん 温暖化の影響からイギリス南部の気温が上昇し、日照時間も長くなり、ブドウ栽培に適した気温、気候になっています。過去10年の間にブドウの栽培面積が拡大し、特にスパークリングワインの増産は顕著で、イギリス国内で生産されるワインの69%を占めています。2017年には100万株のブドウの木が植えられ、約70%はフランスのシャンパーニュ地方と同じ品種のピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエになっています。ブドウの木だけでなく、イギリス南部はシャンパーニュ地方と似た石灰質土壌ということからも、良質なスパークリングワインができていると言えるでしょう。
−−それだけ似ているとシャンパンとの味の違いはあるのでしょうか?
岡田さん 基本的には似ています。ただ、イギリス産のスパークリングワインのほうが酸味が強く、後味がさわやかなのが特徴です。のどごしがさっぱりしているので、とても飲みやすいですよ。最近、イギリスでは日本の寿司屋が多く出店していますが、お寿司や刺身に爽やかなのど越しのスパークリングワインをあわせるイギリス人が多くなっていますね。
−−日本でもイギリス産スパークリングワインを購入できますか?
岡田さん イギリスワインを直輸入しているオンラインショップや高級百貨店にあるワインコーナーに置いてあります。4~5種類販売しているところが多いので、試飲をしてみて自分好みの味を見つけてみてください。