今春リニューアルし、4月上旬製造品から切り替わった「キリン一番搾り生ビール」。世間ではビール離れが叫ばれていますが、同商品は2018年の缶が前年比105%を達成するなど好調で、しかもこの4月の販売数量は前年比約2割増しだったとか。
そんな折、一番搾りのメディアツアーを実施するという耳より情報をキャッチ。質問にも答えてくれるということで、キリンビール横浜工場に行ってきました!
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工場見学でわかった30年の凄みと歴史
メディアツアーは、通常開催されている「キリン一番搾り おいしさの秘密発見ツアー」をベースに、特別な施設の見学や質疑応答などを交えたもの。実際に体験してみると、知っているつもりでいた新たな発見もたくさん。ツアーの様子とともに、知られざる真実をお伝えしていきます。
その1:一番搾り製法はキリンだけ
これまで、CMなどでも紹介されてきた「一番搾り製法」。通常のビールは、麦汁ろ過の工程で自然に流れ出る一番搾りの麦汁と、その後湯をまいて搾り出す二番搾りの麦汁をブレンドして造られます。そして、渋みが少なく上品ですっきりした一番搾り麦汁のみで造る贅沢なビールが「キリン一番搾り生ビール」。これはコスト面だけでなく技術的にも難しく、世界中で採用しているのはキリンだけです。
その2:世界の教育現場で紹介されている
ビール大国であるドイツ。そこではビール醸造学が確立されており、世界中のビールメーカーなどから醸造家や研究員が留学しています。その授業内では、なんと一番搾り製法が紹介されているとか。
その3:発売当時は斬新なデザインでも話題に
一番搾りが世に誕生したのは1990年。本格的なビールとしての落ち着きと存在感をもったデザインを採用し、オフホワイトをベースに高級感のある色調に。これは当時大きな話題となり、大ヒットの一因となったのです。
その4:“早すぎた”プレミアムビールである
数年前にメーカー各社のプレミアムビール競争が熾烈になった時期がありましたが、キリンはやや出遅れました。それは、そもそも一番搾りはプレミアムな立ち位置で生み出したブランドだから。事実、贅沢な製法を採用しているためコストもかかっています。
ただ、“より多くの人に飲んでほしい”という思いから、あえて価格での差別化をはからなかったので、プレミアムビールとして一般認識されませんでした。いわば、一番搾りは早すぎたプレミアムビールともいえるでしょう。
いま考えられる最高の味は“すっぴんのおいしさ”
一番搾りは、これまで何度もリニューアルを遂げています。それは時代のニーズや消費者層、し好の変化にフレキシブルに応えてきた証とも言えるでしょう。過去をさかのぼると、最大の刷新は2009年。ちょうど10年前です。
その5:おいしさのためなら素材も見直す
それまでは一部に米、コーン、スターチを使っていましたが、ドイツの「ビールは麦芽・ホップ・水・酵母のみを原料とする」という“ビール純粋令”に従い、副原料の使用をやめたのです。その理由を、同社の田山智広マスターブリュワーが教えてくれました。
「伝統的に日本のビールには、味をすっきりさせるために米などを使う銘柄があります。逆にいうと、麦芽100%のビールは、日本人の嗜好的には味が重いと思われてきたんですね。ただ、その嗜好が多様化するとともに、副原料を使わなくても“狙いたいすっきり感”が実現可能になりました。そこで、一番搾りは純粋令を意識した麦芽100%にシフトしたんです」(田山さん)
ある意味、ビール造りの原点に立ちかえったともいえる10年前の大革命。その後2017年にも大幅刷新し、最新の2019年のリニューアルでは2年前の仕上がりからさらに進化させたのだとか。
「具体的には秘密ですが、“ホップの化粧を薄くした”とでもいいましょうか。苦みやフレーバーの決め手となるホップの香味をシンプルにしたことで、すっぴんのおいしさを実現し、大好評を得ました。それを今回さらにパワーアップさせたんです。一方で、ホップの魅力は毎年秋限定の『一番搾り とれたてホップ生ビール」で、いっそう訴求していきますよ!」(田山さん)
田山さんは「いま考えられる最高の状態に仕上がっています。このおいしさをひとりでも多くの方に実感していただきたいですね」とも。ただ、その探求は終わることはなく、これからも変化をいとわずどんどん進化させていきたいと展望を教えてくれました。ビールがますますおいしいこれからの季節。新しくなった一番搾りを、この機会に飲んでみませんか!
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