のどごしがよいつけ麺と裏メニューの麺にも注目
ラーメン以外の公式な麺料理がつけ麺だ。ラーメンの味付けをベースにカツオ、煮干し、昆布から抽出したダシを加え、ほんのり辛味を効かせたつけ汁。ゴマやかいわれ大根で香ばしさや爽やかさを加えた味が食欲を刺激し、冷水でシメた麺と絶妙にマッチ。ツルツルっとのどごしがよく、飲んだあとでもペロリといける食べやすさだ。
また、前段で“公式な麺料理”と述べたが、ラーメン類にも公式でない料理=裏メニューが存在する。これらは仕込みや混雑状況によるため必ず提供してもらえるわけではないが、運がよければ、辛口ラーメンや溶き卵を加えた一杯などが味わえる。そしてこの日は……運がよかった。夏の定番「冷やし中華」が用意されていたのだ!
「冷やし中華を食べると夏だなぁ、と思いますよね。角久の夏の思い出といえば、フジロック(国内最大級の野外音楽フェス「フジロックフェスティバル」のこと)帰りのワンシーン。お母さんに『おかえり! ちょっと疲れてんじゃないの?』なんて声かけられて、当時はまだ僕の職業がバレていなかったから『ちょっと仕事で新潟まで行ってたんですけど、雨がすごくてずぶ濡れになってねぇ……(フジロックフェスティバルの会場は苗場で、山のため雨がよく降る)』と。『あら随分遠くまで……カゼひかないように気をつけるんだよ!』ってやさしい言葉に癒されつつ、さっきまで数千人の大歓声を浴びてたのに、3時間後には近所のいつものお気に入りのラーメン屋でひとりで飲んでる自分にニヤニヤしたり」(田中さん)
ご近所でラ飲みのできる「ちょっといい店」を探してみては?
一日を振り返り、ゆっくりと素の自分を取り戻していく……そんな癒やしの場所があると、人生はちょっぴり豊かになるだろう。その意味でも、ぜひ「ラ飲み」ができる店を1軒は確保しておきたいところだ。
「角久みたいに本当にウマい店は少ないかもしれませんが、どの街にも気さくなご夫婦がやられているような“ちょっといい店”っていうのはあると思うんです。近所の常連さんと会話しながら軽く一杯やって、最後はラーメンで〆る。本格的な飲み屋さんとは違うからこその楽しさ。仕事帰りにちょっと寄り道して、そういうラーメン屋を探してみる。これもラ飲みの楽しさのひとつです」(田中さん)
BGMが有線の昭和歌謡チャンネルのせいか、ここ角久には、子どものころに見ていたバラエティ番組のような「古きよき風景」がある。休憩中にやって来る“イカついけど話すとやさしい”タクシー運転手は伊東四朗で、向かいの陽気な学生グループはザ・ハンダース。おっと、ほろ酔いでご機嫌な小松政夫が入ってきたよ……。顔なじみの常連さんをラーメン屋のコントの登場人物にたとえて、ひとりほくそ笑むのもまた一興。ただ、近所の女子大生3人組のキャンディーズが入ってくることは、決してない。それだけが残念である。
撮影/我妻慶一
【SHOP DATA】
江戸川ラーメン角久
住所:東京都新宿区市谷台町8-2 ルシエール ハル 1F
アクセス:都営新宿線「曙橋駅」A2口徒歩3分
営業時間:火~土19:00~翌1:00、日18:00~23:30
定休日:月
人に話したくなるお酒のお役立ち情報やうんちくを知りたい方は、酒噺へ!