ラーメン専門店の新出店は依然として活盛で、一説には全国に3万店以上の店舗があり、7000億円市場にもなっているようです。しかし、特に新出店、あるいは専門店は、だいたいどこもフツーに美味しい。美味しいことはもちろん良いことですが、逆に言うと「驚きの味」に出会うことがあまりなくなったようにも思います。
かつて何度かのラーメンブームではたいていブームを牽引するような「驚きの味」がありました。今のラーメンは巨大産業に飛躍した代わりに、味が平均化されてしまい、そういう「驚きの味」はなかなか生まれにくいのかもしれません。クラシカルな町中華が見直されている要因の一つも、こういったことにあるのかなぁ……なんて思ったりもします。
ところで、こういった「ラーメンの今」を、マニア度の高いラーメンファンたちはどう見ているのでしょうか……。と思って調べてみると、もはや食べ歩きをはるかに超越して、「もう自分で作る!」と、自作ラーメンにハマっているマニアの方が増えているようです。前述した筆者のような思いからなのか、はたまた単に好きすぎて自作にハマっていったのか……。これは人それぞれ理由は異なるはずですが、いずれの自作ラーメンも凝りに凝った、珠玉の驚きラーメンばかりです。
今回は、これら自作ラーメンマニアの方々のメニューをご紹介しつつ、ラーメンのさらなる深い魅力に迫りたいと思います。
【その1】オーソドックスなラーメンから、ラーメンケーキまでの創作ラーメンの大研究!
ーー神田武郎さん
最初のご紹介は、facebookの「自作ラーメン研究会」を主宰し、多くの人々と自作ラーメンの魅力や技を共有し合っている神田武郎さんのラーメン。シンプルでいかにも美味しそうなラーメンから、タコや松茸や貝殻を使ったラーメン、はたまたラーメンを使ったラーメンケーキまでと、次々と新しいラーメンを作り続ける神田さん。
神田さんが自作ラーメンを始めたのは、今から約20年前のことだそうです。最初は「好きだった女性が『美味しい!』と言うラーメン店の味を再現しよう」として始められたそうですが、そこから平均して年間100杯以上、数千杯ものラーメンを作り続けているそうです。これだけの経験、ノウハウがあるからこそ、こんなにバラエティに富んだメニューが生まれているのかもしれません。
ただし、「自作ラーメンを始めたきっかけの一杯はまだ作れていないので、いつかたどり着きたい」と神田さん。そのラーメンが完成した日、かの日の女性と再会し、一食されることがあったらなんてロマンチックなことでしょうか!
【その2】二郎から燕三条背脂ラーメンまでの男らしいラーメンを自宅で!
ーー佐藤広宣さん
続いてのご紹介は、いかにも男らしい脂ガッツリの自作ラーメンを行なっている佐藤広宣さんのラーメン。佐藤さんは「創作自作ラーメン」というより、ご当地ラーメンや有名ラーメン店の味を模すことをポリシーにされているらしく、現在までに20種類くらいのインスパイアラーメンを作ることができるとのことでした。上の写真の通り、確かに二郎風や燕三条背脂風の自作ラーメンが多く、どれも実在するお店で見る感じと変わりなく映ります。
その作り込み方も本格的で、自家製麺はもちろん、ガラや節などのあらゆる食材を試されているようでした。
今後も「クオリティーを上げていきたい」とストイックに語る佐藤さん。いつか、佐藤さんの男らしいラーメンをどこかで食べられるといいなと勝手に妄想する筆者でした。
【その3】湿度が高い夜が来ると、製麺したくなる……オールジャンルの自作ラーメン!
ーー熊谷渉さん
最初は「家族が好きなチャーシューやメンマを、思いっきり食べて欲しい」という理由から、自作ラーメンを始められたという熊谷渉さん。ただし、作り始めるうちにどんどんハマっていったようで、自作歴約10年になる今は、年間170杯オーバーにも至ったそうです。
上の写真を見る限り、創作的な斬新なメニューが多いかと思いきや、こだわりを聞くと、「シンプルに旨いスープに、旨い中華麺を合わせて楽しむ」とのことで、やはりラーメン作りの基本はしっかりと押さえた上で、これだけのバラエティ溢れるメニューに転じられているようでした。「湿度が高い夜が来ると、製麺したくなる」という熊谷さん。その日常には、常に自作ラーメンがあるのかもしれません。