人形町系大勝軒、代一元、生駒軒など、街中華には様々なのれん分けが存在するが、なかには親族のつながりから派生したケースもある。その一例が今回紹介する「菜来軒」だ。数店舗あるなかから今回訪れたのは、墨田区石原という住所に位置する下町の分家。
現在、ブーム来てます! 街中華の名店を集めた連載はコチラから!
最寄り駅は両国、錦糸町、本所吾妻橋のどこからも徒歩15分弱かかり、陸の孤島的な場所で、決してアクセス至便とはいえない。だがそこには、まさに“街の中華屋さん”と呼ぶにふさわしい、あたたかな空間と愛情いっぱいの料理が待っている。
とにかくチャーシューの存在感がスゴい
味を支えつつ心地よい雰囲気をつくるのは、街中華では珍しい女性店主の福澤和子さん。常連客から“おかあさん”と慕われる、愛されキャラだ。その人柄はメニューにもあらわれ、おいしさはもちろん量もたっぷりで盛り付けも丁寧。たとえば、酒のアテに最高な「メンマチャーシュー」は3~4人前はあろうかという大ボリュームで、うれしいことにきゅうりもがっつり入っている。
チャーシューは、なじみの精肉店から届く巨大な塊の豚肩ロースを毎朝仕込み、メニューごとにカットしたものをこの一皿にも使用する。メンマは大きなたけのこ水煮から切り出し、しょうゆダレや黒コショウなどでしっかり味付けする自家仕込み。そこにみずみずしいきゅうりを切って合わせ、しょうゆやごま油などで仕上げる。
肉はむっちりジューシー、メンマはコリコリ、きゅうりはシャキシャキ。そこにほどよくエッジの効いた味付けがマッチし、ビールをはじめとする酒がグイグイ進む。数名で飲むなら、絶対オーダーするべき逸品だ。
ランチやシメに活躍するメニューといえば麺飯類だが、同店で絶大な人気を誇るのが“五目”のチャーハンと焼きそばだ。その理由は、一般的な五目のイメージを凌駕する盛り付けと、チャーシューの存在感にある。
塩とこしょうが中心のシンプルな味付けだが、それもあって素材本来の味が口いっぱいに広がる。卵を2個ぶん使うという玉子焼きは見た目の演出だけではなく、ふわふわとした食感がエアリーなアクセントをプラス。多彩な具材も相まって、ハイクオリティなチャーハンに仕上がっているのだ。
豚肉、海老、いか、ウズラの卵、白菜、玉ねぎ、にんじん、ふくろだけ、ピーマン、ヤングコーンと品目数は圧倒的。かまぼことなるとが別々でのる点も特徴だが、これも彩りを重視する福澤さんのこだわりである。
細めでパリパリの揚げ麺に絡む、味も食感も異なる様々な具材の数々。食事にもつまみにも万能な焼きそばで、シメに迷ったらこちらを選ぶのがいいだろう。