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2020/4/19 17:30

海外で人気上昇率No.1の「サワービール」が日本でもヒットしそうな予感

仕事ではもちろん、自身のライフワークとしてビールのトレンドを追いかけている筆者。数多くのビアスタイルがあるなかで、「そろそろ日本で本格的にブレイクしてもいいのでは?」と思っているのが、サワービールというスタイルです。

 

というのも、2018年に書いた「今夏のクラフトビールは「サワー」「副原料」、そして「ブリューパブ」というキーワードで読み解く」という記事で「日本でもいずれ浸透していく」と予言しましたが、いよいよ起爆剤的な商品が出たのです。

 

それが「ブルックリンベルエアサワー」。そこで、改めてサワービールの特徴や味わい、ヒットの根拠などを担当者に直撃。これからのビールトレンドにも迫ります。

 

↑「ブルックリン ベルエアサワー」。輸入元であるキリンの公式オンラインサイト「DRINX」では6本2960円で販売されています

 

海外で最もファン層が増えているビアスタイルはサワービールだ

「ブルックリンベルエアサワー」は、世界中で盛り上がっているクラフトビールムーブメントの最重要企業といって過言ではない、米国NY発のブルックリン・ブルワリー社が手がけているブランドです。その名にピンとはきていなくても、ロゴを見ればわかるという人は多いでしょう。

 

↑「ブルックリンベルエアサワー」と並んでいるのが代表的なビール「ブルックリンラガー」。アイコニックなロゴは、世界的に有名な「I ♡ NY」をデザインしたミルトン・グレイザー氏が手掛けています

 

サワービール自体は日本でも、愛飲家を中心に一定の人気を得ています。しかしまだまだ認知はクラフトビール好きの域を出ていません。近年ようやく「IPA」(インディアペールエール)という苦味の効いたスタイルや、フルーティな白ビール「ホワイトエール」(またはベルジャンホワイトエール)がスーパーに並ぶようになりましたが、業界の雄であるブルックリン・ブルワリーがサワービールを日本展開したことですそ野が広がり、次のスター候補になるのでは?というのが個人的な見解です。

 

↑すでに海外では発売されており、これまでもイベントなどで輸入品が販売されていました。それが今春ついに、日本上陸を果たしたのです(写真はクラフトロックサーキット’19にて)

 

前置きはこのぐらいにして、サワービールと「ブルックリンベルエアサワー」の特徴をお伝えします。サワービールとは、乳酸菌を使って発酵させることで、自然由来の酸味を引き出した爽やかなビールのこと。

 

↑オンラインのほか、全国の飲食店でも取り扱いがスタート。アルコール度数は4.5%と、ビールとしては比較的おとなしめです

 

サワーの直訳は「酸っぱい」であり、確かに一番の特徴は酸っぱさです。とはいえ酢のようなツンとした感じは皆無で、フルーティで心地よく爽快に飲める酸っぱさが印象的。ということで、このビールが生まれた背景から、ブルックリン・ブルワリージャパンのマーケティングディレクター、小西裕太さんに聞きました。

 

↑小西さん。オーストラリア駐在経験があり、昨年1年半ぶりにオーストラリアへ行ったところ、IPAやペールエールばかりだった酒屋の棚が、サワービールばかりになっていて人気を確信したそうです

 

「アメリカでは2015年ごろからサワービールが流行りはじめましたが、ブルックリン・ブルワリーでは2017年に『ブルックリンベルエアサワー』を発売しました。なぜタイムラグがあるかというと、最適な乳酸菌を探すのに2年ほどかかったからです」(小西さん)

 

サワーエールづくりの決め手となるのが乳酸菌です。もともと、酸っぱいビールにはベルギーの伝統的なランビックというビアスタイルがあり、これはナチュラルワインのように、野生酵母で発酵させるビールのこと。このような酸の効いた味を、野生酵母以外のやり方で新しく生み出せないか――そうして見出されたのが乳酸菌なのです。

 

「『ブルックリンベルエアサワー』はアメリカをはじめ海外でも好評を博し、本国のNYではいくつかのサワービールがあるなかで、いまやナンバーワンのサワービールとなりました。また、データは売上金額ベースなのですが、一番の成長率で人気が出ているのもサワービール(取材時点)。単純なランキングではいまもIPA系の苦くジューシーなビールが上位ですが、ファン層が増えているのはサワービールなんです」(小西さん)

 

アメリカ以外の国をみても、ヨーロッパやオーストラリアなどのクラフトビール先進国では前年比の2倍以上の勢いでサワービールが伸びているとか。そしてこのトレンドは日本でも同様に広がるのではないか、というのがブルックリン・ブルワリー社の見解です。では、その理由は?

 

「理由はふたつ。日本でもクラフトビールが少しずつ広まり、多くを占めるピルスナースタイル以外に、苦かったりフルーティだったりするビールもあるという認識になってきています。ビールの味の多様性が理解されれば、酸味のあるビールも受け入れられるはず。というのがひとつめです」(小西さん)

 

ふたつめは、日本においての酸っぱい味に対する間口の広さが挙げられる、と小西さん。

 

「お寿司や酢の物など、日本の伝統的な料理には酢を使ったものがたくさんあり、酸味を受け入れる食文化は根付いているんです。お酒でも同様で、伝統的なものであれば梅酒。日本酒でも近年は酸の効いたタイプが脚光を浴びていますし、最近大人気のレモンサワーなどはまさに酸味の効いたお酒ですよね」(小西さん)

 

今回、レモンサワー専門バーとして有名な「The OPEN BOOK」でも期間限定で「ブルックリンベルエアサワー」を販売するとのこと。これに際して、同店オーナーであり、レモンサワーのパイオニアとして活躍する田中開さんは「サワーエールは、苦いイメージのビールを覆す、爽やかな飲み口やフレーバーの多様性が特徴的。ビールが苦手な人に、特にオススメできる入門ビールかと思います」とコメントを寄せています。

 

↑田中開さん。「The OPEN BOOK」は新宿ゴールデン街にあります

 

家飲みに適したフードとアレンジ法を教えてもらった

では、「ブルックリンベルエアサワー」にはどんなフードを合わせるとよりおいしく楽しめるのでしょうか。聞くと、小西さんは2種類の料理を提案。ひとつは白身魚、もうひとつはチーズケーキということで、その理由を教えてもらいました。

 

↑白身魚は、ブルックリン・ブルワリーの世界初となるフラッグシップ店「B」の名物、タコススタイルで。チーズケーキはNY系の濃厚なベイクドタイプのほうが合うとか

 

「『ブルックリンベルエアサワー』のトロピカルフルーツのような香りと爽やかな酸味。これが、レモンなどを使うチーズケーキのほどよい酸味にマッチするんです。白身魚は、セビーチェというラテンアメリカの鮮魚のマリネをイメージしました。今回は金柑や寿司酢を使っているのですが、スパークリングワインのような『ブルックリンベルエアサワー』の軽やかな飲み口が相性抜群なんです」(小西さん)

 

「ブルックリンベルエアサワー」は、アマリロという温かみのある柑橘系ホップで風味付けしているのも特徴。持ち前の酸味とも相まって、ビアカクテルもつくりやすいのだとか。ということで、2種類のビアカクテルも教えてもらいました。

 

↑今回のビアカクテルは、30歳で渡米し世界的なカクテルコンテストでの優勝経験ももつ、宇塚健さんが考案。宇塚さんは現在「B」で働いています

 

「『ベルエア with フランボワーズ カクテル』は、フランボワーズジャム、カシスリキュール、レモンジュースを使っていて、甘酸っぱさが際立つ一杯。『ベルエア with ソルティライチ カクテル』は、コンクタイプの『ソルティライチ』を混ぜるだけです。お好みでグラスのふちに塩をまぶすとよりいいですね。こちらは塩味が『ブルックリンベルエアサワー』の酸味を引き立てます。先ほどの料理もですが、難しくないのでぜひご自宅で試していただけたら」(小西さん)

 

↑「ベルエア with フランボワーズ カクテル」。ベリー系の甘い酸味がジューシーで、見た目からもですが、女性に好まれそうな味わいです

 

お店と違い、家では飲むお酒がパターン化しがちでしょう。そんなときこそクラフトビールやカクテルアレンジで個性的なお酒を楽しむチャンスです。ビールの魅力をもっと知りたい人はもちろん、ビールの苦みが苦手という人もぜひ試してみてください。

 

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※本記事は緊急事態宣言前に取材・撮影したものになります