スーパーの野菜売り場では、今まさに春野菜が旬真っ盛り。とはいえ、春が旬の野菜はアクや苦味があるものも多く、下処理の方法を知らなかったり怠ったりすると、おいしく仕上がりません。
そこで、テレビをはじめ各メディアで人気があり、自身も広告に出演するなど、多岐に渡った活動をしている料理研究家の河瀬璃菜さんに、春野菜をおいしく手軽に楽しめるレシピを教えていただきました。
[目次]
・「たけのこ」のアク抜きとごちそうレシピ
・「そら豆」の意外なごちそうレシピ
・「ふき」のアク抜き・皮むきとごちそうレシピ
春野菜を春に食べるのは、栄養価が高いから
“旬”とは、その食材がいちばんの盛りを迎え、もっとも味がいい時期のことを言います。旬の野菜は栄養価が高く、特に新芽などをいただくことが多い春野菜は、エネルギーの源にもなるそうです。
「春の野菜は食感が柔らかいものが多くて消化しやすいため、疲れた身体を労わるサポートをしてくれます。春野菜は今回取り上げた3種の他にも、アスパラ、新玉ねぎ、スナップエンドウなどがありますが、いずれもシャキシャキの食感が特徴的で、その食感が満足感を得やすく、過食を防いでくれるんですよ。いろいろな春野菜を一度にいただける料理は、天ぷらがよく知られていますが、蒸篭で蒸していろいろなたれでいただくのも手軽でオススメです」(料理研究家・河瀬璃菜さん、以下同)
それでははじめに、たけのこの下処理の仕方とレシピから見ていきましょう。
春野菜「たけのこ」編
たけのこの下処理の仕方
たけのこはアクが強くてえぐみや辛みがあり、採取から時間がたつほどにそれが強くなるので、ほとんどの場合、そのまま食べることはできません。下処理が難しそうに感じますが、必要な工程は茹でるだけ。時間はかかりますが、コトコトと茹でてアク抜きをしておけば、しばらく保存もできます。
「下処理は、買ってきたらすぐにすることと、茹でているときにたけのこがお湯から出ないようにするのがポイントです。また、加熱が終わってもすぐに取り出さず、冷めるまでそのまま置いておきましょう。下処理に必要な米ぬか(※後述)がなければ、お米のとぎ汁を使ってもアク抜きできますよ。アク抜きしたたけのこは、苦みや渋み、えぐみが和らぎ、おいしくいただけます。また、店頭でたけのこを選ぶときは、切り口の部分がより白く、皮の色が薄くてツヤがあるもの、穂先が黄色くずんぐりとして重いものがおいしいので、選んでみてくださいね」
【下処理の材料】
・たけのこ…2本
・米ぬか…ふたつかみ
・唐辛子…1本
【下処理の仕方】
1. 穂先を5~6cm斜めに切り落としたら、縦に2~3cmの深さで切り込みを入れる。
2. 鍋にたけのこを入れ、たけのこがかぶるくらいの水を入れたら、ぬか、赤唐辛子を加え、強火にかける。
3. 沸騰したら落としぶた(アルミホイルでもOK)をし、吹きこぼれないよう注意しながら、弱火で2時間茹でる。たけのこがお湯から出てしまうようであれば、水を足す。
根元の太い部分に竹串を刺してみて、スッと通るようになったらできあがりです。ただし、このまますぐに料理せず、火を止めたら冷めるまで鍋に入れたままで置いておきましょう。また、食べてみてアクが抜け切れてないな、と思ったら、茹で汁として使っていたぬかと唐辛子の入った水にたけのこを浸しておき、冷蔵庫で1〜2日保存してみてください。翌日以降に食べたい場合もこうしておくと、アクが抜けて保存もききます。
たけのこを使ったごちそうレシピ
「たけのこと豚肉のとろっとあんかけ丼」
シャキっとした歯ごたえと熱々のあんかけで食が進む!
電子レンジで加熱するだけで作れる簡単なレシピなのに、その味は本格的。「最後にまわしかけたごま油の香りが豊かな一品。口当たりのやさしいあんかけで、ホッと安心する味わいです。常備菜として多めに作り置きをして、焼きそばにかけたりするのもオススメです。熱いうちに水溶き片栗粉を入れないと、とろみがつかなくなってしまうので、手早くしましょう」
【材料(作りやすい量)】
・たけのこ……300g
・チンゲン菜……1/2株
・豚こま肉…250g
・水溶き片栗粉…大さじ1
・ごま油…適量
・青ネギ…適量
・ご飯… 1膳
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・鶏ガラスープの素……大さじ1
・水……400cc
・醤油……大さじ1
・生姜(すりおろす)…1かけ
・塩こしょう……少々
【作り方】
1. たけのこは食べやすい大きさに切り、チンゲン菜はざく切りにする。
2. 耐熱ボウルにたけのこ、チンゲン菜、豚肉、Aを入れ、ラップをふわりとかけたら、電子レンジ(600w)で10分加熱する。
3. 熱いうちに2に水溶き片栗粉を入れ、よく混ぜる。丼にごはんを盛ったら、その上にのせてごま油をまわしかけて、青ネギを散らす。
続いて、そら豆のおいしい食べ方を解説していただきます。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
春野菜「そら豆」編
そら豆をおいしく調理する準備
そら豆は、鞘ごと焼いたり茹でたりしても食べられるほか、鞘から出してソテーするなど、さまざまな料理を楽しめます。
「そら豆は、うっすらと産毛が生えているもの、茶色っぽく表面が変色していないもの、均一に膨らみがあるものを選ぶと失敗がありません。一番簡単でおいしいのは、そら豆をオリーブオイルとにんにく、塩こしょうでシンプルに炒めるレシピ。お酒のおつまみにも箸休めにもぴったりです」(料理研究家・河瀬璃菜さん、以下同)
そら豆を使ったごちそうレシピ
「そら豆の味噌クリームグラタン」
コクのあるクリームと華やかな香りが春らしい
そら豆と、春にしか食べられない新玉ねぎを使ったグラタンは、お味噌を入れた旨味のあるホワイトソースでいただきます。「普段の食卓にも、ワインと合わせておつまみのひとつにもぴったりの味。味噌は豆からできているのもあり、そら豆との相性もとてもいいんですよ。ちなみに薄皮は食感が気になれば剥いても構いませんが、薄皮にもいっぱい栄養があるのでそのまま食べてほしいです」
【材料(2人分)】
・そら豆(正味)…100g
・新玉ねぎ(通常の玉ねぎでもいい)…1個
・バター…10g
・小麦粉…大さじ2
・牛乳…250cc
・味噌…大さじ1
・塩こしょう…少々
・シュレッドチーズ…50g
【作り方】
1. そら豆は鞘から出す。新玉ねぎは薄切りにする。
2. 中火で熱したフライパンにバターを溶かし、新玉ねぎとそら豆を炒める。
3. 2に小麦粉を入れ、粉っぽさがなくなるまでしっかり炒めたら、牛乳を少しずつ入れてとろみをつける。味噌を溶かし入れて、味が足りないようなら塩こしょうでととのえる。
4. 3を耐熱器に入れてシュレッドチーズをかけたら、220度のオーブンで焼き色がつくまで加熱する。
たっぷり作って余ってしまったら、こんな風にアレンジして楽しんでも。
余ったグラタンはトーストにのせて食べるのがオススメ。「多めに作っておいて翌日の朝ごはんにトースト、というアレンジもいいですよね」
最後は、日本原産の山菜、ふき。アク抜きや皮むきといった下処理と、おいしく食べられるレシピを教えていただきます。
提供元:心地よい暮らしをサポートするウェブマガジン「@Living」
春野菜「ふき」編
ふきの下処理の仕方
スーパーでよく見かけるふきはそれほどアクが強くなく、簡単な下処理をするだけですぐに料理することができます。一方、山蕗と言われる野生種はアクが強いので、下処理にひと晩かかります。
「ふきは、“板ずり”で塩をまんべんなくまぶしてから茹でることで、アクを抜くことができます。板ずりしてから茹で、冷水にとることできれいな色に仕上がり、皮も剥きやすくなります。店頭でふきを選ぶ際は、太さが均一でハリがあり、薄い緑色のものを選びましょう。切り口が乾いていないもの、黒ずんだ部分がないものの方が新鮮です」(料理研究家・河瀬璃菜さん、以下同)
【下処理の材料】
・塩…ふきひと束につき大さじ1
【下処理の仕方】
1.ふきをフライパンに入る長さに切り、板ずりをする。
まな板の上にふきを置いて塩を振りかけたら、手のひらでこすりあわせるように転がします。全体的に塩が馴染んだら次の工程に移りましょう。
2. たっぷりのお湯を沸かしてふきを3~4分(細いものなら1分ほど)茹で、火が通ったらすぐに冷水にとり、冷やす。
3. ふきの両側から皮をむく。
できあがったらそのまま調理に移るか、水に浸けたままの状態で冷蔵庫保存しましょう。山蕗の場合は、冷水にとったまま一晩置くとアクがしっかり抜けますよ。
ふきを使ったごちそうレシピ
「ふきとしらすのピリ辛ペペロンチーノ」
翡翠色がきれいなレンジで簡単パスタ
時間がないときのランチにももってこいの、電子レンジで作れるふきのパスタは、しらすを入れてペペロンチーノに。「爽やかなふきと木の芽の香りが楽しめる一品です。簡単なので、急なおもてなしにもパパッと作れます。下処理を済ませたふきは、水を毎日替えると4〜5日は持つので、時間があるとき一度に処理しておいて冷蔵庫に入れておくのもいいですよね」
【材料(1人分)】
・ふき……50g
・パスタ……100g
・しらす……20g
・木の芽……あれば(なければパセリでも)
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・水…250cc
・にんにく(みじん切り)…1かけ
・輪切り唐辛子…1本分
・塩…小さじ1/4
・黒こしょう…少々
・オリーブオイル…大さじ1
【作り方】
1. 耐熱ボウルにAと、半分に折ったパスタを入れ、ラップをふわりとかけたら電子レンジ(600 W)でパッケージの表記時間通りに加熱する。
2. 1に、3cmほどに切ったふきとしらすを入れたら、水分を飛ばすためにラップをせず、さらに3分間加熱する。
3. 2を器に盛り、オリーブオイル(分量外・適量)をまわしかけて、木の芽を散らす。
おいしくて華やかなだけでなく、簡単に作れるレシピを知っていると、気軽に料理できそうですよね。外出できずに季節を感じられない今、食卓に春らしい風を取り込んでみてはいかがでしょうか。
【プロフィール】
料理研究家 / 河瀬璃菜
レシピ開発や商品開発、食の企画やコンサル、レシピ動画制作、企画執筆、編集、イベントメディア出演、料理教室など食に纏わるさまざまな活動をしている。SONY XperiaのCMやKIRIN本麒麟の広告への出演など、その活動は多岐に渡る。近年では地方を元気にするための6次化商品の開発に力を入れている。
ブログ=http://lineblog.me/linakawase/
Twitter=https://twitter.com/linasuke0508
撮影=河瀬璃菜